第二十二話「一方、彼女のパーティは①」
体はずぶ濡れで重たい。いや、水に濡れた衣服が重いわけではない。背中に背負っている智代子が見た目に反して重いのである。スタミナも奪われていく。暖かいところに行き、体温を高めたい。そう心の中では色々と考えるが口にはださない。それは星川達と1人ハグれたカタリナを不安にさせたくないからだ。
「他の方達は無事なんでしょうか。心配です。」
カタリナはポツリと言葉を出す。今、零と一緒にいるのは落石によって五体満足で気絶した智代子と星川のパーティの1人である白髪の少女カタリアの3人である。
彼女達は落石によって散り散りになった中の一組であり、有二達とは反対方向の川に落ちた組みである。零は智代子を落下の時に拾い上げ、川の方向に連れていく。カタリナは零を見て同じ方向に逃げたのである。結果、無事に助かったわけである。
しかも、零はスキル『ゾーンα』によって落石の落下位置を確認し最短ルートで駆け抜けたのである。
川に落ちた一行は有二達と同じような構造である川から上がることができずしばらく流されて上がれそうなところを上った。水に濡れて重い体をひこずり3歩歩くと草むらからゴブリンが数匹にやにやした顔つきで登場した。おそらく川から獲物がやってきたぞという狩人のように自分を思っていたのだろう。だが、びしょ濡れでしばらく何もできず川を流された女を舐めて簡単に姿を表したのが運のツキだ。
零の槍にひと突きで1匹は絶命する。カタリナの魔法によって残りは消えていく。それでも智代子は起きず、背負ってどこか隠れる場所を見つけに歩いている。
いい加減起きてくれないかなと零は思っている。スキルの能力で範囲内に入ってくるものなどは感知できるがそれよりも外からの攻撃は入ってくるまではわからない。その攻撃の速度が速いと背負っているこの状態では避けることが困難である。
2人同時に殺されるかもしれない。智代子ののんびりさは出会ってからわかっていたがこんなにマイペースだとはと。
頭を抱えてしまいたい。
その後彼女らは廃村した集落を見つけそこをしばらく休むことにした。
カタリナの魔法で火を起こしてもらい服を乾かしていく。零は周囲に簡単な罠を仕掛ける。それで奇襲は能力を合わせるとかなり不可能になる。罠を解除する範囲は彼女のテリトリーになるからだ。
しばらくはカタリナと零はしゃべることもなく静かに体温を整えたり衣服を乾かしているだけだった。零自身会話が苦手であるからだ。カタリナはそんな彼女をなんとなくわかっているため話をかけることができていない。
零は魔法のことは『ギガント』戦の後に話を聞いたは聞いたのだがいまいちわかっていなかった。
幼少期から、童話やアニメ、漫画に触れていなかった彼女は魔法などの創造があまりできていなかった。なので、魔法を発動している姿を見た時は驚きが心の中では暴れていた。顔には出していなかったが。
カタリナに魔法を聞きたいのだが声に出せないでいる。
つまり、零はコミュ障である。有二と出会った時も人に会えて嬉しかったのだが緊張で気持ちの整理ができず脅しのような言葉が出てきたのである。
今はそれについて反省しているのでうかつにしゃべらないようにすることにしているが気まずいことには変わりがない。
どうすればいいのか。精神的に参ってしまうのはここだと長くは生きることができないのではないだろうか。
「ううーん。ここはどこですか。てなんで私、布一枚なんですか。」
智代子がようやく目を覚ました。出会った時から寝ている。そういえば機械もスリープ状態になると聞いたことがあることを思い出す。本当の意味とは似て非なるのだが。機械というと零は鉄と電気のイメージであり智代子は電気を使うので寝なければいけないのだと勘違いをする。
「ああ、岩とかが落ちてきた時のことを覚えているか。あの時、岩を避けるたカタリナと一緒に川に飛び込んだんだ。その時に衣服が濡れたので今乾かしている。」
