第四十一話「元凶と一緒」
長い廊下を抜けた先には扉すらない先ほどの空間の数倍も大きなところに繋がっていた。
奥にはかなりの大きさある装置が静かな機械音を鳴らして動いている。
「ここの雰囲気なんだか迷宮の最新部に似ていやせんかね、姉御。」
「そうだな、しかしこんな機械のある迷宮なんて聞いた事がない。おかしい。」
「それもそうだな。もし目的の場所なら研究者も罠もないのもおかしい。。おかしいづくしだ。」
あまりに静かであり、何もないと言う事で誰もが警戒をしている。勢いよく乗り込む事で何かされるのではと不安もあり恐る恐るである。
「機械で迷宮なんて作れるものなのかな。あれって何かをパイプで吸い取っているのか送り込んでいるのかわからないけど。」
有二は大きな機械からパイプが伸びていることが何か気になるようだ。
『ここで死んでしまうかもしれない君たちには関係ない事だけどね。』
突如、集団を囲むように床から透明な壁が出てくる。有二だけ1人になるように。
『君は別の研究のために1人になってもらうよ。だから、地下で待っている相手と戦ってくれ。』
床の円型に光ると少しの振動と共にゆっくりと下がっていく。そして、その他みんなと少し離れたところから同じように床が円型に光る。すると、逆に何かが昇ってくる。
「げ、あいつは例のミノタウロスじゃねぇか。」
「しかも、3体もいるぞ。」
「ヒロト、この人数だと勝てるんじゃ?」
星川は苦い顔をしながら答える。
「ミノタウロスは本来神話に登場して豪傑共を返り討ちにするようなモンスターだ。迷宮の中では無敵の強さを誇る。話に聞いていたけどあんな武器や装飾をつけてなかった。これは勝つことが難しいかもしれないな。」
ミノタウロスは銀色に光る両刃斧を片手で持ち、首からは綺麗な装飾を施した首飾りをつけている。
有二はそのミノタウロスが街で見たのと同一だと気がついたところで完全にその階の様子がが見えなくなった。
「ミノタウロスがここで出てくるのなら俺の相手はどんなやつなんだろうか。」
下に続いていく中では真っ暗な闇であり下の様子を見る事ができない。そう思っていた束の間振動と共に下降していたのが止まった。すると、一斉に明かりが灯される。
『ようこそ、イレギュラー。君の存在はバグのようなものだ。ミノタウロスを使った実験の結果に影響して予測値と比較が出来なくなってしまうからな。』
奥の椅子にうさぎの研究者が座っていた。研究者っぽい服装だと誰もが思っていたのだが、真っ白なTシャツに「ニートは正義」と書かれている。ジーパンを結構ダボダボに履いている。
「イレギュラーを呼び寄せてしまう欠陥を試したのですか。研究者なのに。」
『は、研究者だからだよ。どこが欠陥なのかを調べるのも仕事だからね。でも、今回は君みたいないいものを引き寄せることが出来たから結果オーライだよ。』
よっこいしょと掛け声で椅子から立ち上がる。
『君もその腕のものは数多ある世界の中でも一つとして同じものはないものなんだ。それを全て手にしたものは全知全能の神に匹敵すると言われているんだ。それを探すのも私の目標だが、今回は違う。』
突然、研究者の手に何もない空間から銃が現れた。銃身は長く如何にも威力の高そうなものだ。
『どうせ、勝っても負けても気がつくと思うから言うけどね、ここは世界と世界の狭間にある場所なんだ。本来ならそこには人間どころか下級の神でさえ存在する事が出来ないところなんだ。そこに存在する事が出来る空間を作り上げる事が出来たんだ。今回はその空間の耐久試験だよ。』
研究者の両隣からは黒い霧が一つの塊として集まっていく。一つの動物を形成した。
『シャドウドッグ。こいつらはかなり賢くて強いやつだ。さてと、バグはこの手で処理しないと気が済まないのでな。死んでくれや。』
「なんか勝手に話を聞かされて、展開も急だし困ったな。でも、元凶自らが出向いてくれたんだ。倒せば後はハッピーエンドになるかな。」
有二は武器を構えて戦闘の準備をする。
シャドウドッグは走り出すと段々と地面に入っていく。有二はよくよく見ると地面には不自然な影がこちらに向かってきていることがわかる。影に潜ったことで物理的な攻撃は通じるのかはわからない状況であり有二はどうすればいいのかを少し悩んだ。
『戦闘中に考え事は良くないぞ。ほら。』
研究者は銃をこちらに向けるや否や発砲する。ギリギリで回避することが出来たが少しおかしなところがあった。
「なんだよその銃は。なんか弾が光っていなかったか?」
『ああ、特別な弾を使っていてね。何故なのかはこの後じきにわかるだろうよ。』
シャドウドッグの影が迫ってくるので大剣を構える。影から何かが飛び出てくるものを犬だと思い一度かわしてから斬りつけるとお馴染みの攻撃を仕掛けようとする。
「痛ぇっ、影に斬られた。」
しかし、影から出てきたのは犬ではなく真っ黒な刃であり刃から刃が生えていた。さらに、もう1匹のシャドウドッグが有二を斬りつける。両腕に傷がつく。
『シャドウドッグって言われて影の犬と思ったな。敵の言葉に引っかかるとはまだまだ子供だね。次々いくよ。』
研究者の銃から火が吹き影が襲いかかってくる。
「敵のステータスが高いだけが強さじゃないっていうことがよくわかるなこれは。」




