第五話「地下で その2」
「結構時間がたったように思えるけど、全くたってないとは。」
少しの間存在を忘れていたがこの腕時計には時間がわかる機能がある。時間と言ってもこのゲームが始まってからの時間だと思う。2時間と少しを表示している。
この調子だとあまり脱出に向けての進展がないように思える。飯とかそういえばどうすればいいのだろうか。
などと考えている横で祐樹は横で腕時計を見ていた。何か操作しているらしい。
「それで何かできるのか。」
これから自分で機能を見る前に聞いてみる。
「うん、自分の能力を見ることができるよ。なんかゲームみたいだね。」
「能力を。まじかよ。」
マップ機能は祐樹に任せて自分もそれを見てみる。
スキル『身体強化E』、『鈍感』の2つがあった。
「確かに身体能力は良くなった気がする。鈍感。これはさっきの剥ぎ取りに発揮してたな。」
「名前のところをタップすると詳細もわかるよ。僕のスキル『感知者』て読むのかな。少しだけだけどわかったよ。」
そう言われやってみる。
『鈍感』、痛みなどに感覚が鈍くなる。
言葉通りの意味だった。もしもケガをして痛くてまともに動けなくなったりするのを防いでくれるのかな。
『身体強化E』、身体能力を少し上昇させる。身体能力向上時にボーナス数値がつく。
2つ目のことボーナス値ってのはなんだろう。身体能力向上時ってことはこのスキルを習得時に身体能力が向上したのかな。あまりよくわからないが良いことにはなっているだろう。
「このスキルは常時発動しているのかな。」
「常時って?」
祐樹はまだ小学生でありおそらく言葉をあまり知らない。能力など新たに出たとしても説明文を理解できないことが多いと思う。俺も完全には理解できてはいない。
「常時は、ふだん、つねにっていう意味だよ。祐樹はスキルの説明文は読めたか。」
「ううん、『感知者』の説明文がハテナで埋められてたから。」
「ハテナがこの時計万能ではないのか。あのウサギからの贈り物だから信用するのは嫌だけど。」
あのウサギは研究としてスキルの能力の説明に嘘はつくことはないだろう。つまり祐樹の能力はただモンスターを感知する能力ではないことだ。モンスターを感知をすることなら説明文はハテナにはならないだろう。
「そろそろ着くね。零さんは大丈夫かな。」
「あの人は俺たちが想像しているよりは丈夫だから。」
簡単に話をしながらあの部屋の前に戻ってきた。
「この人はまだ起きないみたいだね。本当に大丈夫かな。」
「俺はそのひとがどんな状態にいるのかは見てわかることはできないからなんともいえないから。だけど零ならわかると思う。」
そして扉を開ける。
その部屋には槍を振り回している零がいた。ついさっきまでの動きとは思えない機敏さだった。よく羽ありの扇風機の出力を最大の状態で羽を見てみようとして見えない。そんな子供の頃にしたことを思い出させる動きだった。
だが、今の自分は身体強化で動体視力もよくなっているはずだ。一応中学生の頃はスポーツをしていた。動体視力を使うものだ。
それでも見えないとなると恐ろしく速い。その速さで突き、ステップなど動きを取り入れている。
「やはり二人の気配だったか。新たなスキルも訓練次第で使える。」
新スキルと聞き納得しかける。スキルだけでこんなにも変わるものなのか。
「すごいな、帰ってきたことに気がつくなんて。新スキルでそんなに動けるようになるものなのか。」
「いや、この動きはもともとだ。これで普通だ。手加減しながらでもいけるかと思ったが流石にそんなに甘くないか。」
この人は本当にすごいのかバカなのかわからないや。
「そういえば、新スキルって何を手に入れたの。気配とか言ってたけど気配を感じれるようになったってこと。達人みたいに。」
「気配探知とは違って使い勝手が悪い。『ゾーンα』というらしい。自分の領域に入ったものを感知し、入った人数によってバフがかかるらしい。」
「レアなスキルだね。」
祐樹はすごいなぁと尊敬の眼差しで零を見ている。
一番レアなのは祐樹のスキルだけどな。有効範囲が広く一度記録した相手を範囲に入れば補足でき、同じモンスターなら範囲に入っただけでわかってしまう。感知系の最強のスキルだろう。
そんなこんなで自分のことや先ほどのパーティーのことを話していく。
「なるほど、この子はその時の生き残りか。ちなみに大丈夫だと思う。他にはいなかったのか。」
「ああ、正確にはもう一人いるかもしれないけど、いつの間にか逃げてたし。スキルって自分にどのように影響しているのかな。」
