第二十四話「一方、彼女のパーティは③」
零の体を魔力が循環しているのだが少し波立っているような感じである。感情に魔力が作用されやすいということなのだろう。この怒りは珍しいことに零は誰かに対して怒ることはなかった。しかし、今回は智代子の危機感のなさ、間抜け具合に対してだ。
弱いのに周りへ警戒することを一切することもなく、パーティの先頭に立ってガンガンと進んでいこうとする。戦闘では腰を抜かしてしまって何もできないという足手まといである。
己の強さを知ることなく無防備な振りまいをするのは零の周りではいなかった部類の人だった。
今までかかわってきた人間の中で一番癪に障る人間だった。年上なんて関係はなかった。
(智代子のやつ、また危ないところに)
彼女は魔力操作の練習だけでなくスキルを扱う練習をしていた。彼女が初めて手に入れたスキル「ゾーンα」。周囲の状況がわかる優れたものだ。常時使用をしていき彼女はスキルの効果範囲を拡張することが出来るようになっていた。半径20メートルにだ。
効果範囲ギリギリに今現在三体の反応が検知された。こちらを監視しているようだ。そのうちの一体が先頭にいる智代子に向けて攻撃を仕掛けようとしている。
零はルンルン気分でいる智代子の服の襟をすかさず掴んで思いっきり引っ張る。
「零さん。なにを。」
カタリナが零の行動に驚き声を上げるとすぐさま智代子がいたところには火の玉が着弾をする。零が引っ張っていなければ火傷だけでは済まなかっただろう。彼女は驚きをすぐさま警戒へと変える。智代子はせき込んでいる。仕方ないことだ。
「智代子さん、下がってください。零さん、前衛をよろしくお願いします。」
「了解。」
零が前で敵を受け持ちカタリナが後ろで魔法を放ち敵を打ち倒す。零が見逃した敵でもカタリナは近接戦でも戦うことが出来る。
森の茂みからはスケルトンナイト、ローブを着て杖を持っている。それぞれ、一体と二体。
「戦士1、魔導士2。戦士をお願いします。」
スケルトンナイトとは、骸骨の中でも屈強な骨をした動く骨に武装をしている。目の前の敵は片手直剣と革製なのだろう盾が装備している。
魔導士は黒いローブを全身包み込むように来ていてなんの種族なのかがわからないようになっている。更に杖は宝石のような輝く石を付けている。
「カララララ。」
スケルトンナイトは体の骨を鳴らしながら目の前にいる零に剣を掲げながら迫っていく。骨なのに剣をつかみ高く上げることができるというのは零にとって疑問であった。スケルトンには後ろにいる魔導士によって召喚、強化をされていて軽々と剣をふるうことが出来る。しかし、スケルトンであるのでこまごまとした繊細な動きはできない。
零は素早く横に一ステップでそれを交わし槍の柄で頭を飛ばす。頭を体から吹き飛ばす。生物であるならここで絶命をするのはほぼ確実であるが、スケルトンはそうではない。
ゲームやおとぎ話などを知らない零はそれをしらない。
「カラカラ。」
頭がないスケルトンは無くなったものをなくなっても忠実に零に剣を再び振るう。それを間一髪避ける。
「なんなんだ、こいつは。頭が無くても動けるのか。」
「スケルトンは操り手を倒すか、聖属性で浄化をしなければ倒すことはできません。」
「なるほど。厄介だが。」
零は納得をしてスケルトンに対してやり方を変えようとする。しかし、魔導士から攻撃が飛んでくる。先ほど智代子に向けて放ったであろう火の玉である。
スキルによって攻撃が来ることはわかっているのでなんなく避ける。しかし、バックステップで躱しその反動をしかしながらスケルトンの足を槍で弧を描きながら叩きつける。それを神業のようにもう片方の足も叩きつける。
足の骨はバラバラの方向に飛んでいく。そしてスケルトンは地面を支える足が無くなり重力によって地面に落ちる。
とどめの一撃にもう片方の手を踏み砕く。スケルトンは剣も握れず体を満足に動かすことができない。これこそ、
「ただの屍だな。」
スケルトンナイトは再生能力や骨を拾い集めない限り戦闘には参加はできない。
「サンダーバード」
カタリナが魔法を発動をさせる。雷が放たれるだけでなく雷が鳥の形を模しながら直線状ではなくまるで生きているかのように魔導士の一人に向かって走る。
「サンダー!」
魔導士の一人が慌てながら魔法を放つ。カタリナと同じ属性の魔法である。
