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Dear Labyrinth_親愛なる迷宮_漆黒の影と神の使徒  作者: 森の番人
第一部 「世界の迷宮 labyrinth」
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第十七話「死の前」

 市街地は思っていたより普通だった。森を抜けた道の先には車が十分通れる幅がある橋が架かっていてそれを通った先には両側に2,3階建ての建物が複数並んで建ってある。その先にはT字路になっていてそのまま先に進むと駅の入り口が見える。

 初めての場所だが文化は俺の世界の基準だ。しかも、現代であることがわかる。市街地の入り口が見慣れたような光景なので少し落ち着く。けど、この先にいる奴はこころの安寧を許してはくれないだろう。

 いくら誘っているからといっても奇襲がないとは限らない。警戒をしつつ足を進めていく。しかし、何事もないまま真っすぐに進んだ先にある駅に簡単にたどり着いた。

 キースがなんか尋ねてくる。

 「ここはなんの建物なんだ。扉もないし変なところだな。」

 「ん?知らないのか。ここは駅だぞ。」

 「駅?魔導列車の乗り場か。にしては全く防衛のことを考えてない作り方だけど。こんなの田舎でもみたことはないから魔物や敵勢力から一瞬で奪われてしまう。」

 「そっちの世界のことは知らないけど、こっちでは魔導列車じゃなくて電車を走らせてるんだ。魔力をつかったものではなくて、電気の力を使っているんだ。あと、一般に使用されているから防衛なんて基本は民間レベルだからね。」

 「え!?科学の力ってすげえな。」

 「いやいや、魔法の力を操る人たちがなにを知っているんだ。」

 キースは科学のことをおれの世界の人たちがいう”魔法”みたいな存在なんだろう。世界が違うと常識は違ってくる。常識を強制する老人たちはこんな状況ではなじむことなど信ずることは難しいのではないのかな。常識もいいものと悪いものを入れ替えながら更新をしていくものなのに。

 頭の中でさっきの会話を発展と行き過ぎた考えをしてしまう。いつもの悪い癖だ。

 そんな危ない人みたいな思考はさておき、このまま駅に行くか、左右の道のどちらかに行くのか決めなければならない。キースにも聞いてみよう。

 「それより、駅のホームに行くか、左右のどちらの道に行くか、、、だけど、誰かいるな。」

 尋ねている最中に駅から誰かが出てくる。正面にいたので気づくことができた。

 「今も魔法で見ているのはあの子ではないのはわかるけど、それでも結構な強さを肌で感じ取れるのは気のせいではないな。」

 そう、駅の入り口からコツコツを足音が鳴り響く。その音を鳴らしている主はゴスロリであった。しかも、真っ黒なふりふりの日傘をさしながら。俺たちとの距離が10mになるとピタッと止まり、日傘を閉じて体の前に両手で持つ。そしてそれぞれの顔を見てから頭を下げる。

 「ようこそ。血の匂う戦場からわざわざ。わが主の元へと案内させていただきます。それでは、わたくしについてきてください。」

 そう言い、傘をさして、駅のホームへ振り返り歩いていく。コツコツと。敵からのお誘いということで気が引き締まる。今まで突然の襲撃が多いので今回は不意なことに対するゲージが低い状態でできそうだ。

 「よし、行くぞ。」

 キースもこくりと頷いてゴスロリについていく。

 ゴスロリの歩く速さはゆっくりでこちらを弄んでいるかのようにじらすように思える。

 駅の改札につくがそのまま抜けていく。切符や交通系ICを通してはいないが侵入防止にさえぎられることはない。しかし、天井を見ると電気はついていることがわかるのであの改札にも電気が通っているのだと思うが何もない。セキュリティシステムを解いているのか。

 ホームにつき、階段を上っていく。入り口とは違い鉄のにおいがすごい。もしかしてだけど、これは血の匂いなのか。鉄の匂いとは違う嫌悪感があるからだ。

 そう思いよく見てみると赤というより、黒に近いものだった。血なのかもよくわからない。

 階段もボロボロで穴が開いていたり、焦げているところもあり、何かが起きたのは間違いがない。

 階段を下りていく。段々ここから立ち去りたい気持ちがたまってくる。どうして、こんなところにいるのだろう。

 ゴスロリは階段を降りきると端にそれて日傘を閉じ軽く会釈をして止まる。先に進めということらしい。

 階段の先にはデカい柱がそびえたっており二手に自然と別れて進んでいく。その先にはまたデカい柱がありそこにカムイが結びつけられていた。

 「カムイ!!??」

 キースが大声で叫んでいる。俺は驚きで声が出なかった。まさかここにカムイがいるとは思っていなかったからだ。カムイが結ばれているものが鋼鉄のワイヤーである。カムイの状態は、、、

 「よかった。まだ生きてる。」

 すぐさま近寄ったキースからその声が聞こえる。カムイは結構、いや嫌いになるぐらいしつこい戦闘をしてくる。だからなかなか倒れることもしない敵にするとめんどくさいやつであることは間違いはない。