「それなら、スキルが自分にどう影響しているか確認はしっかりとしておいた方がいい。森崎、私と模擬戦をしよう。身体能力が向上するものはどのぐらい上がったか、体と頭を同期させておかないと動くことができなくなる。」
そう言い零は立ちナイフを持てと言う。
「安心しろこっちはこの木でやるから特別危険はない。そっちは実践を想定してしっかりとしたエモノでいい。」
「いやいや、俺は戦闘なんて、武道すらやったこともないのに。」
「やるのとやらないのは生きる確率は断然に違う。」
あの目は本気だ。仕方ないと思い立ち上がりナイフを抜く。
「手加減は必ずしてくれよ。」
体はどんな感じなのかを軽い運動しながら確かめる。それで少しわかったことがわかる。
「善処はす
零が話し終える前に顔に向かってナイフを投擲する。
零は木で余裕に弾く。その間に近づける分だけ近づく。そして、右拳を握りどこでもいいから振りかぶる。
木でぶつけながら器用に己の右側に受け流す。その勢いで背中に強烈な一撃を喰らわせる。
体勢を崩され沈んでいくように見せかけ勢いを殺さず回転を利用し彼女の脚に蹴りを叩き込もうと繰り出す。
最低限飛んだ。次に木の棒を空中にいながらつき、それで体を支え顔の横に蹴り返された。
それを受け一瞬だけ頭の中が真っ白になったが、すぐに相手を見すえて次の行動を考える。しかし、もう首元には武器が向けられていた。
「全く何もしてこなかったとは思えない動きだな。」
「知らないよ。体が考えたように動くから。」
「まぁ何もできずに死ぬことはないだろう。体の方は大丈夫か。」
手を指し伸ばしてくる。その行為を受け入れ、体を起こしてもらう。彼女の体格からしては信じられない力で起こされた。こっちはあまり力が入らなくて体重をほとんどかけていたが。
ブルッと時計が震える。新着メッセージがあった。
『スキルの成長のお知らせ。あなたのスキルが成長をしたことをお知らせします。今後このようなスキル成長などのお知らせはありません。』
「何これ、スキルの成長?何が成長した。」
スキル欄を確認に行く。2つあるスキルが3つに増えていた。
『身体強化D』、『鈍感』、『体術E』
「どうした何か新しいスキルでも増えていたのか。」
零は時計法に顔を覗き込む。
「スキルが成長したのか。そんなこともあるのか。」
「全くゲームみたいだけど自分でスキル構成できないのは辛いな。」
『体術E』、体を使うことに補正がかかる。体の使い方がうまくなる。
Eが付いている。これも成長するかもしれないってことらしい。戦闘向きのスキルが集まってきている。
「そういえば出口ってどこにあるのかな。」
先ほどまで一言も言葉を発していない祐樹が話しかけてきた。そういえばここから脱出しないといけないことをすっかり忘れていた。
「外側外側に進んでいけば出れるのではないのか。」
「そんな単純なことあるのか。ここがもし島だったら海を渡らないといけないし、壁に囲まれているなら壁に出口が用意するほど単純でもないと思う。しかもここは普通じゃないからスキルとかゲームみたいなところだから魔法とかあると思う。もしかすると転送システムがあってそこを見つけないといけないかもしれない。」
「、、、、、、、、。」
「、、、、、、、、。」
「黙り込まないで、なんか恥ずかしくなる。」
普通に考えていることを口にしただけで静かになられても困る。普通にあのウサギは出すことはない。めんどくさい仕掛けとかも考えているだろう。ゆっくり攻略していくのがいいかもしれない。
「そういえば僕お腹すいてきたな。」
「ここでのご飯ってもしかして、、、」
「自分で獲得していかないといけないだろう。」
「「、、、、、、。」」
「いや、食料がある場所が点在しているらしい。」
「それってどうゆうこと。」
「いや、さっきスキルの成長のメッセージとほぼ同時に送られてきた。」
それ、俺のスキルより重要だよ。空腹は死を意味しているし。
「次の行動は決まりだな。食料探しだ。」
「ご飯、ご飯、ご飯、ご飯。」
るんるん気分の祐樹、そのメッセージをみてどう行動するかを話しあう零と有二。そして、
(こ、ここどこなの。あの人たちは、)
誰かに気づかれることなく目を覚ました女の子、智代子は混乱していた。
=======ステータス=======
name : 零
skill : ゾーンα
体術C
????
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