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Dear Labyrinth_親愛なる迷宮_漆黒の影と神の使徒  作者: 森の番人
第一部 「世界の迷宮 labyrinth」
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第三十六話「巨人」

「全然見当たらないや。どこ行ったのやら。」


見る見る自分自身の体を崩してゴーレムを作り出した巨人が消えた。おそらく小さくなって消えたのだが元々がかなり大きい体をしていてゴーレムもゴツい大人ぐらいの大きさなのでその群衆に紛れてしまった。


傭兵たちは生まれたゴーレムの心臓部である赤い宝石を壊してどうにか数を減らしていく。

有二は建物の上で本体を探している。


「もしかして本体はいなくて、ゴーレムを爆発的に作って数の暴力でこっちを殺そうとしているのか。」


建物の上から探しても見つからない、なんの行動も起こしていない。なら、ゴーレムを倒しきれば終わる。

有二は、そう思い建物から降りようとした。


「おい、巨人はお前の建物に移ってるぞ!逃げろ。」


誰かの声が有二の耳に届く。

彼の足元が異常な程に揺れていく。横の壁が盛り上がっていく。それは手の形を形成し拳を握った形になり、有二に向かっていく。


揺れと反応することに遅れて手は拳を握り有二を全身で横殴りをした。揺れるところでしっかりとした体勢を整えることが出来るわけもなく飛ばされる。


「ぺっ。しっかりとその場で耐えていたら腕以外のところは打撲以上の怪我をしていたか。」


口の中を怪我して血が溜まったので吐き出す。しかし、吸血鬼の体は丈夫なのでそれだけで済んだ。

巨人は建物の形を崩しながら人の形になろうと収縮膨張を繰り返している。


有二は殴られたことで屋上から地面に落とされた。ゴーレムは上から見ているよりも多く感じることに気がついた。それもそのはずだ。


「おいおい、あいつら自分の心臓ともいえる核を砕いてその辺の瓦礫に押し付けてゴーレムを増やしていってるのか。」


この巨人は自身の大きな体を代償にゴーレムを大量に生成し他の建物に移る。それを繰り返して手のつけられない群れを作ろうとしている。有二はそう考えた。


「さっさと本体を倒さないと傭兵たちが全滅してしまう。」


傭兵たちは先程から巨人、ゴーレムと戦い続けて疲弊している。


「本体が幽霊のように建物から建物に移っているとは考えづらいよな。ゴーレムや巨人も心臓ともいえる核を持っていたのは確実。」


有二は、

1. 巨人は赤いゴーレムと同じ大きさになって、紛れて建物を自身の素材として巨人となった。

2. 核だけとなり赤いゴーレムに運ばせて建物に持っていった。

3. 本当に幽霊のように建物を憑依している。これは幽霊のモンスターだということになる。

の3通りを考える。

しかし、3番目は可能性が低すぎる。もしそうであるなら対処が出来ないから考えることはしない。


「もし、もう一度巨人が小さくなっても探す方法が俺にはない。どうすれば。」

「ゴーレムを減らす方法なら私がお教えしますけど。」


有二のそばにケットシーがやってきた。囮として機能はしただけでもよかったが、大量のゴーレムをどうにかする方法があると言う。


「教えてくれ。傭兵たちを救えることが出来る。」

「今のあなたは吸血鬼(仮)ではありますが、ローズ様の手によって吸血鬼となっています。ローズ様の因子を持っていることになります。なら『血の薔薇庭園』を効果は低い状態で使用出来ます。」

「ああ、あの技か。どうやるんだ。巨人がこっちに来ているんだ。あいつを相手にしながらそれをやらなきゃいけないとか難易度高いな。」

「、、、あんさん、慌ててると早口になるんやな。」


巨人が手足を作ることを終え有二を目指して向かってくる。先 先程の巨体より小さい。しかし、その分俊敏になっている。


「とりあえず、逃げてください。ただし、ゴーレムがいる範囲を中心に大きな円を描くように。」

「了解。意識をこっちに向かせながらでいいよな。」


その辺りに落ちている瓦礫を掴んで巨人の目と思うところに投げつける。巨人は視界を遮られてイラついているのか向かってくる足音がかなり大きくなっていく。投げつけられた瓦礫は体に吸収されていく。