 そのカムイを戦闘不能にして拘束をする相手だ。天狗なんて雑魚というレベルなのかもしれない。

 キースはカムイを降ろそうとしているが垂直な柱から降ろすのにカムイの拘束されている場所は高い。

 俺たちがこの後相手にしなければならない敵はもしかしてデカいやつなのか。

 俺もキースに協力をしなければ。キースに肩車を提案をし俺が下、キースが上でカムの拘束を外していく。意外にも取りやすくキース手際よくとっていく。

 「あ、有二ごめん。」

 キースがいきなり謝ってくるからなにかと思ったらキースの足をのせている肩に激痛が走る。キースが拘束が解け落ちてくるカムイをキャッチしていた。結構痛かった。

 「あははは、人間は仲間思いでいいことよ。あははは。」

 突如笑い声が聞こえてきた。その笑い声はだんだん近くなり体に重圧も強くなっていく。

 「だれだ!?」

 「ここじゃよ。」

 どこにいるかを聞くための叫びは簡単に返事が返ってきた。しかも、目の前から。

 「うぉっ!」

 驚きのあまり後ろに飛びのく。

 その様子を見てもまだ笑っている。高身長180cmオーバー、黒髪のロングで腰当たりまで伸びている。そして真っ赤ないや、赤黒いドレスを身にまとっている。胸とおしりはデカく、ウエストは細い。もし、テレビとかに出たなら世界じゅうでのスターになるに間違いないような感じだ。

 しかし、お腹を抱えて笑っている。何が面白いのかわからない。けど、先ほどからの重圧は彼女からである。美女を目の前にしても興奮をすることはない。

 「お主ら人間は面白い反応をするものじゃな。退屈はせんのう。」

 黒髪をバサッと振るいなびかせる。その行為で辺りに薔薇の匂いが香ってくる。しかも一つの香りだけでなく草特有の匂いだがいい匂いである。謎すぎる。

 「俺たちを人間呼びするってことはお前は人間じゃないのか。」

 「お前ではないぞ。我は高貴な真祖によって眷属になり吸血鬼の貴族に位置するもの、名はローズマリーである。仲間たちからは敬意を込めてローズと呼ばれておる。」

 と胸をはり自慢げに語る。これはもしかしてだけど、残念系である気がする。個性が強いな。

 「きゅ、吸血鬼だって!?有二、最強種の一つだ。」

 「最強種ってなんだよ。」

 俺の疑問はキースが答えるのではなくローズマリーが代わりに自慢げに答える。なんでだろう。

 「我は人間や魔物、亜人どもとは違い最強種と呼ばれているのじゃ。その中にはそこの有二といったか、そなたが会った龍人もそのうちの一種に属するものじゃ。そしてわしら吸血鬼は太古、人間たちがいう紀元前より前から存在する鬼の一種であり人間の生き血や魔物を討伐をして長い間生き続けていたことにより存在が上位に昇り、更に眷属によって吸血鬼になったもの以外の原初の吸血鬼たちを真祖という。そして眷属にされたものは旧祖と言われておる。旧祖の中でも真祖に眷属にされたものは旧祖の中でも最強なのじゃ。つまりはお主らとは格も違えば強いのじゃ、我は。」

 と長い説明をしてまた自慢げに胸を張って笑っている。こんな自慢ばかりをしているなら戦っているときに油断をしているところを攻撃すれば確率は低いが倒すことはできるのではないのか。

 「おおと、我はやるべきことを忘れるところだった。わしらは人間の中でも強いもの達を探しておるのじゃ。貴様らをここで選定してやるかの。そこのカムイはまぁまぁじゃの。だから命は取ることだけはやめておいてやったのじゃ。」

 そう、言い自慢して張っていた胸を緩め、こちらにしっかりと向き直す。そして、彼女の方から風のようなものが吹いてくる気がしてくる。

 「さて、作戦や武器を構える時間はくれてやろう。」

 ローズマリーから徐々に魔力が漏れ出してきた。それは、黒く見ていると気持ちが悪くなりそうなものだ。高密度の魔力であることを本能的にわからせる。

 背中の大剣を抜くが異様に重かった。これでどうやって倒すことが出来るのだろうか。

 「ちなみに、見込みのないものは殺すのでな、我の力の一部になる資格もない。屍か、生きることが出来るか貴様ら、退屈させるなよ。」

 「キース、天狗と同じように戦うぞ。それぐらいしか俺たちの連携で通じるものはなさそうだ。ぶっつけはこいつには無に等しい。」

 「お、おう。」

 力も体全体にいきわたらせていく。スキルを十分に活用できる状態で戦闘を開始することが出来る。

 でも、魔力を使ったことは大剣でしかないからほかの活用方法を知っていればここを切り抜けることが出来たのかもしれない。今、悔やんでも仕方がない。

 大剣を握る手に更に力が籠る。

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