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Dear Labyrinth_親愛なる迷宮_漆黒の影と神の使徒  作者: 森の番人
第一部 「世界の迷宮 labyrinth」
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第三十三話「移動する迷宮②」

有二たちはアンデッドの大群を相手にしている。上半身と下半身が離れ離れになるが上半身の動きは止まらない。手で這って有二たちに迫っていく。下半身はピタリとも動かない。


ワーグリンの魔法攻撃がアンデッドの首に刺さり頭が鈍い音をさせながら地面に落ちる。首より下の体は動かないが頭は動いている。歯をガチガチとかみ合わせながら彼らを見ている。今にでも飛びついて噛みつかれそうだ。


智代子や祐樹はそんなアンデッドを見て顔を青くさせている。一名だけの除いてアンデッドを駆除している。星川だけは違うことをしていた。指で輪を作りそこからアンデッドを覗いている。格好は良いとは言えない。


「頭だけが動いているということは新鮮な屍を利用して脳を魔法で支配して操っている魔法ということ。新鮮な屍を維持をするのに魔力の消費効率が悪いから使われなくなった何世紀も前の魔法か。それはいいとして、脳を支配している魔法のコードをたどればいい。」


星川は操作魔法のコントールコードを指で輪を作りそれに『魔法コード看破』を発動して魔法のコードを見ている。


操作系の魔法は高等魔法であり操作する方法が複数存在する。そのうちの一つである魔法コードと言われる操作対象と術者とを一本の魔法の糸で繋ぎ合わせ操作を行う。操作魔法の中でも簡単であるが魔法コードは魔法を使うものなら見ることが出来てしまい戦闘などでは術者を特定できてしまうデメリットが存在する。それを隠すために隠蔽魔法と組み合わせて使用をする。


今回、星川が気が付いたのはワーグリンの攻撃によるものだ。首だけになっても動き、それ以外になると動かなくなる。こういった事が起きるのは『デッドライジング』と星川が知ってる魔法では起こらない事であり、操作魔法によるものの事例である。アンデッドたちにかけられている魔法は星川の知る魔法に似ていて違う魔法であった。


「あそこに術者がいるぞ。さっきから一度も移動していない建物の上だ。」


星川が術者を発見するとカタリナ、美優、カムイが火の魔法をそこに放つがどこからかやってきた真っ黒な棺にそれを遮られてしまった。それだけでなく新たにやってきた棺がその建物の近くにいる人に向かって上から迫ってくる。

近くにいたのは零と智代子、キースであり、キースは難なく避け、零は智代子を担いで避ける。


「あら、こんなに簡単に見つかるなんて周辺探知能力に長けたものでもいたのかしらね、勇者様。」

「ああ、そうだな。」


2人組が自分たちが見つかったのは探知能力によるものだと勘違いをしたことを言いながら建物からおりてくる。魔法によるものなのか速度は一定で安全な着地をする。そして、顔が見えるところまで来ると何人かはその顔を見て驚いていた。


「あの人、自称勇者っていう人だよ。すっごい偉そうで身分がどうのって言っていた人。」


祐樹は男を指さして自称勇者と以前あったことを教えてくれる。有二は自称勇者ということは自分の世界ではかなり恥ずかしいことであることをわかっており聞いている方が恥ずかしくなりそうであった。


「ああ、あの女はネクロマンサーって言われていた自称勇者の連れの一人だ。彼女がこのアンデッドの大群を動かしていた術者だ。なんで襲ってきた。答えろ。」


星川はこのアンデッドの襲撃を行った術者がネクロマンサーである彼女であることを把握して襲撃の理由を尋ねる。


彼女は「そうね」と言い、棺を複数引き寄せてそのうちの一つを魔法でアンデッドを操作する。中から出てきたのはいかにも高価である装備を纏った女だった。彼女を四つん這いにさせその背中に座る。


「たしか、オーロラと呼ばれていた王女だったか。彼女もアンデッド化しているのか。」


ネクロマンサーは不敵に笑い答える。


「アンデッドを襲ったのは()()勇者様が魔物とつるんでいる人間は敵だから殺せと言ったからよ。あと、このイスは死んではいないわ、いえ死んでいると言ってもいいかしら。こいつは現在進行形で死へと近づいているのよ。彼女が助かるすべはないわ。勇者様にはもう私しかいないのよ。」


