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Dear Labyrinth_親愛なる迷宮_漆黒の影と神の使徒  作者: 森の番人
第一部 「世界の迷宮 labyrinth」
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第二十話「復活」

 なんか声が聞こえる。ここはどこなんだろう。なんだか思い出せない。記憶喪失ってやつなのか。

 (名前は思い出せる。けど、声が出ない。のどがつぶれたんだろうか。それともここが夢の世界で自由に動けないだけなのか。よくわからない。)

 視界は真っ黒ではなく真っ白である。何もない空間だからか。俺になにが起きたのだろう。

 「おい、貴様。聞こえんのか。」

 声が聞こえる。段々目の前から人影が見えてくる。

 (長い白ひげ、仙人と言っても過言ではない見た目の爺さんか。テンプレとは違うからなんだかショックだな。)

 「お前の思っていることは読心術で分かっておるぞ。悪かったのう紀元前から生きておるじじいで。」

 ぼんやりとだが見えるじいさんはがっかりそうにしているのがわかる。

 「そう思うなら早う話を聞いてくれると嬉しいのだがの。」

 (話を聞くけど、こっちの質問には答えてくれよ。)

 口元をにやりとさせているのがわかる。

 「やけにすんなりじゃのう。漫画といったかのうああいうのだと、戸惑ったり、わしに理不尽に起こるとかするのを楽しみにしてたのじゃが、しくしく。」

 (ウソ泣きはいいから。で、あんたはだれなんだ。)

 「おお、そうか言ってなかったか。儂は吸血鬼の真祖であり、人間からは『時の賢者』と呼ばれておる。貴様が先程、、、、そうか記憶がないのだったな。貴様はここに来る前にわしの眷属の分身と戦い傷ついたところに何者かの毒が作用し死にかけたところを吸血鬼化する儀式を今行われておるところじゃ。その儀式で使われたのが儂の眷属の血の情報で儂との精神回路が一時的に繋がっておる。」

 (ふんふん。なんだか記憶が戻ってきた気がするけど、じいさん結構やばい存在なんだな。吸血鬼化か悪くはないけど日光は大丈夫なんだろうか。)

 「落ち着いてないか?人間ではなくなるのだぞ。宗教的にも教会にも処罰いや処刑対象になってしまうのだぞ。それでいいのか。」

 とすごく驚いているようで聞いてくる。けど、あいにく日本という場所から来たから宗教に属しているのは書類上ていうことで宗教に無関心な人は半数以上であることは確実だろう。たぶん。その中で無宗教にいる。だから、ぴんとも来ないし人間以外になるという展開は心のどこかで楽しそうで拒否することはない。

 (いやー吸血鬼になった方が今後役に立つからね。身体能力や魔力も上がるし。)

 「そう、、、驚き過ぎて口調が戻ってしまうわ。しかも貴様は吸血鬼にも適性があるのう。本当に人間なのか。」

 (そんなことを言われても人間なものは人間だし。)

 「まぁ、いいとするかの。儂は貴様に教えるべきことがありここに来た。」

 (教えるべきこと?迷宮からの脱出方法?)

 「そんなことではない。貴様らが駅にたどり着き案内をしておった女がおろう。儂の孫娘にあたる子でな迷宮から共に出てきてくれ。そして、貴様のその腕の力はわれわれ上位種が人間より上の存在種であることは知っておるだろう。その更に上の存在種、「神」と呼ばれるものの概念武具であるものの一つ。まぁ、神は儂ら上位種が気に入らないからやっていなくなったけどね。」

 (かみさまを気に入らないから殺すってなろう系でありそうなやつをサラッと言いやがった。)

 「なろう系とやらでも儂らと同じことをする輩がいるのか。いいのう。」

 (なんか勘違いをしているけどいいか。それより、この腕は概念?武具の一つって言うけどほかにもあるってことだよな。)

 「そうじゃ。腕以外には足、胴体などと複数存在する。それぞれで能力が違い複数持っているものには恩恵が与えられ強さが上昇するあれは苦労したわい。何人、何匹は死んだしのう。」

 (とんでもないな。迷宮にそんな武具が複数あったら簡単に殺されてしまいそうだな。敵が。)

 「そうじゃの。迷宮にはその武具が全部あるからのう。どうやって集めたのか。」

 (は?)

