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Dear Labyrinth_親愛なる迷宮_漆黒の影と神の使徒  作者: 森の番人
第一部 「世界の迷宮 labyrinth」
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第三十一話「遭遇①」

 同じような家が不規則に建ち並んでいてじっと長い間見ていると頭がおかしくなってしまいそうになるだろう。しかし、ところどころ注目をしてみると些細だが違うところがあることに気が付く。

 「祐樹のスキルはここでも有能なスキルだな。道に迷うことがなくなるし誰かが迷ってもすぐに発見することが出来るから。迷宮の迷宮にはぴったりだ。」

 「それはそうですけど、情報量が多くて困るんですよ。」

 「そりゃね。まさか家と家がこんなに不規則に繋がったりしていたり動いていたらね。」

 有二は祐樹と困ったねとここの不思議さをしっかりと目で見て体験している。

 ここは森の抜けた先にあった住宅街?である。おなじ見た目の階層が積み重なったりして不規則な場所に建てられている。この中を歩いていくと簡単に行き止まりに突き当たったり同じ場所をグルグルと回ってしまうことが起きるだろう。マッピングをすれば解決をするような場所であるのだがここでは一定時間ごとに建物がワイヤーなどを使わずに空中を浮いて道や建物の階層、構造を作り変えている。そのため、マッピングはするだけ無意味であり祐樹のようなスキルに頼るか、直感で進んでいくしかない。ただし、ここを通り抜けるだけならまだいいだろう。迷宮を出るためのヒントなどが隠されていそうな場所である。隅々まで探すべきであるからなおの事、骨が折れる。

 「広い場所の探索では人数を分けることが基本であるが、ここでは別れてしまうと再度集まることには難しい。ここかなりめんどくさい場所だな。」

 「そういうときこそ、みんなで一緒にいるべき。」

 「カイトのいう通りです。分断されないように気を付けて進みましょう。」

 カイトがいう事にカタリナが肯定をする。ここは仲間を分断させることが目的なら少数では対応ができないモンスターがいるということになる。ならば、かたまって動くべきである。

 祐樹のスキルを頼りにして探索を続けていく。上下左右と変化をしていく場所を移動していくが祐樹も三次元構造を理解しながらまだ進んでいない道を選択するのは難しく移動速度がかなり落ちてしまっている。

 家を壊して進むことも案としては出たのだが広大な面積にある建物を破壊することになるので時間と労力が見合わないこともある。なので、家を破壊しまくる案は無くなった。

 「こんなにも広いと一日で終わらないよね。どうするのよ、ヒロト。」

 歩き疲れた美優が星川に休憩を間接的に求めている。歩いてまだ数時間といったところ。休憩するにはちょうどいいころあいだろう。

 「そうだね、休憩するのもいいかもしれない。有二たちはどう?」

 「俺はいいけど、みんなは?」

 「リーダーが決めろ。」

 「ちょっと冷たい言い方だな、零。どうせ休憩するなら家の中にしようよ。外だと潰されるかもしれないし。家の中なら勝手に移動するだけだから安全だし。」

 「移動する家を体験したいだけじゃろ。」

 ワーグリンが有二が休憩ではなく楽しみたいことを見抜くが誰もが同じようなことを思っていたのでそれに反応はしない。

 「わしの家なら空に浮いているなぞ簡単に実現できるのじゃがのう。」

 と反応してくれないことがちょっと寂しいという反応をしている。

 「どこの家にする。高い方がいいよな。」

 「私も高い方がいいです。」

 「高いところからの眺めは見飽きているので低いところがいいのですが。」

 「俺は低いところの方が安心できる。」

 有二の高いところにする案は智代子が賛成する。低いところがいいとカタリナがいう。それにカイトが賛同する。

 「どっちにするかはじゃんけんで決めようか。カタリナ、じゃんけんは知っているよな。」

 「もちろんです。一騎討ちでいいですよね。」

 「もちのろん。」

 カタリナと有二はお互いに向かいあう。カタリナは右こぶしを握りそれに左手を添え、足をぴったりと揃えている。まるでレイピアをもっている騎士のようである。有二は片方の拳を腰に構えてもう片方の手は反対の腰の上の方で構えている。まるでガンマンのようである。

 「「さいしょうは、グー!!じゃんけん!!」」

 「チョキ!!」

 「チョキ!!」

 「グ~!!」

 カタリナ、有二はチョキを出したのだが、第三者である祐樹がグーを出す。

 「僕は低いところは嫌だけど高いところは怖いからその中間でいいよね。」

 「「「いいよ~」」」

 「「なんでさ。」」

 と、二人の意見ではなく、祐樹のある程度の高さの家で休憩することになった。階段があるところで進んでいき少し高くなったところで適当な部屋に入っていく。扉はけ破り開けてみんなが入ったら簡単に入れないように閉じておく。