ネクロマンサーは椅子にしていた彼女から立ち上がり勇者にべったりとくっつく。

それを見て、星川は勇者に質問をする。


「お前はなんで俺たちを殺そうとしているんだ。お前たちも迷宮から脱出をするために動いている団体の一人だろう。」


自称勇者は口を開く。


「お前たちは人間でありながら魔物と行動を共にしているじゃないか。そこの吸血鬼二匹と。」


有二とワーグリンを指さしながら襲う理由をいう。


「貴様、今我を魔物と同格に扱ったな。魔物の吸血鬼と我は同じ存在ではない。人間より上位の存在である『吸血鬼』ぞ。そこのポンコツ吸血鬼も似たようなものじゃ。」

「ポンコツってちょっとショックだな。元々人間だったのだ吸血鬼になったわけだからポンコツっていうのも間違いはないのだけどな。」


ワーグリンは怒っているが有二は気にはしていない。ただし魔物呼ばわりして事だけ。


「あなた達には死んでもらわないと困るよの。この実験には強すぎる者は計画を壊しかねないからね。さぁ、私の下僕たち起きなさい。」


黒い棺が彼女の周りに集まる。そして、彼女から紫色の魔力があふれ出し棺に注がれていく。棺が開くと中からは様々な職業であろう男女が出てきた。見た目から神官、盗賊などとRPGのパーティにいそうな感じである。


「お前たち死んでも俺に仕え、敵を殺せ。」


勇者がそう命じるとアンデッドたちは動き出した。有二は勇者の顔をよくよく見ると、かなりやつれている。死んでいるのと間違えてしまうぐらいだ。


新たに棺桶から出てきたアンデッド達は今まで出てきたアンデッドとは雰囲気が違っていた。服装や祐樹達が見たことがあるからという理由ではない。有二達はその理由がすぐにわかった。


「あのアンデッド達魔力を纏っているぞ。俺の知っている感じのではないけど。」


有二はカタリナに教わった魔力とは違うことに気づいた。なんとも自然の魔力や人間から生成される魔力ではなく、魔力を感じるだけでかなり気持ちの悪い。零が少しだけ有二に聞こえるぐらいの声を上げた。


「汚い魔力をあのアンデッド達に注入しているようだな。今までの味気ないアンデッドよりも強化されているということだな。ハハ。」


キースがアンデッドが強化されていると言っているが問題なさそうに余裕の態度をとっている。先ほどのアンデッドは強さもゴブリン程度だった。それを強化ということでさほどの脅威ではないのだろうか、と有二達は疑問に思っていた。


「キース、あの槍がいるだろ。ほら、持っていけ。」

「ありがとうよ。」


カイトがどこから取り出したのか先端部分が十字になっている銀色に輝く槍をキースに渡した。キースはそれを何度も握り直して感触を確かめている。


そして、思いっきり握りしめると槍が変形をした。十字架が更に仰々しくなって銀色の光が金色を交えた光を輝いていた。キースの雰囲気も変化をしていく。ただのおちゃらけた雰囲気が真面目なおちゃらけた雰囲気になっていった。


キースの変化を気にもせず気持ち悪い魔力を纏ったアンデッドは陣形を組みながら迫る。ガタイのいい戦士風の男を先頭にし後ろでは魔法使い風の女が詠唱を始めていく。


戦士風は大きく剣を振りかぶってキースへと斬りかかるが、その剣はいつの間か男の手から離れていた。キースが槍で絡め取ったからだ。アンデッドは剣がなくなり次の動作をどうすればいいのか戸惑っている。そこにすかさず槍を突き刺した。刺し傷から強い光が放たれる。


