第四十五話「手助けは本当に助かる」
しばらく、トモエとゼロとの戦闘が続いていく中でゼロだけではなくトモエにも俺にも疲労がたまっていっていることが顔を見ればわかる。
大剣を握る腕、敵の攻撃を避ける際のふくらはぎ、何か行動を起こす際に重りをつけているかのように力が入りづらさを何度も感じる。
だが、そんなことも言ってられないぐらい2人からの攻撃が先程以上にこちらに向かってくる。
「通常の攻撃と防御の高さはゼロが上で、瞬発力はトモエが上で、防御力とここぞいう時の火力は俺が上で誰一人死なずにここまで戦いが長引いてきたか。」
この腕に備わっていた真の力を解放することが出来たため今はどうにかなっているが初めて使う力をどこまで維持出来るかはわからないのでこの場で一番の不利なのは俺であることは変わりがない。
だが、この場を切り抜けるアイデアは一切ないのでどうするかといった状況。
「人間でもない出来損ないにしては両者よく耐えているな。だが、そこの怪物は急激な進化にエネルギーも不足していて、お前は中途半端な存在で戦闘すら奇跡的に成り立っている。このまま続ければ俺が最後に立っている。」
トモエが勝利宣言のようなことをドヤ顔で言い放ってくる。すでに顔すらなくなり大きな目玉一つになった状態であり人の言葉が聞こえていないようであるが、俺の精神を少しだけ削る言葉だ。
そんな暗闇の中歩き続ける俺に光が差し込む。
『おい!聞こえるか!わしじゃ、ワーグリンじゃ。お主ずいぶんとボロボロじゃのう。』
突然、頭にどこか聞いたことある女の子の声が響くように聞こえてきた。
年寄のような喋りかた、ロリババアを彷彿させるような声の主はワーグリンだ。
「なんで、頭にワーグリンの声が聞こえてくるんだ。今、話を聞く余裕が一ミリもない状況なんだけど。」
今にも離れた位置からトモエの飛ぶ斬撃が迫ってきていて避けることに必死なのだから。
『おーおー、こっちはミノタウロスを倒したという報告をわざわざするため念話をしてやっているのじゃがな。どこぞの馬鹿勇者とネクロババアも倒されたようじゃしな。』
その報告を聞いて今まで胸の奥でもやっとしていた何かがゆっくりと消えていったのを感じた。不安要素が消えより一層この戦いに集中が出来る者だ。
しかし、集中力が高まったところでこの場を打開する方法は一切ない。
『ボロボロなお主に朗報じゃ。わしも手が空いたのでここからお主のサポートをしようと思うのじゃがどうする?』
「ぜひ、お願いします!あと少しで殺されそうなんあで助けてください!」
『それはそれで面白そうなんじゃがな、冗談じゃ。』
ワーグリンの冗談のせいでゼロの攻撃が少しかすって痛いんだけど。
「戦闘中に念話か、意外と器用なものだな。いや、外部のモノだなこの感じは。」
トモエは動きをとめることなくこちらを観察している。やっぱり戦闘中に色々と出来る彼女は強い。
『お主が意外と血をばらまいてくれているのでな、『血の薔薇庭園』(ローズのお気に入りの庭)を簡易的に使えると考えているんじゃ。』
「あれって俺も使えるんだ。」
『わしがお主の魔力を制御して発動をさせる。あれを長時間維持できるほどお主の魔力はないから短期決戦で決着をつけんといけんがな。』
俺の魔力がどれぐらいあるのかは知らないがこいつらを倒すための突破口があるというのなら使ってやるしかない。
「よし、ワーグリン頼んだ。頼りにしているぞ。」
『ふふふ、わしに任せるがよい!5秒後に発動じゃ!』
ゼロとトモエの間に割り込んでこの広場の中央に走っていく。
「何をするきかは知らんが、そろそろ潔く死んでくれや。」
体の中を血のように全身を巡っている魔力がやさしい手で誘導されているような感覚がする。それは俺の体の中で1つの円を描くように誘導されていき何か一つの紋様が作られた。
これで準備が完了なのだろう。
『『血の薔薇庭園』発動』
一瞬にしてこの広場が血の色に染まっていくのと同時に魔力以外すべての力が上昇していくのを感じ、2人の居場所もわかっていく。
トモエが俺の首を背後に回ってから斬り落とそうとしているのを感知し、急いで振り返り腕で防ぐと彼女の剣は大きく弾かれ体勢を崩す。
初めて見せた大きな隙を見逃すわけにはいかないので、溜めていた力を一気に放出する気で腹にめがけて踏み込み拳を突きだす。
「お前も後ろからきているのはわかっているんだよ。これでも食べておきな。」
ゼロが後ろから飛び掛かってきていたので地面から棘上の鋼鉄の血を複数生やして彼をめった刺しにする。ゲームなどで弱点っぽい充血した大きな目玉と一緒に突き刺す。
こっちもそろそろ戦いを終わらせて帰ることが出来る。




