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Dear Labyrinth_親愛なる迷宮_漆黒の影と神の使徒  作者: 森の番人
第一部 「世界の迷宮 labyrinth」
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第三十話「迷宮の迷宮」

 「吸血鬼って太陽とかにんにくとか弱いって話ではあるけど、あれって人間が吸血鬼を怖がって勝手に弱点を付け加えて倒した、倒したことにして優越感に浸っていたのかな。」

 トボトボと歩いて集合場所になっていて休憩所になっているところまでボウとしていた。扉を開けるとほとんどの人がそこにはいた。

 「遅かったですね。星川さんが次の行き先を決めましたよ。この先に住宅街があるらしいです。そこにはアパートという建物や大きなお店があるとのことです。そこに行けばほかの人にも会えるかもとのことです。」

 ノレンがやってきた有二に今後の予定を簡単に伝える。服装が彼女のご主人様になった時には端の辺りがボロボロになっていたのだが今は違う。マフラーのように編み込まれたロングスカートなどと明らかに有二の世界の服装をしている。西洋風な顔立ちにそれがとても似合っており彼はたじろぐ。

 「どうかしましたか。ご主人様。」

 「なんでもない。星川がどうやって先のことを知っているんだ。少し前までは俺と零の手合わせの審判をしていたんだぞ。」

 「美優さんが魔法で生成した眷属を使って偵察をしたらしいのです。それを星川さんがあの後眷属を使った遠視を交代されて発見したとのことです。また、皆様がバラバラになられることはデメリットが多いとのことなので今後も一緒に行動をしませんかというお誘いがありました。どうされますか。」

 有二は零と祐樹、智代子、ワーグリンを見ると「有二(お前)が決めな」という視線だけが返ってきた。四人とも自分たちのリーダーが有二であるということだ。それを再確認し返事をする。

 「了解、俺たちも仲間が多い方がいい。一緒でいいよ、星川。」

 一度、全員が揃って一緒の行動をすることになったがまたバラバラになり一緒になった。バラバラになったところでは自分たちよりもかなり強い強敵と出会った組もあった。信頼できるものと共に行動をすることが一番であると考えた結果だ。

 「ありがとう。みんなの準備が出来次第ここを出ることになる。それでいいか。」

 「ああ、問題ない。けど、パーティやその指示はそれぞれってことでいいか。混乱しても困るし。」

 「そうだな。了解。」

 そう言ってからお互いに準備に取り掛かる。

 有二はこの周辺の家からショルダーバッグを拝借をしておりその中に食料などを入れ込んでいく。みんなもそれぞれ食料だけでなくいろいろなものを準備する。中にはどこから見つけ出したのかいろいろなものを詰め込んでいるやつもいる。

 十数分後にはみんなの準備が完了する。ノレンのように服装が何人か変わっている。有二のその一人であり学生服ではなくなった。ここの場所には似合わない倉庫があり戦闘スーツとそれに似合うものが揃っていたのでそれを着ている。さらにそこにチョーカー型の通信機があった。それを全員がつけて通信できる状態にした。これで離れていても簡単に連絡を取ることができる。


 

 一行は森の入り口に立っている。ゲームなら衛兵などが立っていて人が住んでいるところから出ていくという寂しさがあるはずなのだがその寂しさは起こらない。そして、森の入り口から続いている道をそのまま進んでいく。これが森を抜けた先に続いているとのこと。

 「よし、このまま進んでいく。俺たちが先行するから有二たちは後ろに注意をしながらついてきてくれ。」

 星川たちが先行をして目的地まで案内をしていく。有二たちはそれを追いかけつつ後ろ、横からの敵に警戒をする。

 通信機は誰もが初めて使うもので歩きながら練習をしていく。基本的には左のボタンを触っている間は連携をしている端末すべてに音声が聞こえるように話すことができる。右についているダイアルで個人的に通話ができるようになりそれと左のボタンを同時に触ることで通話できる。

