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Dear Labyrinth_親愛なる迷宮_漆黒の影と神の使徒  作者: 森の番人
第一部 「世界の迷宮 labyrinth」
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第二十九話「恐怖」

 有二と零は、彼が先程倒した吸血鬼と戦った場所であるホームの中央に距離を取って立っている。その二人との中間に位置するところに星川がいる。有二は成長したステータスに慣れるために零と軽く戦おうとしている。

 その試合を観戦兼審判をするために星川はついてきた。彼は二人の実力がかなり拮抗していると予測している。2人のステータスを見ていないので彼には正確なことを言えないのだが力が拮抗しているような独特の気配を感じている。

 「ようし、始めようか。2人とも準備はいいか。はじめ!!」

 星川が二人が準備が出来ているのかを確認をすると、両者頷くのを見ると戦闘開始の合図をする。零は槍を片手に構えてそのまま待ち構えている。有二は大剣を背中に納めてまっすぐ零に向かって走り出した。

 零は槍を地面に投げ捨て拳を握る。お互いに武器は使わないようだ。そして、接近し互いの範囲に入る。有二は右のストレートを放つ。それを簡単に腕を回転させることによって体の外側に受け流される。

 「やべ、勢いを抑えすぎたわ。」

 有二はどういった動きになるのかを確かめるために出力を落として攻撃を仕掛けたが調整に失敗をし大きな隙を作ってしまった。

 彼女は隙のある彼の腹に数発パンチを繰り出す。それをまともに受けるが大したダメージにはなっていない。半吸血鬼になったことにより体が強靭になっている。忍耐力を加えてひるむような攻撃力がなく有二としてもほっとしていた。

 有二は反時計回りに回転をして蹴りを繰り出す。先ほどまっすぐに走っていた徳より今度は出力を上げる。狙う先は先程攻撃されたお腹である。零のガードを崩せるのか、それともこの出力でも避けられるのを知るためだ。

 蹴りが来ることを読んでいた彼女はスリ足で後ろに下がってギリギリ当たるか当たらないかの距離で避ける。スキルの空間把握能力なのか戦闘経験からきているのかはわからない。

 (やっぱり、大きな動きもうまく使わないと避けることが簡単なんだな。)

 有二は拳を握って一定の距離に近づく。そして、ボクシングでいうところのジャブを繰り出す。零はそれを避けていく。有二が出力を上げていく。零もそれに合わせて攻撃を避け反撃をしてくる。

 お互いに近距離の殴り合いで一発も当たらずに速度を上げていく。当たりそうな攻撃を腕で止めたりいなしたり。格闘漫画のようである。

 零はスキルの力によって相手の動きを完全に把握して速い速度の攻撃に対して対処している。有二はステータスと半吸血鬼の力によって動体視力が上がっており攻撃を防いでいる。

 この攻防は長くは続かない。

 「次は魔力の方を試させてもらおうかな。」

 有二は後ろに飛びのき両手に魔力を溜める。前に突き出してそれを放出する。赤い拳大の弾が出る。零の足元に飛んでいく。彼女には避けられたのだが地面には魔力の爆発が起きた。彼女は遠くにいても何もできずに防戦してしまうことがわかり距離を詰めてくる。

 しかし、有二は片手ごとに魔力を放つのと溜めるのを繰りかえす。しかし、零は有二を中心に左右にステップを刻みながら近づく。溜めていない手の側にいて放たれたらもう片手の方に前に移動しながら。

 有二が力を溜めてやってくる零を待ち構える。零は一歩強く突然踏み込んだと思ったら彼女の前に槍が地面から出現する。投げ捨てた槍の落ちているところが進路になっていたらしい。

 有二の馬鹿力の拳と零の槍が互いに当たりそうになる。

 「ここまでかな。」「ここまでだな。」

 2人は互いに得物を突き合わせながら戦いを終了させた。熱が入ってしまうと試合の領域から抜け出してしまうことになるからだ。今回の目的は有二が成長したステータスに体を慣らすためである。

