第三十五話「一人と一匹」
コンクリートの鎧の巨人は有二を見ると警戒レベルをあげて魔力を高めていき、コンクリートの鎧の強度がかなり上がっていく。有二たちは知らないことだが、コンクリートと親和性の高い魔力を注ぐことで強度などを上げることが出来る。強度が上がるにつれて部分部分が光っていく。
「みんな、纏まって戦うなよ。あいつは広範囲の攻撃を持っているんだ。的を絞らせないように動きながら撹乱してくれ。」
「「「了解‼︎」」」
有二は動きながら巨人の動きを観察していく。強度が上がったことで自分の攻撃が通じるのかわからないのである程度力が溜まったので傭兵団に向けて振り下ろした腕を目指す。
「50%近くなら通じるのかな。」
大剣の能力である加速促進を使わずに素の力と貯めた力の50%を上乗せした力で攻撃をする。
ガッ‼︎と鈍い音を立てて腕の一部が削れた。しかし、それだけであり腕はすぐに修復させられた。攻撃が通じるもののすぐに修復をする自己回復持ちであった。
「これだと、削り切っていくことも無理だな。そういえば、『周囲の力を吸い取っていく。』って星川が言っていたけ。ちまちま削ることが出来ないということだな。」
有二は本気の攻撃なら腕などを壊すことは出来ることは確認することが出来たのだが、すぐに修復されてしまったのなら倒すまでは無理なのを理解した。
すると、近くの傭兵が声をかけてきた。
「おい、にいちゃん。すごい力だな。」
「まあね。特別性の体と武器のおかげだよ。で、何かこいつについて教えてくれないか。」
「あそこを見てみな。今ちょうど魔力を高めているだろ。」
傭兵が指差したところを見てみると先ほど魔力を高めた時にも光ったところだった。紫色の宝石のように見える。
「紫色のやつだな。あれが弱点ってことなのか。」
「そゆことだ。お前さんが来る前にあそこを壊したら腕が一本崩れ落ちたんだ。今はあいつの腕は3本って中途半端だろ。元々は4本だったところを俺たちが一つ壊したのさ。もう一回やろうにも時間がかかりすぎる。にいちゃんのその力なら出来るだろ。頼んだぜ。」
傭兵はクロスボウに矢をセットして頭に攻撃を続けていく。情報の共有をしてくれたり、有二が攻撃しやすいように頭を狙って引きつけようとしている。『頼んだぜ』って言った時のキメ顔や腕にしている刺青のインパクトがかなりすごい男だ。
「キメ顔が元のコワモテ顔のせいでかなり怖かったけど、いい人だったな。あとで、話でもしてみるか。」
巨人の背後に回るため走っていく。
巨人としては一番厄介な相手である有二を視界から外すことは危険であることはわかっている。大きな体を動かそうとするが頭に多くの矢や魔法が飛んでくる。それが気になったのか一度彼らを黙らせようとする。
「へ、そんな間抜けな攻撃が当たるぐらいこっちは落ちぶれちゃいねぇぜ。」
「おーい、デカブツ。こっちを向きやがれ‼︎」
傭兵達が嫌がらせをしていく。『巨人って言っても作られたモンスターみたいなものなのに。』と有二は思っていると巨人は叫びながら腕を次々と叩きつけていく。彼らはそれを危なげながら避けていく。
「、、、、!?」
巨人はその行動のせいで有二を見失ってしまった。
「アホな、巨人で助かった。あの攻撃で危険に陥るわけでもないのに。今のうちに力を完全に貯めておくかな。あと、ケットシーは何をしているんだ。」
肩からずっと動かないままであるケットシーに声をかける。
「いやですね。私は戦闘職ではなく支援職なのです。しかも、巨人なんて私食べられてしまうわ。」
「口調、統一しろよ。」
ケットシーは全く頼りにならないことがわかった。
今は岩陰にいて、巨人の目から隠れている状態なら紫色の宝石の位置を確認することが出来る。こっそりとその場所を確認すると、腕と背中の付け根にそれぞれついている。足には宝石を確認できなかった。
「よし、腕さえ封じることが出来たのなら頭とかを攻撃できるようになるな。あとはタイミング良くいけばかなりいける。」
有二は今の戦闘を見ていると、体が段々と温かくなっていくことがわかった。
「これは、アリスのスキルの効果か。そういえば歌が聞こえるや。」