 「は?ではないのう。全部あるといっておる。武具は殺した相手に宿るのは確定された取得方法だから気を付けるのじゃぞ。持っているものすべてが仲間ではないぞ。力を得るために人間同士殺しあうことにも発展しかねんぞ、そういえば貴様は吸血鬼もどきになるから人間同士には入らんのう。あと、適性がなければ手に入れても神の力という猛毒で死ぬから安易には手に入れるのは避けたほうがいいがの。」

 じいさんは愉快そうに笑っている。そもそもなんでこいつはそんなことを知っているのかが謎である。問い詰めようとするが阻まれる。

 「そろそろ儀式が終わるようじゃの。孫娘を連れて出て来いよ。」

 じいさんの声が聞こえ終わると急に視界がブラックアウトした。意識はゆっくりとなくなっていく。

 「じいさんから名前聞いてなかったな。」

 


 目がはっきりと開く。今までただ目をつぶっていたようにはっきりとしている。

 目が捕らえたのは天井。しかも、ボロボロの。起き上がろうとするが背中が痛い。今度は手をついて起きることで背中の痛みの原因が分かった。駅にあるベンチに横になっていたらしい。プラスチック製だったらしく変化も柔らかさもないので痛くなるに決まっている。ゆっくりと体を起こすとなんだか血の匂いが鮮明に匂う気がする。体の中から魔力が感じるようになっている。魔力量がふえた結果なんだろうか。

 「吸血鬼になったのか曖昧だな。感覚的には。」

 「起きたのか、案外早いものよ。首だけだが許せよ同胞よ。」

 起きて声がする方を見ると座布団のようなところに生首が置いてあり、その生首が喋っている。

 「おいおい、あんたそんな状態でまだ生きてるのかよ。ホラーゲームだといきなりプレイヤーに殴られるぞ。」

 「ホラーゲームというのはわからんがただの人間ならこの状態でも問題はない。」

 生首だけな存在は先程戦った相手であるローズマリー本人である。最後に見たときは生首だけという悲惨な状態ではなかったのだが。聞いてみることにする。

 「ローズマリーさんはなんで首だけなの。再生もしてないし生きているのが不思議なんだが。」

 「ローズでよい、同胞よ。吸血鬼は生命力も高い。我は分身でもそ力は高いのでな、だが長くはもたない。だから貴様が吸血鬼(仮)とでも言おうか。それになるのを見届けてから本体に戻るつもりなのじゃ。」

 「吸血鬼の一言で片づけることが出来るのは便利だな。吸血鬼(仮)て本物と何が違うんだ。」

 「対しては違わんが身体能力と魔力は劣るのは勿論、日光は安全ということかの。日光は真祖かそれに近しいものか貴様のような半端物の中の半端ものしか安全ではない。それ以外は存在が人間よりも一歩上になったことぐらいか。まあ、気にするな。天狗からの毒は浄化できたし、毒耐性もできただろう。なら、貴様はこの女とここから出ることに専念しろ。真祖のじじいにも言われただろ。」

 「ああ、爺さんの名前は知らんけど。」

 「名前なんてあいつにはいくつもあるの意味が無いに等しいは。あのじいさんと一度繋がったのなら勝手に契約を結ばれておるはずじゃ。」

 「契約?」

 「そうじゃ。契約を破ると貴様は死ぬぞ。内容は先程言ったようにこの女とここから出ることじゃ。わかったな。」

 いきなりのことで驚くのは間違いはないが慣れてきた。結局はこの迷宮から出ることには変わりがないことなのでそのぐらいなら問題はない。あと、あのじいさんの孫娘らしいから戦力にもなるだろう。それなら問題はない。こっちもありがたいことだ。