 「審判をするためにここにいたけど必要なかったな。」

 「星川は俺たちの戦闘を見てどう思った?」

 「それは私も気になるな。」

 「そうだな。有二は早く調整ができるようになるべきだな。それが出来てからようやく技能を高めることができるってわけだ。零は相手の出方を伺いすぎだ。自分が主導権を握れなくなってしまう。それぐらいかな、さっきの戦闘を見ただけでは。俺は気付いたり、教えたりすることが苦手だからな。」

 星川はそう言って笑う。確かに2人は指摘されたことには気がついていた。だからこそ、「星川、あまり役にたたねぇ」と思った。 

 「俺は素振りしたり、軽く走るけど2人はどうするの?」

 有二は最終調整のためにトレーニングをすると伝えて、2人はどうするのかを尋ねた。

 「私は道具の整理整頓、補強をおこなう。」

 「俺はいつも1人でやっている特訓をするよ。」

 と2人は言って部屋に戻っていく。有二は少し寂しく思ったが剣を持って構えて素振りを始める。

 「かなり早くて振り切った後にはピッタリと止めることができるか。連続で攻撃する時に切り返しが早くすることができるな。」

 そして、有二は振り下ろすだけでなく、切り上げたり、横の薙ぎ払い。繰り返し行いながら段々と速度を上げていく。無呼吸でしばらくの間。そして、限界まで動き終わると大きく空気を体内に取り込む。

 次は全力ですることを繰り返す。そうして、繰り返し剣での動きを確認して調整を可能になってきた。今度は駅内を走ったり線路に降りて上がってをして移動能力を確かめていく。

 この体ってただただ身体能力が上がっただけにしか感じないと思っている。彼自身はそう感じているのだろうが人間の上位種になりかけていることを忘れてはいけない。これでも彼の体はまだ完成はしていないのだから。



 有二は体がまだ成長していっていることを理解していた。体を動かし続けていると段々と力や魔力の高まりを感じていた。これは吸血鬼になるために何かしらの魔法のようなもので変えられたと彼は聞いていた。それがどれだけすごいことなのかを聞くまでもない。適性がなければ良くて廃人、失敗すればグール、成功しても吸血鬼(仮)と中途半端になってしまい一生太陽の下を歩くことが出来なくなってしまう。

 しかし、彼は違った。彼は出自不明、強力なスキルであり武器である謎の腕を持ち合わせている。さらに、肉体的に人間として生まれたのだが時代が時代なら怪物としての肉体を生まれてこの世に誕生していたのかもしれない危険な存在である。運よく普通の人として生活できたいたところでここに来てしまい吸血の女王の目にとまってしまった。下手にそこらの吸血鬼に吸血鬼化をさせられたのでは彼は今の状態で成長は止まっていた。しかし、彼女によって吸血鬼化させられたことにより真の吸血鬼つまり真祖に近い状態まで成長を続けていくが、彼はそのことを知る由もない。

 「今後は真っ先に突っ込むことは控えないと自分の身体能力に殺されてしまうな。あははは。」

 「冗談ごとではないぞ。貴様がわしのように力を持つのは時間の問題じゃが、それを扱えるようになるのはそれ以上に時間がかかることじゃ。」

 ワーグリンがキセルで煙を吸いながら歩いてくる。有二が思っていたことは当たりでありそれを放置していると危険であることを指摘してきた。

 「知っているよ。けど、力を抑えながらや上がっていく力にたびたび調整をしていく暇なんてな、、」

 「前提が違うのう。」

 途中で遮って否定をする。もう一度煙を吸ってから吐く。

 「抑えたりすることは一番制御から遠いことじゃ。今の力を解放し続けるだけじゃ。そうしなければ不用意に周りを傷つけ、自分が死ぬじゃろう。ま、それだけ考えておけばいいことじゃ。」

 そう言ってどこかに歩いていく。有二は後ろ姿を消えるまで見続けた。解放することで自分が自分でなくなるのではという恐怖が少し心の隅で芽生えていた。



 

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