第十八話「血の匂う駅」
俺のスキルは力を溜めるという行為をしなければ爆発的な威力を誇った攻撃をする事ができないチャージ式のスキルだ。それを最初から溜めることが出来る状況。うまくこのスキルを使うことが出来ればこの壊れない腕を最大限に使って大剣と組み合わせれば今まで以上に攻撃を出し、自慢をするこの吸血鬼を撃退することが出来るのかもしれない。
(キースはさっき戦った天狗と同じようにしてといったからそうすると思うけど、天狗とは違い明らかに格上の格上。トラップも効くかはわからない。ゲームではどんな感じだっけ。)
ゲームでの吸血鬼を考えてみる。まず、日に弱い。ここには日はないので弱点にはならない。聖属性に弱い。魔法使えないし。再生能力が高い。時間をかけて倒したり一撃で絶命させなければならない。難しい。血を使った攻撃をしてくる。対処方法なんてわからないからね。デバフをかけてくるぐらいで対策なんてない。身体能力が非常に高い。これはスキル頼みでどうにか対応するしかない。魔力量が膨大。さっき見てわかった。膨大というものではない。濃度が異常にすごい。今まで見た中で次元が違う。後は考えても無理だ。
そう簡単には殺してはこないので様子を見ながら油断しているところを連撃をしてキースの罠にはめてそこにまた強力な一撃を与えればいい。
大剣を両手でしっかりと前に構えて準備を整える。
「準備はよいのかな。そろそろ始めるとしよう。どこからでもかかってくるとよい。」
ローズマリーはなにも持たずに優雅に立っている。なら、横っ腹に全力で振り切ってやる。力を足に込めて間合いを詰めていく。足運びは自分でもわかるようにブサイクだが、相手の手が届かない位置からの攻撃をすることが出来る。
掛け声とともに左から右に力任せの一撃をふる。
「良い振りじゃの。けど、避けるのはたやすい。見え見えじゃ。」
ローズは少しだけ足を後ろに引き体を後ろにそらす。それだけで簡単に避けられた。重圧で自分が思っていたよりも距離が開いていたことになる。
ま、簡単に避けられたのなら次は連撃に切り替えるのみ。左足が先行しているので右足を引き寄せて左足をもう一回踏み出して次は2連撃右上から斬りつけそしてもう一回左から右に振りぬく。右からの攻撃は簡単に避けられたが左からの攻撃は今度こそ確実に当たる位置にいる。
せいッという掛け声と共に振るった一撃は確実に当たったと思った。
「今度は防御に回らなければならないとは、落ち着いて攻撃を出せておる。なかなか見どころがあるのう。」
ローズは右肘と右足で大剣を挟んで攻撃を止めている。
「ありえないだろ。威力を完全に殺してその場から動かずに止めたのか。」
「ふふふ。攻撃を喰らってもよいがな、そんなご褒美損傷は調子にのる輩が多いのから防御することを褒美として受け取るのじゃ。ほれ、惚けている場合か。次はこっちの番じゃぞ。左じゃ。」
「ひだり。」
左を向いたがなにもない。その瞬間、右わき腹に痛みが走る。
「すまんの。わしから見て左じゃ。」
その声は遠ざかる。そう、ただの蹴りで数メートルさきのベンチまで飛ばされた。ベンチは固定されていなく一緒に転がっていく。
肺にある空気が強制的に放出されていく。せき込んでしまう。
「次は避けれるか。」
その声は受けから聞こえてくる。視界の上ではローズの足が下りてくるのが見える。
(避けれない、、、!)
