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5話 どうも30番ちゃんです





 LIVEROOM 歌・ダンス審査合格者による最終選考ナマ配信!



 「は〜いみにゃしゃ…皆さんこんにちは、このたび最終選考まで残りました、審査番号30番の結城ゆうき澪音みおんです」


 や…や……やらかしたぁぁぁぁ!!1発目の言葉で噛んでしまった…ガチガチに緊張している自分に追い打ちをかけたような状況だ。


 慌てて反応を示すモニターを見ると


 『30番ちゃんキタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!

 一推しキタァ!

 頭から噛む才能アリ!

 いや普通に噛んでるやん、だめやろ』


 反応は賛否両論、初っ端からつまづいてしまったからここから巻き返すしかない。


 「特技は…特に何も無いですかね


  苦手なのは体力を使う運動かな?


  好きな食べ物はモツ以外の肉!


  嫌いな食べ物は納豆、人間の食べ物じゃないよあれは!」


 ここまではテンプレの自己紹介、この後どういう事をするかは個々の自由になっている。


 「どうしようかなぁ、この後何するか特に言われてないから自由なんだよね〜、何かして欲しいことある?」


 そう言って視聴者の人に一言投げかけたらすぐに


 『家の場所教えて!

  スリーサイズ教えてください!

  オーディションで何歌ったか教えてちょんまげ!

  いっそのことここで歌えば?』


 多数の返信がきた。


 「えーっと、まずは1つ目…


 『家の場所教えて!』 教えないよ〜残念でした!


  2つ目は…『スリーサイズ教えてください!』 セクハラで訴えるぞコラ!


  次は…『オーディションで何歌ったか教えてちょんまげ』 えーっと、それがしは「ユメハヤテ」なる曲を歌ったでござるよ


  その次…『いっその事ここで歌えば?』 あ~その手があったか!じゃあ歌おうかなぁ〜」


 民度の低そうな質問も結構あったけど、そういうやつはスルーしておく。思春期の男なんてだいたいエロ猿だしね。


 とりあえず、歌の審査で披露した曲『ユメハヤテ』を歌う。




 「♫〜♪〜♬」


 『うおぉ!これヤバくね!?

  え?これホントに生音声なの?

  この曲歌えること自体凄いけど、ここまでできる人見たことない…

  しかもこれ原曲キーじゃん、ボーカロイド用の…エグいて

  30番半端ないって!!そんなんできひんやん普通!!』




 「ふぅ〜、どうだった?」


 (本気で歌うと喉が辛いから抜いて歌ったんだけど、バレてないよね?)


 そんな俺の心配は流れてきた感想ですぐに杞憂に終わった。



 『やばい!ガチでうまいこの子!

  誰か音声装置を探せ!どこかにあるはず…

  えげつない歌唱力やん…

  本当に中1?サバ読んでない?』


 「え〜酷い!サバなんて読んでない!あと、レディーに年なんて聞くもんじゃないでしょ!そんなこと言ってるからお前ら彼女居ないのよ!」


 少し辛辣な言葉で返しておく。これくらいインパクトを与えれば、みんなのイメージには残るはずだ。


 「あれ?そろそろ時間?」


 時計を見たら、制限時間まであと1分弱くらいだった。歌っていたから時が経つのを早く感じたのだろう。


 「じゃあまた!機会があれば何処かでお会いしましょう!またね〜」


 そう締めくくって、配信装置のスイッチを切った。



 


 「お疲れ様でーす」


 配信が停止されたのを確認したのか、終わってすぐに運営の人が入ってくる。


 「ありがとうございました」


 「お疲れ様でした、今日はこれで終わりですから気をつけて帰ってください」


 「はい、今日はお世話になりました」


 少し会話をかわしたあと、すぐに帰途についた。





 「ただいま…、疲れた…」


 帰り道、1歩を踏み出すごとに全身が重くなるという異様な感覚に襲われた自分の身体に鞭を打って、なんとか家までたどり着いた。


 極度の緊張の中に置かれたり、また極度に疲れたりすると一気に体調が悪くなる、今の身体の悪い一面が顔を出しはじめる。


 「澪音おかえり!待ってたよ」


 俺がそんな状態なのを予知していたのか、麻衣姉は玄関に入るなりバタンキューした自分をすぐに部屋まで運んでくれた。


 「お疲れ、凄かったじゃんあの配信、めっちゃ話題になってるよ」


 「そうなんだ、どんな感じで?」


 ベッドに寝かせてもらって、すぐ横に座っている麻衣姉に向かって聞く。


 「1番は歌かな、あれが物凄い話題になってる、あとは最後の「お前らどうせ彼女いないだろ!」ってところかな?」


 「あー…あれは流れで…」


 「わかってるって、そこは上手く返したじゃん」


 「お姉ちゃん…」


 褒められて嬉しくなったからか、自然に身体を起こして麻衣姉に抱きついてしまう。


 「お姉ちゃん…」


 緊張の糸が切れたからか、どっと疲れが溢れてきて、麻衣姉に抱きついた状態のまま意識を手放した。




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