「そ、そうだったんだ。ごめんなさい。私気絶しちゃって。」
「智代子さん。お気になさらずに。あんな状況では勇敢な戦士でも恐ろしいものです。」
「で、でも。私一応あの中で最年長ですよ。気絶なんてしてたら示しがつかないでしょ。」
「示しがつかないって誰に対して、、、、え?最年長?」
「カタリナ、智代子が最年長なのは本当だ。見た目からして同じぐらいだと思うが。」
さすがに見た目詐欺の塊にカタリナは驚いている。だれだって最初はそうだ。そんな人間に遭遇するのは幸運なことだろう。
「、、、人には苦手なことは誰にでもあります。智代子さんは兵士でもなく一般の方なのでしょ。なら、戦闘などは私たちにお任せください。ご不満でしたらご自身でできることをやるのがよろしいのかと。」
「確かに私は戦闘はできません。わかりました。なら、私に魔法を教えてください。遠くからの援護やなどサポートができるはずです。お願いします。」
カタリナは少し目を瞑って考えている。諦めたかのように智代子の目をまっすぐと見る。
「魔法は万能ではないの。しかも、ちょっと教わって出来るようなものでもないし、才能にもよるの。私から教わって出来ない場合は時間の無駄ということになるの。それでも魔法を知りたいの。」
「なにもしない方が無駄。なら、博打をするのが一番の選択肢です。私、博打で負けたことはありませんよ。」
自信満々にいう智代子にカタリナは負けたようだ。
「わかったわ。ならまずは魔力の操作から教える。手を出して。」
智代子はカタリナと特訓をするらしい。
(私もあんな風に誰かと打ち解けることが出来たらいいのに。)
零はそう思うが自分ではできないと思っているため考えを捨てる。今は強くなりここから脱出をすること。更に研究者であるうさぎに会って話すこと。そのためにも一人では無理だ。有二や星川たちと合流をしなければいけない。
いつ戦いになっても大丈夫なようにしなければと思い気を緩めずに近くに罠を仕掛けるため立ち上がった。
「零。どこにいくの。トイレ?」
智代子は女の子しかいないからかデリカシーも何もない。
「違う。ここにしばらくいるのなら簡単な罠を仕掛けようと思っている。」
そう言ってからそのあたりに罠を簡単に仕掛けをしていく。その間、彼女らは魔力操作の練習をしている。一応ここからでも見えるということで零もやり方をみて後で試してみようと思った。
魔力というのは感覚で零はわかっていた。元々、気というものは扱うことができた。しかし、それとは違う体を流れるものを感じるようになった。それが星川たちと出会ってから魔力ということがわかり扱い方を知りたかった。彼女は武術を習っていた時から見取り稽古をしていたため教えてもらっているのを見るだけでできるようになっている。
罠を仕掛け終わり武器の手入れをし終わった時にはもう寝ることにして明日から探索をすることになった。2人が寝ている間にみたことをしていく。魔力を感じるのは省くとして魔力を自分の意思で身体中を循環させることをしていた。
「魔力を気と同じように指先から頭のてっぺんまでに通わす。できた。これを続いけていく。」
しばらくの間それを続けていく。それで、意識を途切れることなく続けることができた。次は、魔力を体の外に出すこと。これができるようになったら魔力弾というのができるようになるらしい。
魔力を手の平に集めていく。ある程度集まると誰もいないところに向けて、集まっている感覚を飛ばすように命じる。けど、魔力は集まったままで変化はない。
「飛ばす感じではダメなのかな。よくわからない。」
「魔力を磁石のように離れるようにしなければ自分の魔力は体に留まろうとして飛びませんよ。」
零の背後には寝ていたはずのカタリナがにっこりと笑顔で立っていた。
「ようやく、零さんと話せますね。」
今後のステータスパラメータ
EX,S,A,B~Fとする。それぞれの値では+がつくことでそれぞれの値の中で突出していることを示す。(例:B++)
 




