第十五話「貴重で貴重でない天狗の情報」
この迷宮はどこに存在しているのか。もしも、俺の世界にあるとするなら科学技術の発展はとんでもないことになる。某ハザード以上の生物を生み出しているわけだし、魔法が存在をしていることになる。そして、異世界の人たちがいることも証明済みで呼び込むぐらいの技術を持っている。国家転覆や世界を征服できるのでは。そうなると、おれたちは実験に使われている実験動物である。
しかし、ここが異世界なら別の話になってしまう。よくありそうな展開としては神様たちの暇つぶしとしてこの迷宮を作り、さまざまな世界の人や魔物をいれてだれが脱出するのか、どんな死に方、人柄を見るための娯楽に利用されているのかもしれない。それなら、未知の世界に未知の技術や生物がいても不思議ではない。
「それじゃ、話してもらうぞ、天狗。」
「話させているだけだろうに、、、」
「なにか言ったか?」
「いいえ、なんでも。」
殺気で天狗の文句を一瞬にして黙らせる。そうしてしぶしぶと話を始めていく。
ここは、世界と世界のはざまに存在する小世界。小世界と言っても世界と比べてあまりにも小さい空間だけがあるところ。しかし、今ある迷宮が簡単に収まるぐらい広いらしい。
この世界は神たちは異世界転移をさせすぎて今後は自身が転移させた人たちをこの迷宮を使って選別試験を行っていたが、選別をするための方法を新たに考え放置した。
そこに目をつけたのがあまたの神の眷属である研究者たちだ。研究者たちは神が選んだ人選を少しずつ横取りという名の誘拐をしていた。そして、ここで研究をした結果を選ばれしもので試そうとしたらしい。それだけでは飽き足らずこの小世界に人を呼び寄せる技術をも開発をした。
そして、いま結果を収集するべくこの迷宮を形成し実験をしているという。
最初に出てきたうさぎもその中の一人であることと予想することができる。
さらに迷宮の出口もちゃんと存在するらしい。出口には一番近い世界につながっているとのこと。
しかし、今その出口は迷宮となった今では閉ざされているとのこと。何かしらのことをしなければ再び開くことはないらしい。
その方法はと聞くと顔を背けだす。子供か。
「どうせ、研究者の人たちもこの迷宮を脱出させることが目標の一つなんだろ。なら、今話してもなんの問題もないだろ。てゆうか話さないと段々骨の数が増えていくよ。」
「むむむ、しかたがない。」
そういい、なにやら取り出す。抵抗するための武器かと思ったが、バラバラになっている石のようなものを取り出す。
「要石じゃないのか、それは。」
あれこれ独り言をぶつぶつと言って気味悪かったキースが話に割り込んできた。
「要石って聞いたことあるような。」
「要石は地震などの厄災を鎮めるための石なんだ。つまりはこの脱出口は要石によって封じ込まれていてすべて破壊することで開かれるということだな。」
天狗は首を縦に振る。正解ということらしい。けど、すべての要石と言われてもどこにあるのやら。天狗が持っていたってことはほかの誰かもそのような石を持っていてそいつらから奪い取って破壊するということになるのかな。
要石がどこにあるのかを天狗に聞く。すると、簡単な答えが返ってきた。
「この天狗を含めた四名が持っておる。おぬしはもう見てるだろう。あの龍人が一つ持っている。だからこそこの迷宮からでることはできないだろうがな。」
「そんな勝てる勝てないじゃなくてあとの二人は誰が持っているんだ。」
「真祖の吸血鬼のその分身体が一つ。装甲獣ホビノン、攻撃も弾き飛ばし時には敵の魔法を吸収し己の力に変換する。どちらも天狗より強い者どもだ。しかし、このフィールドなら分があるのはこちらだがな。」
自分のフィールドなら負けることはないと悲しいことを言っている。ならこのフィールドで負けた天狗君は四人の中でかなり弱い部類に入ることになる。
「あと、脱出の方法は一個しかないのか?」
そう、脱出方法が一個しかないのは不自然だ。人が関わっていて研究者がいるとするならもしもの実態に備えた緊急出口が存在するだろう。なら、その脱出方法の方が格段に簡単になるだろう。
天狗はそれを聞かれ調子が悪そうに答える。
研究者には特殊な技術で加工されたIDカード?があると。それを用いてある場所に行けば出口までの経路が確保されるという。けど、カードがなければ意味のない方法である。
「IDカードがどんな道具かは知らないが天狗はその方法でここに連れてこられて貴様らを狩ることで報酬が得られるということで来たわけよ。」
天狗はIDカードを知らないらしい。つまりは研究者とのつながりは異世界で言う冒険者と依頼人という関係である打折る。
だからこそ、聞き出せたのはここまでだった。
依頼人の名前さえ知らないというのだから。
「有二、こいつ結構馬鹿なんじゃねぇか。」
キースにそういわれる始末。依頼人の名前なども把握せずに仕事をするのは愚の骨頂だといわれても仕方がない。
「天狗さんにはこれで聞けることは終わりということで、、、」
大剣を構えて構える。
「おい、情報を教えたのにまさか殺す気ではないのか。」
天狗はなにやら言っているが気にはしない。殺すことはしないからだ。
天狗の頭はボール、俺の大剣はバッドである。そう、野球のバッターとボールである。
頭から鈍い音を立てて気絶する。まあ、死んでなさそうだしこれで大丈夫だな。死んでも命を取ろうとしたやつに向ける感情はない。一切ない。
「キース、これから天狗以上に強い、化け物のところに行くことになるからついてきてくれないか。」
とこれから龍人に向かうことを伝える。キースは驚いて
「行きたくないよ。あの爺さんは一人だけなら逃げれるといっていたんだろ。なら、今はほかの要石を持ったやつらを倒したり、みんなと合流することを優先するべきだろ。」
「でもさ、あの二人、俺のことを邪魔もの扱いしてさちょっとイライラしているんだよな。それが理由じゃダメ?」
「だめに決まってんだろう‼」
俺の両肩をもちぐんぐんと揺さぶることで自分たちはいきたくない、行っても死んでしまうと必死のアピールをしてくる。その気持ちはわかるけどこのもやもやとした感覚を野放しにはしたくはない。
「絶対に反対だ。しかも、その龍人ってやつ俺の世界の伝説にも出てくる種族だぞ。勇者と対峙した際に友情が芽生えその一行に加わったという。しかも、その人ひとりで魔王の幹部すべてを相手取り勝利した化け物だぜ。」
そんな伝説があるなんて恐ろしいものだ。要石だけ破壊させてくれないかな。懐柔するのも一苦労しそうな感じだ。
「ビルは俺たちの誰より強いしずる賢いから、だいじょうぶ。さぁ、次のやつら、、、吸血鬼とかいうの長いから四天王でいいか。倒しに行くぞ。」
「へいへい。」
キースがどうしても行かないというのだから仕方がない。確かにビルがあの時俺を逃がそうとするときの一言があまりにも信用のできるものだったから抜け出したわけだ。
「それじゃあ、ノレンと合流してから要石の持ち主の捜索と破壊、そしてほかの脱出方法を模索するか。」
その一言でキースはようやく納得をした表情を見せる。
俺はまだ探索をしていない方へと向かうことを決める。おそらくそこにノレンがいるはずだ。その後頑張って地面を掘って天狗を生き埋めにした。復活してまた来てもめんどくさいからだ。そのまま木々の養分となってくれたらうれしいのだが。
キースと俺は簡単に身支度を整えてから森の未踏破区域に足を運ぶ。
天狗から受けた傷に少しだけ痛みが走る。