「聞こえなかったのですか。まったく鈍感の鈍感ですね。」
「ケットシー、お前それ以上口を開くとわかるな。」
「なんのことでしょう。わかりませんな。」
ケットシーは顔を背けるが
「お前を囮として巨人にいたぶってもらうようにここで釘打ちにして置いていくからな。それだけじゃなく、主人であるワーグリンの悪口を言っていたって嘘言っておくからな。あーあ、何されるのだろうな。しーらない。」
「兄貴、援護させていただきます。」
手のひら返しだが、手首が捻じ切れそうだった。
「ケットシー、何が出来るんだ。影だから俺に変化することが出来そうだけど。」
「私は姿形は変えることが出来ますけど、、、色とかは黒しかないですよ。」
「十分だ。それだけで巨人に近づくことが出来るからな。」
ケットシーはため息をつきながら有二とそっくりの背丈となっていく。
傭兵たちはそろそろ今の状況を維持することが困難になってきている。有二を探したいが傭兵がそれを妨げていて巨人はまるで生物かのように苛立ちを見せている。
「攻撃を一発ぐらい喰らっても大丈夫だよな。」
「私はみがわり人形ではありませんよ。頑丈には出来ていますが、痛いのは嫌です。」
「なら、簡単だ。良ければいい。影だしどうにかなるなる。同時に叫びながら左から出て行って。俺は右から出ていくから。いいか。いくぞ。」
「ちょっ、待ってください。「せーの‼」こっちや!でかぶつ!ってわいだけ叫んでるやん。」
ケットシーだけが叫んでおり、巨人は姿などが有二にそっくりである彼を見つけるとデカい腕を振り下ろす。
ケットシーはそれを間一髪で避けるが、何度も腕は振り下ろされる。それには何度か接触をするが衣服を着ていないことで腕に引っ張られることがなかった。
有二は最初の腕の振り下ろしだけを確認したらすぐさま巨人の背後にある建物へと何度か跳躍をしながら登っていく。そこからなら巨人の背中へと簡単に乗り移れて宝石への攻撃も簡単に出来る。
「傭兵は正面に多く位置している風に見えて正面を左右に分割して攻撃を分散と避けやすくしているな。歴戦の傭兵集団ってのが素人目でもわかるな。俺が出来るのは馬鹿力で弱点らしい宝石を壊すこと。」
有二は攻撃のため腕を振りかぶった瞬間を狙って飛ぶ。
背中のところも腕の付け根当たりの宝石の近くに着地をする。腕を振り下ろしたため巨人の背中は地面と平行になっていた。
「まずは、一つ目、左二本の内一つはこれでなくなる。」
大剣の加速、身体能力を活かした攻撃を宝石に叩き込む。
すると、紫色の破片を散らしながら宝石と腕は砕け散る。
巨人はそれがかなり痛かったのか大きな体をのけぞらせている。
「あの傭兵が言ったとおり宝石は弱点なんだな。腕が無くなったし、バランスが悪くなったから腕の宝石じゃなくて本体に近いあそこを狙った方がいいか。」
もう一度、建物に飛び移り高さを十分にとる。
巨人が暴れ続けていて狙いや、飛び移ってもそのまま地面に落とされて潰されるだろう。それでは死にはしないだろうがそのままタコ殴りにされてしまう。
「なんか様子が変だな。ただ暴れている風にはみえないけど。コンクリートの体がボロボロと落ちているのにやめはしないか。」
巨人が体を構成しているコンクリートを崩して落としていく。それは体が小さくなっていくのにそれをやめることはない。
「おい!落ちてきたコンクリートが動き出してるぞ。あれは、ゴーレムだ‼」
コンクリートは頑丈さを忘れ流動体で人の形を形成していく。そして、胸のところには赤色の宝石を輝かせている。
「ゲームとかアニメではあの赤いやつがコアが弱点で壊せば動きがとまるはずだけど。やっぱりな。」
刺青をした傭兵は赤い宝石を破壊してゴーレムの動きを止めていた。対処方法を知っているので混乱することはないかと思ったのだが。
「数が多いな。巨人の体からどんどん生み出されてるからか。巨人が小さくなっていっているのは倒すチャンスなのでは。」
有二はそう思い、紫色の宝石をしているやつを探し始めた。量産されたゴーレムが赤色なら本体がいるのなら色はかわらず紫だと思った。
巨人は小さくなっていきゴーレムの中に埋もれて見えなくなっていった。