 さらに中に入っていくと大きなリビングルームが待ち受けていた。

 「かなり広いですね。ソファーもありますしここならしばらくの間は住めそうですよ。」

 「あっちにも扉があるよ。寝室につながっているのかな。」

 祐樹が奥に扉を見つけた。寝室があったとしても入ってきたのはアパートである。お隣さんの部屋につながっていてもおかしくはないというところにドアがついている。

 「もしかして、これを開けたらお隣さんの部屋に繋がっているんじゃないの。」

 「ここのアパートはシェアハウスでもしてたのかな。勝手にお隣さんとドアつけて繋げたら大家さんに怒られるどころではないけどな。」

 美優と星川はのんきに言っている。「つまりは隣の部屋にもしモンスターがいたり、侵入してきたらどうするのか」と有二は思い剣を構えて隣の人の部屋に続いているであろうドアに手をかける。

 「3、2、1、ゴー‼‼」

 「きゃあああ!?!?!なになになに、なんなの。」

 ドアを勢いよく開けて中に入るとリビングにベッドがありそこに横になっている女の子がいた。それに有二は驚いたがすかさず横から殺気を感じた。

 「おうりゃあ‼‼」

 剣が首を的確に狙って迫ってくる。それを更に部屋の中に進んで避ける。すぐに攻撃者はベッドの上の女の子を守るように位置を構える。

 有二は一撃で仕留めるように剣を持っていたのだが部屋の中では振ることができない。ナイフを腰から抜き取り構える。すると、攻撃者は凄い脚力で襲ってくる。

 「ストーープ!待ってネリー。彼はモンスターじゃないよ。」

 「アリス、けど。こいつは人間ではないんだ。」

 アリスという女の子が止めていたおかげで激しい戦闘が行われることが回避することができた。ネリーは有二に対する警戒を解かない。彼が人間ではないという理由らしい。

 「人間もいますよ。何人もね。」

 ドアからキースが入ってくる。それに続いてみんなも入っていく。

 「俺たちもこの迷宮に閉じ込められたものだ。君たちと敵対することはないよ。」

 「すまん、隣にモンスターがいるかと思って突入した。」

 星川が簡単明瞭な説明をし有二が謝罪をする。アリスと呼ばれる女の子はベッドから降りてみんなと向き合う。

 「私の名前はアリス。うたうことが得意なの。そして、彼女がネリー。私の頼りになるボディーガードよ。」

 「ネリーだ。吸血鬼までもここに閉じ込められているとは驚きだな。」

 ネリーは不服そうに自己紹介をする。それをアリスが背中をたたいている。

 「まぁ、吸血鬼ってモンスターとか危ない存在にしか聞こえないしそういう認識なんだろうね。」

 「ちなみに彼は元は人間だからね。」

 キースが有二の腰をつつきながら元人間の吸血鬼であることをいう。

 「吸血鬼はモンスターと同様に自然に生まれるものではないのか。」

 「お主が知っている吸血鬼と一緒にするのではない。」

 「え!?こっちにも吸血鬼!?」

 ワーグリンが参加をして一層ややこしくなった。なので、一度集まってから話をすることになった。




 「で、すごく強い吸血鬼を倒した後に森を抜けてここまでやってきたんだ。すごいなお前たちは傭兵集団の私たちよりも戦闘に手慣れているし。」

 「運がよかっただけのことだよ。しかも、傭兵ていうのは腕っぷしだけではなくて知識もいるから迷宮探索なら傭兵に分があるよ。」

 話し合いをして(ほとんど星川がした)情報などを手に入れることができた。

 「有二や祐樹くん、零、智代子さんが日本の人だとは思わなかったわ。私、イギリス生まれで日本で育ったの。同郷?ていうのかしら会えて良かった。」

 「ほんとに俺たちの世界から来た人って多い気がするよ。アリスがいることで命があるってネリー達が言っていたけどそんなにアリスのスキルってすごいんだ。」

 「『うたうもの』でしたよね。うたうことでみんなの力が上がるってゲームでは絶対に重要なポジションですね。」

 「歌でどうやって力が上がるのだろう。」

 祐樹と有二はアリスのスキルについて興味深々であり、零は歌で力が上がる原理が理解できないと考えている。アリスはみんなの反応を見て笑う。

 「ゲームに夢中な男の子と、ゲームを理解できない女の子を見ている感じだわ。」

 アリスの笑う姿は童話に出てくるアリスその人だと思わせるぐらいに綺麗である。

 「そういえば有二さん?」

 「呼び捨てでいいよ。」

 「オケ、有二は吸血鬼になったらしいけど人間の頃と何か違う点てある?」

 それを正面から聞いてきたのはアリスが初めてで有二は首をかしげる。

 「ここに来てから違う点はたくさんあるから人間と吸血鬼の違いなんてほとんどわからないな。ここでステータスが上がっていっているだろ。追加でスキルだ。これだけは意味がわからない。」