 戦闘で離れた相手との連携にこれを使ったりすることでみんなが戦闘に支障がなく使用できることができた。

 戦闘ではゴブリンの他に新しい種類のモンスターが出てきた。デカいクモだ。木と木を繋ぐように巣を張っておりそこに陣取っていた。有二たちを見つけると糸を吐いて更に陣地を拡大しつつ襲い掛かってきた。動きがかなり素早く苦戦を強いられそうに見えたのだが糸を簡単に燃やすことができ慌てているところを遠距離で魔法を放ち仕留めることができた。

 クモの巣には糸でグルグル巻きにされているものや蝶のようなモンスターが引っかかっていた。蝶のモンスターは糸で身動きが取れていないので今のうちに仕留めておく。さらにグルグルにまかれて繭となっているものがあった。それをキースがナイフで切り裂いてみると中には人間と思われる死体が圧縮されていた。

 「これってあのクモがエサとしてストックをしていたんだな。結構グロイな。」

 「そうだね。ナイフがこの中の人に当たらなくてよかった。このまま火葬してあげようよ。」

 キースの提案により繭を燃料にして燃やしていく。土の中に埋めながら燃やす穴と空気を入れていく穴を用いて中の火力をかなり上げていく。これによって疑似火葬場を実現する。

 「モンスターって人間を食べるんだな。大気中ある魔力をエサとして生きているのかと思ってたけど。」

 星川がその疑問に答える。

 「モンスターも出現方法によってそれが変わるんだ。生物として生み出されたものは大気中の魔力だけだと生きていけないから人間、動物を食べて生きるモンスターがいる。けど、幽霊のように生物ではなく魂や魔力によって生まれたモンスターは大気中の魔力だけで生きていける。これは魔力を自身の生命エネルギーとして変換する効率によって変わると俺の国では研究されている。」

 モンスターの研究を実際に聞くとちょっと興味が湧いてくる。他にはどのような研究があるのか知りたくなってしまう。

 火が安定し飛び火する恐れもないのでこの場を後にしていく。後は、勝手に土が崩れ埋められる。あの場に長くいる義理もないので火葬をして身も心もしっかりと天に召されることを期待している。

 「そういえば、モンスターが生まれるのに人間の死体とか関係してくるの?」

 祐樹が星川に尋ねる。ゲームの世界によってはそういう設定があることを有二は思い出す。星川の世界ではどんな研究結果があるのだろうか。

 「モンスターが生まれるのには絶対的な条件はないんだ。人間の死体がたくさんあるところにはモンスターが生まれる確率がかなり上がる。そして、死体をそのまま放置し続けるとアンデッドとしてモンスターになってしまうことがある。」

 そう言いながら周りの警戒することを緩むことがない。

 「魂の問題なのか、それとも死体と大気中の魔力によるものなのかはいまだにわからないことだ。魂の観測なんてできるのかすらわからないからね。」

 「魂はあると思うけどな。モンスターがゲームの世界だけでいいと思うな。」

 「確かにな、モンスターはゲームの世界だけでいいとは思うよ。けど、いなくなればいいだけでは止まらないのが人間なんだ。」

 「どういうことなの。」

 祐樹はモンスターは倒すべき対象と思っているのを星川はそれだけではないと教える。

 「さっきのクモのモンスターのように強靭な糸を吐くモンスターがいるんだ。けど、小さくて人間を襲うような獰猛さはもっていない。だから、強靭な糸を使って戦闘用の服を作ったり、商業で使う布として使用したりしているんだ。モンスターによっても様々だってことだよ。」

 そう話していくとまたモンスターだ。有二たちは戦ったことはないのだが魔導士だ。遠距離から魔法で攻撃をしてくる。しかし、魔導士は三体。それに対しこちらには魔法使いがそれ以上いて魔力戦ではモンスターには勝ち目がない。簡単に倒される。魔法と魔法での戦いは飛び火してくる場合があるので周りにいる人も危ない。そんな戦闘で魔法がそれて智代子に飛んでいき彼女は無様な姿で避けこけている。