「次はナイフでもいいから切れるものを取り出してください。」

「いいナイフを持ってるよ。」

「なら、血が程よく出るぐらいに腕を切ってください。」

「おけ、腕を切るんだ、、、なんで自傷行為をしないといけないんだ?出血多量で死んでしまうだろ。」


当たり前に死んでしまうことを平然と言ってくる。広範囲でないとあの技?は意味がない。血を出すということはばら撒くと言うことだと有二は考えた。


「大丈夫です。血を一定量出すことが条件なんです。そこからは魔力だけをくれれば私が形にしていきます。血の量が多ければ多い程、範囲が広がっていきます。」

「けど、血を流しすぎて死にました〜てことは起きないよな。」


有二の心配はもっともであった。しかし、ケットシーは心配することはないと言う。


「血は人間のときよりも作られる量は遥かに多いです。つまりは、再生能力が遥かに高くなっていて血を多少失ったところで問題は一切ありません。」

「わかった、じゃぁ腕を切るぞ、切るからな。絶対痛いや。」


有二はナイフを抜き、腕に押し付ける。そして、覚悟を決めた瞬間一気に腕を引く。大きな血管を切り付けたのか一気に血が噴き出していく。


「魔力を注入してください!」

「もう、してる。早くしてくれ。」


噴き出している辺りに魔力を集中させて血と混ざり合うようにする。魔力をそこに集めたりすることは集中しなくても出来るようなっているので、巨人の方に注目する。


傭兵たちはゴーレムへの対処に精一杯であって巨人は悠々と体を分裂させようと巨体を動かしている。


「そろそろ巨人がゴーレムを生み出そうとしているぞ。これ以上増えてしまうと壊滅してしまう。」

「準備は完了。技の名前を叫べば発動します。」

「よし!『血の薔薇庭園』!!」


すぐに有二は自身を追い詰めた技をすかさず叫んだ。すると、腕から出て地面に落ちている血が落ちた場所を中心に円状に広がっていく。波紋を打っているかのように何度か血は広がっていく。そして、突如有二は広範囲にわたって目があるかのように知覚する。どこに誰がいるのかが目を瞑っていてもわかる。


「よし、ゴーレムだけをこの能力で破壊して、巨人からゴーレムが生成された瞬間をゴーレムだけを狙って破壊すれば本体がわかる。」


有二は攻撃をするイメージを反映しやすくするために両手を前に出す。そして、地面から血の槍をイメージした。それも無数の槍が赤い宝石を向かうように。


自分自身の血で作った領域内。何をすればどう攻撃出来るか、どこにその赤い宝石があるのかを瞬時に察知することが出来た。そして、自身の領域に目的を貫くように思念を乗せて命じる。


赤黒く流動性のある液体は先端を鋭く固め宝石を貫く。ゴーレムを次々と波の如く貫通させていき宙に浮かせる。


「おお、まるで串刺し公みたいだ。」


有二の世界で流行ったゲームがあった。過去の偉人たちと一緒に王国を築いて発展させる。そして、他のプレイヤーの国と戦争や貿易などを行なっていく内容である。その中で、串刺し公の伝説をゲームでも再現することが出来る。それを有二は見たことがあることから、まさか自分自身がそれを人間ではないがゴーレムでやることになるとは思わなかっただろう。


「うお!?なんだ血の槍だと。小僧がやったのか、助かった。」

「ゴーレムを一網打尽だ!デカブツをやるだけになったぜ。」


傭兵たちは喜んでいるが、本命を倒したわけではない。


「あとはあいつの弱点を全部貫けば終わりだ!」


次に巨人の宝石に頭の中の照準を合わせていく。今度の巨人には首、両腕、両足、お腹に付いている。宝石一つに対して3本の血の槍を向かわせていく。巨人は動きがあまり早くはなく交わすことが出来ていなかった。


「よっしゃ!巨人の弱点を全部壊したぜ。」

「これでひと段落出来るってわけよ。」


巨人は膝から崩れ落ち動きを止めた。


「これでひと段落か、結構めんどくさいやつだったな。」

「そうですね。私の助言のおかげで被害を抑えて倒すことが出来ました。」


有二とケットシーは顔を見合わせてほっと息を吐き出す。しかし、それを許さないものがいた。


「まだ!あの巨体の中でまだ一つだけ残ってる!こっちから反対の背中から逃げようとしてるわ!」


アリスが巨人を指差して叫ぶ。有二はすぐさま自分の領域を認識する。アリスが言っていた通り背中から何かがボッコリと膨れ上がり何かが脱出しようとしている。


「逃すかよ!」


有二は血の槍を複数で刺しにいかせるが、奇妙な音を立ててそれを弾く。


「は!?堅すぎるだろ。血を弾くってなんだよ。」


有二はすぐさま大剣を背中から抜き、巨人のもとまで走り出す。


背中から出てきたのは全身を緑の鱗を纏った歪なモンスターだった。鋭い爪を持っていて、頭らしきところには大きな目玉がついていた。その大きな目玉を有二の方に向けると


「ケケケケッ。」


と気持ちの悪い声を漏らす。そして、その場から逃げようとする。


「有二さん!追って!」


アリスがそう言い、歌い出す。すると、有二は脚に力と暖かさが段々と満たされていく。


「もっと早く走れそうだな。あとはあいつを見失わないようにするだけだ。身体は堅くてもこれを壊すことは無理だろ。」


片手だけ前にして逃げるやつの前に血の壁を作る。登れないように手前に反るようなものを。


やつは自分が逃げ切れると思っていたのか、突如の壁に激突をする。自慢の爪で切り裂こうにも軽く傷がつくだけで終わる。それもそのはず、人間1人ぐらいならなんてこともないが、モンスターの中では非力である。強固な壁を壊すことなんて出来るわけがない。


「そろそろチェックメイトだ。巨人になったりゴーレムで数を増やしていたのは自分自身が弱いのを補うためだったんだな。」


モンスターに言葉は通じないが何を言われたのかはなんとなく伝わったのだろう。怒りを露わに鋭い爪で首を切り裂こうとする。


しかし、有二の破壊不能な腕に阻まれた。


「さよなら、小さな巨人くん。」


大剣でモンスターの体を2等分に斬った。

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