「ふんっ。それだけで私のアンデッドが止まると思わないでよ。デカブツさっさとそいつを捕まえろ!おい、聞いているのか。」


ネクロマンサーはさらに魔力を込めて戦士風を操作しようとしているが全く反応がない。そして、その理由に気が付く。


「聖痕だと。まさかお前は聖職者なのか。だが、死霊魔法ではなく私の魔法は高等操作魔法だ。聖痕の効果は受けないはずだ。」

「聖痕は死者の魂を天へと返し、二度と生き返らないようにするものだ。たとえ、操作魔法であろうとも擬似的に蘇っていることには間違いない。」


キースの先ほどの攻撃でできた聖痕というものは死霊魔法、操作魔法、アンデッド化などを防ぐものらしい。それにしてもキースが聖職者みたいなことをと有二一行は疑問に思っていることを美優が答える。


「キースはね、聖騎士なのよ。しかも、上級騎士と言って東西教会の中でも強い部類にいるの。槍を持った時だけ聖騎士としての力を解放できるように封印されているの。事情があってね。」


キースはアンデッド一行に向かっていき次々と聖痕を刻んでいき再起不能にしていく。キース1人だけで彼女の自慢であるアンデッド達は無力化される。


ネクロマンサーはその様子を見て青ざめる。


「勇者様、ここでは彼らを始末できません、施設に戻り待ち構えましょう。」

「あそこにか、まぁいいだろう。」


施設と聞いて零が反応する。


「貴様らは研究者の仲間なのか。答えろ。」


彼女の声はこの一帯の建物と反響して耳を塞ぎたくなるぐらいの音量になった。ネクロマンサーは


「ええ、そうよ。私は研究者からの刺客であるのよ。何人かはあなた達、被験者に紛れているものもいるけどね。よく気がついたわね。施設ってことだけでわかったのかな。」

「いや、それだけではない。お前の力ではこのアンデッドを操ったり魔力量を持っているわけがない。決め手は最後に出てきたアンデッドの魔力だ。私の親の雰囲気に似ている。気持ち悪さもな。」


零の親が研究者である可能性はあったことを有二は知っている。それとちょっとした事だけで気が付くものなのだろうか。


「そう、どうでもいいけどね。それじゃ、施設にたどり着いた時にはまた遊んでくださいね。」


新たな棺が地面から出てくると中が開きそこから真っ黒な煙が一瞬で巻き上がってすぐに掻き消えた。そこには棺だけを残して誰もいなかった。


「施設がこの迷宮にあってそこを目指せば要石を集めなくても脱出できるかもしれないということか。」


有二は脱出方法が増えた事をいうが、ネクロマンサーのいうことを鵜呑みにしてもいいのかと疑問視するのが当然だとみんなから言われてた。


「けど、研究者と繋がっていることは真実味が増しているよ。」

「ああ、私の親は元々生物の研究者で昔姿を消したんだ。うさぎの声、あの魔力、施設。全部が偶然だとは思えないんだ。だから、ネクロマンサーが研究者の手のものということは本当だと思う。」


零が確信をして有二はようやく現実的な脱出手段が見つかりそうなことに安堵した。星川は少し驚いている。


「零の親が研究者な可能性があるということか。異世界の人たちを集めて実験場にしている迷宮。そんな世界と世界とをつなげるようなことが迷宮に出来るのだろうか。」

「そんなことよりも、その施設を探すこととか俺の聖騎士というギャップについて説明するとかしようよ。」


星川の真面目なことにキースが真面目とおふざけを交えて場が一気に冷めてしまった。みんなため息をつき顔を見合わせると笑いが起こる。そう、脱出する施設が確実に存在をすることがわかり、ネクロマンサーがその施設に行けるということは行く方法もあるとわかったからだ。


みんなが希望を持つことができたその時


『みなさん!聞こえますか。アリスです。助けてください!巨人が、巨人が。」


無線機からSOSの通信が入ってきた。それに応答しようとするがサイレンが鳴り響く。真っ赤なハザードランプを灯しながら。

ネクロマンサーは死体を操ることができる職業であり擬似魂を死体に埋めること、脳を操作して操ることなど死体を操ることで戦闘を行う人のことをいう。勇者は国から使命をされることがほとんどである。国が変われば勇者ではないという意味にもなる。異世界でも適用される範囲は国などと制限があることを忘れてはならない。

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