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Dear Labyrinth_親愛なる迷宮_漆黒の影と神の使徒  作者: 森の番人
第一部 「世界の迷宮 labyrinth」
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第三十四話「始まりの巨人」

『み、みなさん!聞こえます、か。アリス、です。助け、、、くださ、、い!巨人が、巨人が。』


 無線機から息も絶え絶えで救難を要請をアリスがしてきた。すかさず、星川は腰に付けていた無線機で返答をする。


「星川だ。何があったんだ。巨人って何のことだ。」

『探索していると、、、何かの入り口を、、見つけ、、、そしたら、、、警報音と同時に巨人が現れた。』


 すると、地面が揺れ始める。それは弱い揺れから次第に強く今までなら立ってることも出来ないぐらい揺れになっていく。祐樹は地面に座り込んでその揺れに耐えている。子供や老人だけでなく大人も無理なぐらい強い振動になった。身体能力が向上していなければ有二も立ってはいられなかった。


「あ、あれって何。デカすぎない。」


 美優が空を指しておびえている。みんなの視線はそっちへと向く。


「あれってさっき無線から聞こえてた巨人じゃないか。バカでかい。建物を簡単に超えているぞ。」


 キースが言う通り、地震が収まったと思うと建物を簡単に超す巨人を確認することが出来た。全身が石と土で出来ている。そして、ところどころには鉄なのかはわからないが、金属が手の甲や肩などについている。


「造られた巨人では間違いはないけど、自立しているようにしか見えない。しかも、あの姿はもしかして。『始まりの巨人』。」


 星川が巨人が『始まりの巨人』であると判断した。それに、星川のメンバーたちは驚いた反応をしたが、有二たちはなんのことだかわからない。


「『始まりの巨人』っていうのは、俺たちの世界の大賢者レーミンが作り出した禁術によって生み出される巨人のことだ。生み出された地の力を吸い取り力に変えて成長をしていく生きた巨人。誰にも制御が出来ず国を一つ壊滅させたと言われ、禁術となり存在は限られた人にしか知られなくなった。おそらくだけど、あれはそれを模したコピーだ。強さは本物だけどな。」


 巨人は建物を叩き潰しながら有二たちに近づいて来る。


「これがアリス達が言っていた巨人ってことなら近くにいるはずだけど。」

「おい、巨人がこっちにも現れた。お互いに距離も近いはずだ。今、あいつが壊した建物の方向に俺たちがいる。見つけることが出来そうか。」

『建物なんて巨人の近くにはないわ。きゃっ、近くには地下への入り口しかな、、、、。』


 無線機から通信はそこで途絶えた。おそらく、向こうで巨人の攻撃を受けて無線機が壊れたのだろう。


「この巨人じゃないのかよ!?こんなのが2体もいるってことか。」


 キースは目の前にいる巨人がアリス達の前にいる巨人ではないことに気が付き、禁術で生み出されたやつが2体もいることに驚愕している。


「ここで、もたもたしていたらアリス達は巨人に殺されてしまうぞ。どうするんだ。」


 キースの一言でみんな自体は切羽詰まった状況であることがようやく気がつくことが出来た。そして、巨人は一行に向かってやってくる。一歩一歩がその巨体の脅威を感じさせる。


「みんな、散開しろ!!」


 有二の声と同時に巨人は倒れ込んできた。間一髪で潰されるところだった。


「どうすればいいんだ。アリスの方に助けに行きたいが、こいつが今までのモンスターの中で一番強いのはわかる。こいつを倒してからだとアリス達が間に合わない。どうすれば。」


 巨人はこの悩みを解決する時間を待ってはくれない。元々口はなかったが顔の辺りの土が口を形成していく。それは人間の口ではなく馬鹿みたいにでかい口裂けたように大きくなっていく。


「口に魔力が集まっていく。」


 口に注目をすると魔力が集まっていくことが確認することが出来た。そして、魔法陣が徐々に形成されていく。その魔法陣が完全にブレス系の攻撃の可能性があることを有二、星川は元々の知識から予想できた。


「魔法陣の構築が早くて壊すのは無理か。なら軽減させるしかないか。」

「ワーグリン。前方に大きな壁を作れ!」


 星川は魔法陣を読み取り雷属性の遠距離攻撃だとわかり魔法陣を組み立て口と自分達の直線上に配置をする。ワーグリンは有二の言葉通りに土を盛り上げて大きな壁を形成する。


 巨人は不気味な叫び声と共に魔法陣が輝き電撃が一行に襲いかかってくる。電撃なのか瞬時に距離を縮めてくるが、魔法陣を通過するとブレスは拡散されて四方八方へといく。その内の一つの大きなブレスがワーグリンが形成した土の壁に激突した。少しだけ間を置くと壁が爆散した。