 「確かに歌うのが好きなだけでこのスキルは破格すぎるわ。」

 「そうではないんだ。スキルっていうのはいきなり手に入れるものではなくて練習、特訓をしていって自分のものにしていくもんだよ。だけど、ここでは元から手に入っていたり、練習をしてもいないのに手に入る。」

 有二が否定した理由がアリスにはうっすらと分かってきた。

 「俺たちが知っている人間ていうのはスキルとして目に見えたりして手に入れたり、超常現象を起こすものではないんだ。つまりは、俺たちは人間ではないのかも知れない。」

 「そんな、僕たちは人間じゃないって事?」

 祐樹は身を乗り出して有二に近づくがそれを彼は手で静止して座らせる。

 「まてまて、人間ではないかもしれないって言ったろ。もしかしたら異世界の人間の体になっただけなのかもしれない。それか、元の世界ではスキルを手に入れられない環境だったのかもしれないだけだよ。」

 「それもそうだな。人間でなくなっても心と知性があれば友にもなれる。有二とアリスのようにな。」

 零は2人の関係性を例えに人間であろうとも自分は自分であると。人間にこだわる必要はないと。

 「俺なんか上位種の吸血鬼だってさ。人間と違うところなんて身体的なことだけだしね。」

 有二のお気楽さに一同の顔に笑顔が咲く。

 「ま、この体以外におかしいところが俺にはあるけどね。この腕だよ。」

 そう言って彼は腕をまくってみんなに見せる。それはどこにもおかしいところのない男子高校生の腕である。しかし、彼がそこに魔力を流すと紋様が浮かび上がってきた。青白くぼんやりとした光を放っているように見える。

 「この腕は異常なほどに丈夫なんだ。いくら強い攻撃をこれで受けても折れもしないし傷つきもしない。ここに来てからこんな事になった。」

 零と祐樹はその効果を知っているが紋様が出ることまでは知らなかった。アリスの反応は違った。

 「有二、もしかして円卓の机に座っている夢を見た事ない?ここにいるときに。」

 彼女は有二に迫って尋ねる。

 「もしかして、アリスはその夢で円卓に座っていたのか。」

 アリスは服の襟部分を緩めてそこを見えるようにした。女の子の首である。すると、首に紋様が浮かび上がってきた。有二とは違う紋様であり薄く赤い色である。

 「なんの話をしているんだ、私たちにわかるよう説明してくれ。」

 有二とアリスは零と祐樹に説明をする。ちなみに智代子は4人の輪の外で寝ている。



 「つまりは、よくわからない埋め込み式の防具をつけられたということだな。しかも、それはものすごいもので埋め込まれた部分はケガすらしないというものか。夢でそれらを持っている人物が集まったこともあると。」

 零がざっくりと理解をする。間違いはない。

 「その夢と有二の服装が違うから全然わからなかったわ。他の人の服装は覚えているけどね。有二はほかの人には会ったことあるの?」

 その問いに有二は頷く。

 「一応ね。ものすごく強くて愛想が悪そうな人だったよ。でも、会ったのは夢を見る前にだけどね。」

 「へぇ。今でもかなり強く見える有二よりも強いのね。おもしろいわね。」

 強いやつに興味津々である。有二としては彼女は危険な存在であると考えているのでアリスの興味があるうちには彼女に会いたくはないと考えている。

 「とりあえずは情報交換は終わりだな。あ、これあげるよ。通信もできるし。」

 「アニメとかで出てきそうな通信機だね。通信できれば何か見つけた時に報告ができるようになるね。」

 「ああ、お互いに協力をしたほうが脱出できる確率は上がるからな。協力するなら信頼できるやつに限るしね。」

 「信頼って私たちは分かり合えているけどあっちは、、、。」

アリスの連れであるネリー達傭兵は星川と話をしているが信頼できるほどの関係を築くことが出来たのかを見ると、彼らはトランプをして遊んでいた。

 「それはやめてほしいなぁってだからダメって。くそ、私の負けよ。ほらジョーカー。」

 ババ抜きで美優の負けが決まったところであった。それが複数の輪で行われているようだ。

 「あの調子なら信頼関係が成り立っているのでは?」

 「そう、成り立っているわね。」

 変な心配はいらなかった。

 「心配したのが恥ずかしいね。」

 祐樹のその言葉に三人は頷いた。

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