 「わかったよ。それよりキースとカムイはどこにいるんだ。さすがに殺してはないだろう。」

 「あの二人なら水を汲ませに行かせたぞ。ついでに食料も。力を蓄えておかないとここから出ることもできまい。貴様も力を蓄えておくがよい。我はそろそろ消えるとするかの。あとは頼んだぞ。海には気を付けることじゃ。」

 ローズは目を瞑ると全体的に灰になり消えていった。あっけない退場の仕方だった。そして、残っているのはワーグリンのみだ。静かなままなので結構気まずい。だから、こちらから接触をする。

 「ワーグリンだよな。ローズから聞き忘れてたことで、あいつの目的って何だったんだ。」

 ワーグリンはこちらをちらっと見てため息をつく。なにか気に障ることでもしたかな。

 「わたくしは偉大なる吸血鬼の真祖の中でも上位である存在の孫娘よ。あなた程度の吸血鬼にもなっていないあなたごときに話す資格があると思いで。ローズの分身を倒したぐらいで調子に乗らないでくださります。」

 「なるほど、ゴスロリにお嬢様が組み合わさっているのか。面白いな。」

 「あなた馬鹿にしてますの。吸血鬼になりかけの存在でも吸血鬼種の一人、上のものには許しがないと口を開くことすら万死に値する行動てことを知りなさい。」

 「そんなことを言われてもな、、、俺には関係ないことだしな。」

 「あなた、今ここで死にたいのかしら。」

 とゴスロリお嬢様から脅されるが問題はない。なにせ、

 「ローズより弱いし、あの時の俺と同じレベルの強さだしやられる心配はないと思うけど。特殊な力でもない限り。」

 お嬢様は口元をゆがます。たぶん図星なんだろう。見栄っ張りなんだろう。

 「じじいからあんたと一緒にここから出ろって言われたから出るぞ。」(めんどくさいのが増えたのが残念だ。)

 「心の声が聞こえてきますわよ。わたくしもここから出たいので不本意ながらついていきますわ。それとそろそろ喋り方を変えるかの。あやつの前ではお嬢様口調でないといけないからの。」

 と頬に手を当てまたため息をついている。彼女は案外やるときにはどんな手でも使いそうだ。プライドは守りながらだけど。

 こっちもため息が出そうだ。

 雷帝の娘に吸血鬼の真祖の孫娘とさらに増えそうで今後が怖すぎる。ここから出ても絶対に厄介ごと巻き込まれたのは確定しているね。

 キースを見て心を落ち着けるかな。キースをそう思うのは結構心がやられているのでは。



 「有二起きたのか。良かったよいきなり顔を真っ青にして倒れた時にはこっちも顔が真っ青になりそうだったよ。」

 キースはいつも通りを反応してくれてやっぱり落ち着く。カムイは元気になっているようだ。良かった。キースの背中にはリュックサックがある。ローズの言った通り食料などを持ってきてくれたのだろう。

 お腹もすいてきた。

 「ここでいったんご飯にしようか。俺の世界では腹が減っては戦はできないっていうし。」

 「俺もお腹がすいたからそうするよ。カムイもいいよね。」

 キースがカムイに尋ねるとこくんと頷き確認が取れた。お嬢様は食べるのだろうか。

 ちらっと見ると、

 「わたくしも食べますわよ。力を蓄えておかなければならないですし。頼りのないガード達ではわたくしを守れるか怪しいですし。」

 「口調、戻っていないぞ。」

 「っ!!」

 と食べることになった。

 キースはいつも通りで変わることもなく、カムイはより一層無口になり、変なゴスロリお嬢様も加わる。この迷宮はいろいろなものを詰め合わさった蟲毒であり、それを研究するところであると思った。


今回で前半が終了です。次からは中盤に入り迷宮内のモンスターだけでなく人間も出るようになるはずです。次回はステータスを公表していきます。

これからもよろしくお願いします。

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