「威力を分散させて属性相性がいい土の壁でようやく防ぐことが出来るぐらいのブレス。『始まりの巨人』のコピーなのにか。」


 有二がそう呟くと、体が宙に上がった。


「おい、カイトか。なにやっているんだ、早く降ろせ。」

「ワーグリンさん、後はよろしくお願いします。有二、飛ばされた方向にまっすぐ行けばアリスがいる。助けてやれ。」


 カイトはワーグリンを見て、カタリナを見て頷く。そして、彼は思いっきり振りかぶって投げ飛ばす。そこから何故か速度が減速せずに飛ばされていく。


「有二さん、こちらは気にしないでアリスを助けてあげてください。信じてください。」


 声が小さくなりながらカタリナの声が聞こえた。そして、建物を越えてみんなが見えなくなった。


「信じてくださいか。俺がみんなを信じていなかったわけではないはず。」

(あの巨人を倒せるのは自分だけだと考えていたのではないのか。)


 頭の隅で何かが囁く。


「そうだな。巨人がすごい強いことがわかっていた。天狗も吸血鬼も倒した俺なら倒せる、俺だけが倒せる。」

(傲慢だな。星川の力について見て感じとった自分の感性を信じないのか。)


「、、、。わかっている。星川の底知れない力と魔法に関する知識。」

(なら、お前の今の状態を改めて考えてみろ。結構無様だぞ。)


 目を瞑る。


「自分の力が強くなったことが嬉しくなったんだ。異世界のようなところで物語に出てくる強敵を倒すことも出来るようになったし。みんなより伸び代が高いことは確かだ。だけど、それでみんなが俺が守るだけの存在だと思い違いをしていた。」

(そうだ、お前は周りの人を信じることが出来てない。それは相手を見る目がないからだ。相手がそれなりに力をなければ信じることは出来ないだろうが、あいつらは信じるに値する力をそれぞれが違う形で持っている。ほら、前を向け。これから、今まで以上の強敵との戦いだ。)

「さっきから俺に話しかけてきているのは誰なんだ。」

「それは、ワイや。ワーグリン様の召喚獣であるナイトメアや。よろしゅうな、小僧。」


 有二の方に真っ黒な影である猫がのっかていた。


「は?影で出来た猫か。標準語かエセ関西弁かどちらかにしろよ。聞き取りづらい。ま、お前ならアリスの居場所がわかるから俺と一緒に行動しているんだろ。」

「察しがよくて助かります。私はワーグリン様の執事をやっておりましたケットシーと申します。さて、目標は目の前です。私がアリス様の影に忍ばせていた雑兵の位置が近づいてきました。ささ、戦闘準備を。」


 ケットシーは今見えた巨人を指差しをする。先ほど見た巨人とは違いコンクリートの体をしている頑丈さが見るだけでわかった。有二は大剣を抜くとふと思った。


「なぁ、ケットシー。着地はどうするんだ。」

「風魔法を使えばいいではありませんか。、、、、、、使えないとは言いませんよね。」

「さ、死なないことを祈りましょうか。」


 1人と1匹はそのまま落ちて行った。


 _____________________________________________


 アリスは巨人が仲間を一人一人戦闘不能に追いやっていくのを歌って援護をするだけしか出来ないことを悔しく思った。なので、助けを呼ぶことだけでも行ったが有二達の方にも巨人が現れて助けには期待が全く出来ない。このまま巨人に殺されるのではと思ったところ。


「なんだ、アレは⁉︎」


 仲間の1人が巨人の背中の方向から何かが飛んでくるのを見つけた。それは小さな塊から大きな塊になり近づくのがわかった。

 そして、戦いの場の中央に落ちてきた。その場は巨人が荒らした場であり砂煙などが舞い上がる。


「けほけほ、大丈夫かアリス。」


 ネリーがアリスに近づいて安否を問う。アリスの歌が途切れて心配になりやってきた。


「大丈夫、けど何がやってきたの。土煙で何も見えないのだけど。」


 ネリーは風魔法でその土煙を払い除けると、そこには大剣を携えた有二がいた。


「待たせたな。一緒に巨人を倒すぞ。」


 巨人が岩を掴み投げてくるが大剣でそれを砕く。


「ええ、歌で支援するわ。伊達に歌うスキルを持っているわけではないわ。」


 有二は巨人に向かって走り出す。ケットシーに言われて仲間に頼られることが多く、頼ることを忘れていた。頼ることはそうそう簡単には出来ないのが人間なのだが、有二はアリスを頼ることは自然と出来てしまった。不思議に思いながら力を溜めていく。

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