同じ属性の魔法同士、威力が同じであるなら相殺することができる。更に属性にも相性があるのでそれで相殺すればいいのだが人には得意不得意がある。
今魔法を放った魔導士は雷の属性であり魔法に自信があるらしい。同じ属性である魔法をぶつければ相殺できると考えたのだろう。
しかし、カタリナの魔法はその常識を破る。
サンダーバードは魔導士のサンダーを飲み込み大きく成長をした。そして、一人の魔導士を飲み込んでいく。黒焦げる。
そのまま、サンダーバードは空高く飛翔をする。そして、残りの魔導士に向かってもう一度向かっていく。
「シールド!」
魔導士はそう唱えると周りを覆うような半透明の膜を形成する。サンダーバードはそれにぶつかっていく。すると軽い爆発が起きる。土を巻き上げて視界を遮ってしまう。
零はすぐさま魔導士がいるであろうところに走る。彼女のスキルによって爆発の中で何が起きているのかをすぐさま理解をする。先ほどの魔法によって魔法の威力が軽減されたのだろう。魔導士は電撃を受けてまだ動ける状態であった。それにとどめをのど元に突き刺す。
魔導士はそれで体は崩れ落ちる。戦闘終了である。
槍についた血を零は振り落とし、カタリナは息をついて落ち着く。
「ちょっと零!首がきつかったですけど。もっと優しくしてくれないか。」
零の顔にグイッと近づいて文句を言ってくる。しかも顔を険しくしながら。
「まあまあ。智代子さんだって助けてもらっているのでそう怒るのは違いますよ。」
カタリナが智代子をなだめようとする。しかし、
「カタリナ、私は零に文句を言っているの。」
「智代子。お前はもう少し警戒や慎重に動くべきだ。あんなに警戒もせずに適当に進まれてもこちらは乱暴なフォローになってしまう。私に文句を言うのは全く違う。」
智代子の顔がより険しいもなっていく。
「わたしはそんなことはしてません。2人が慎重すぎるのです。だから私が引っ張っていっているのにそれを悪い風に言うのはおかしいです。」
「おい、それは違う。お前は本当、何もかんがえていない。それに対して指摘しているだけだ。」
「そんな風に思うならちゃんとどうするべきなどを言葉にして伝えてください。」
「いわれなければわからないことではない。自分を高めようとするぐらいなら足りないことぐらいわかるだろ。私はそんななあなあな関係だとは思ったことはない。」
「いい加減にしなさい。」
カタリナの低く体に響く声が言い合いを止める。
「二人は自分自身は正しいと思っているようですけど全く違います。零、あなたは智代子の言う通り言葉足りずです。あなたはかなり自己分析が得意であり一人でも強くなれ他人の欠点も見抜くことが出来るでしょう。ですが周りがみんなみんなそうではない。言葉にすることはとても大切なのです。それは他人だけでなく自分自身といった周りを高めることが出来るのです。昨日の私と零のことを思い出してください。」
そして、カタリナは智代子を見る。
「智代子さんは今私たちが置かれている状態について甘く考えすぎです。命が簡単に散ってしまう危険なところです。零が気が付かなければあなたは丸焦げになっていてもおかしくはないのですよ。自由に考えたり、提案をすることはいいですけどかなり気を引き締めてください。」
今度は二人を同時に見て
「私たちはパーティです。一時的とはいえパーティです。しかし、決して仲間であることは一時的ではありません。仲間はお互いに喧嘩をすることもありますが競い合い助け合い己と相手を高めあっていくことが出来るのです。今回はあなた達はお互いを下げているようにしか見えません。失敗は誰にでもあることです。これから始めていきましょう。仲間として。」
カタリナが零と智代子の手を握って重ねる。零と智代子は少なかれ自分にも非があることを感じ気まずそうにカタリナが手を重ねるのを拒まなかった。
少しだけ零は自分の欠点に気が付いた。思考の固さだ。これはこうと考えると中々自分ではそれ以上に考えを一切変えることがない。信じられるのは己のみと人の考えを聞くことすらしなかった。
智代子は自分が何も考えていないということについてようやく認識をし始めようとしだした。
少しずつ彼女たちは今のままではいけないと理解し始める。
迷宮は成長なんて待ってはくれない。
キース 性別:男 種族:人間
力:D→C- , 俊敏さ:C→C , 魔力 : B→B+ , 運 : S→S+
称号:賢者の弟子
スキル:トラップクリエイター、ラッキーマン、魔力アップ