腕をクロスさせてガードをする。普通の腕なら砕けてそのまま脳天に直撃するような威力を想像させる衝撃が腕にやってくる。スキルで身体能力を高めて不懐の腕なので完全に守ることが出来た。
「その腕が壊れないとこを見ると何かしらの能力じゃの。よかったの。命拾いしておるからの。」
ローズは後ろに下がり距離を取る。そして俺ではなくキースを見ていく。
「そこの坊主は罠を仕掛け終わったのかの。なら、そろそろ攻めさせてもらうぞ。」
キースに歩いて攻めよっていくローズ。キースは後ろにゆっくり一歩一歩下がっていく。
すると、ローズの足元が光る。そこから雷が下から上に走る。しかし、ローズは何もなかったように歩いてくる。次に光って出てきたのは水の竜巻である。おそらく水の渦で拘束をする類のものだろう。予想通りローズは何もごともなく出てくるが体は水で濡れている。
キースは出てきたばかりのローズに魔法を放つ。雷だ。
「その程度の魔法は、われには効かん。いくら水と雷の組み合わせでもわれの魔力で簡単に防ぐことができるからの。」
「は、それって俺の魔法は意味がないということじゃ。」
ローズはキースの驚愕に対して笑っている。楽しそうだ。なら、こっちからも攻撃をしていくのに罠を利用する。視界を遮るにはちょうどいい。
(キースの罠にはめておれの最大限の攻撃力で敵を倒す作戦だったけど、大体はあってるから大丈夫だよな。)
大剣を再び構え直してローズにもう一度接近する。最初に受けた重圧はもう影響は受けていない。なら、いつもどおりにやるだけだ。
ローズに縦斬りをするがまた簡単に避けられる。がそれは囮。上から下す速度よりも上げる速度を上げて油断と緩急をつけて咄嗟には避けれないようにする。
キースの攻撃が効かなくても意識はそっちにも割くはず。案の定、一撃目で似たような攻撃なので次の攻撃までキースに意識を多く向けていたが一撃が先ほどよりも早く反応が遅れていた。
右脇下を大剣が捕らえる。力任せの一撃で、頑丈な体だが細い体であり、スキルを使った相当な力なので腕は胴体と離れ離れになる。そして、彼女の体から血が吹き出す。
「ほー、その技面白いのう。確か燕返しだったかの。似たような技を見たことがあるぞ。」
吹き出していた血が一瞬で止まる。不気味すぎる。しかも、顔には血がついていて笑顔である。なお怖い。ホラーだ。
キースも魔法を放つが、片手で軽く止められる。
「ここで、十数人を葬ってきたが腕を飛ばすのは貴様が初めてだ。仕方ない。ギアを一つあげるとするかの。腕はサービスでこのままにしておいてやろう。」
腕がなくなり、再生することも出来るはずなのにそのままにしておくという。強者の余裕ということだろう。
「多少傷をつけるやつはそこのカムイ以外いなかったが、次の相手が腕を飛ばすとは、、、。運がいい。この力を使ってやろう。」
ローズは先ほどからのキースの攻撃を片手で打ち消しているなか、先ほど腕があったところからまた血飛沫が出る。しかし、ただ出るだけで無い。円を描くように薄く薄く広がっていき円を描く。
「何かやる前に、もう片方も飛ばしてやるよ。」
次は飛びながら右を狙うが遅かった。
「『血の薔薇庭園』(ローズのお気に入りの庭)」
血が地面についた途端、空気の匂いは鉄の匂いになり、地面から赤黒い薔薇が咲き始める。攻撃は勢いを殺さずそのまま迫っていく。攻撃は当たる予定だった。
「ほれ。」
地面から何かが飛び出してくる。それは腹にすごい勢いで激突する。
「ぉう。な、んだ。」
攻撃を途中で中断させられた。しかし、驚いている暇はない。追撃が来るだろう。
予想どおり地面から次々に生えてきて迫ってくる。それを転がりながら避けていく。そこにローズが突撃をしてくる。
「そこには特製の罠があるんだよ。」
キースが叫んで罠である魔法式を起動させる。魔法式が発動する光が強く放つ。俺もそれが発動したタイミングで攻撃を仕掛けるタイミングだ。流石にキースが特製というぐらいなのだから流石に吸血鬼にもダメージをあたることができるだろう。
今度は大剣のブーストを使って急所を狙って行くことにする。構えて突撃の準備をする。特攻ほど怖いものはないと言っていた気がする。そして、魔法が発動する。
「おらぁ!」
叫びながら剣を縦に大きく構えて走る。侍みたいな格好である。
これで、形勢弱点である。よくわからない攻撃も出し惜しみをした相手が悪い。先手必勝とはこのことである。
「「くらえやぁ!!」」
『バリンッ‼︎』
魔法はガラスの砕ける音と共に消え去った。
「残念じゃの。相性が悪いんじゃ。」
剣は地面からの攻撃で吹き飛ばされる。魔法が発動しないのに呆気を取られた。そして、ローズの蹴りが迫ってくるのをかろうじて腕で守る。しかし、二撃目は、地面からの攻撃にまた腹に。そのまま、ゴロゴロと転がっていく。うつ伏せになっているが追撃はこない。
「わしのこの技はの、わしの力が上がるだけでなく、お主らが仕掛けた罠を無効化し、罠の位置、相手の位置までもわかってしまう効果があるのじゃ。残念じゃの。はははっはっはは。」
腹に手を当て、ほおを赤く染めながら大笑いをしている。牙を見せ、目から涙をだし、これが普段の笑いならいいが、今はただ、ただ純粋な恐怖を底上げするものでしかない。こいつも化け物だってことを忘れかけていた。
しかし、突破口であり、キースとの連携であるものをここでは無意味になった。
「さあ、楽しいのはこれからぞ。われを殺してみせろ。」
笑い終えてからもほおを赤色に染めた吸血鬼は歩みを進めてくる。