 「森の中はモンスターが多いな。身を隠しやすいとか、俺たちを襲いやすいとか理由でもあるのか。」

 「モンスターていうよりも、森の中の魔力が影響しているのよ。」

 美優が説明を始める。今まで存在感が消えていてそれを払しょくしようと出てきたのだろう。

 「森、つまり木とか土ていうのは長い間、養分を吸って成長をすると魔力を少しずつ精製したり蓄えたりするようになるの。モンスターにとって森はオアシスと言ってもいいけど、奥に行けば大気中の魔力が多くなる代わりに強いモンスターが縄張りにしているわ。」

 とフンと鼻を鳴らして自慢げにお礼を求めているが、誰も疑問を解消を出来てすっきりしている。彼女は信じられないという顔で有二たちを見るが彼らは気にしてない。

 「あ、家が見えてきたよ。ようやく住宅街だね。」

 祐樹が家が立ち並ぶ住宅街を見て興奮している。その他も彼に続いてその光景を見て一行は少し首を傾げた。

 「なんか、住宅街ていうよりはねぇ。」

 「そうだね。」

 「「ああ。」」

 「「うん。」」

 有二、星川、零、カイト、キース、美優の誰もが同じようなことを思った。

 住宅街であるのはあるのだが、すべての建物が同じ色であり構造である。さらに階層が多い少ないという違いはあるのだが同じものが積み重なって高くなっただけという状態である。それがかなり広い範囲で広がっている。

 迷宮の中に迷宮がある。様々なフィールドが存在しているこの迷宮だが、同じ建物で広い範囲を形成している迷宮が広がっている。

 「これはまた一筋縄ではいかないステージだな。」

 有二はここで更なる展開が待ち構えていることを察知する。だが、これが悪いことではなく良いことでもないという曖昧である。

 誰もが不安を抱えて街へ入ろうとしている中で彼と彼女、有二とワーグリンは期待を胸に街へと入っていく。



 吸血鬼とその一行が住宅街に入った頃、別のパーティが同じ住宅街に入っていく。彼女たち、アリスとネリー達である。彼女らは彼女らで強敵と戦い誰一人として死ぬことはなくここまでやってきた。アリスはこの住宅街を見て何かがここにあるという確信を持った。さらに、アパートや家が彼女のいた世界のものに似て非なるものであることに気が付いた。ここから大変なことが起こるので入る前にのどの調子を確かめておく。

 スキル『うたうもの』は歌うことで効果を発動できる。しかし、彼女は新しいスキルを手に入れた。『かなでるもの』音でまわりの仲間にバフをかけることができるものである。これは歌うことに限らず何かしらで曲を奏でることで効果が出る。さらに、これは一定距離にいる者が曲を奏でても効果が出る。

 顔をバシッと叩いて気合を入れる。彼女の力で生死が分かれることもあるからだ。



 さらに、偽物の勇者一行が来ている。どうにかこうにかでモンスターによる事件があってもここにやってくることができた。仲間たちは勇者に振り回されて疲れている様子とは少し違って顔が青黒い。そして、なにか足取りがおぼつかないようである。彼の命運はあと少しで決まる。

『うたうもの』・・・これは歌うことで仲間の力を上昇させることができる。聞こえているかぎり効果が続く。ここで聞こえるというのは耳に音が入ることであり本人の自覚など関係なしである。さらに通信機越しでは効果は下がるが一応上がる。かなりレア度の高いものである。


『かなでるもの』・・・これは曲を奏でることで仲間の力を上昇させる。一定距離内にいるものが曲を奏でることでも効果は落ちるが力を上昇させることができる。さらに、曲の完成度や規模でも効果が変わってくる。かなりレア度が高いものの中でもレアである。

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