第十四話「迷宮内の森林③」
「フンッ!ヤ!」
かまいたちの竜巻がうちわを振ると二、三個吹き出すかのように迫ってくる。一度通過をすると戻ってくることがないのが救いのある攻撃であるが、躱していると新たな竜巻を起こし襲ってくる。
距離を詰めては遠ざかり詰めては遠ざかりの繰り返しを10回もした。
「キース、とっておきでいいから隙を早く作ってくれ。体力を削られているだけだぞ。」
「といってもとっておきはこんな状況だと使えないぞ。離れてるし、飛んでるし。」
「なら、どうすればそれが使えるようになる?」
「こっちの方に天狗を移動させてくれればいいけど。」
「俺が反対に回らないといけないよな。なら、さっそく。」
「いや、仕込みはさっきようやく終わらせたからおれも行く。そもそも俺も行かないとあいつはこっちには移動してくれないぞ。」
「そうだな。じゃ、進路おおよそ北北東!」
そう宣言し、明確な目標ができると行動にもメリハリと勢いがつく。
数回の攻撃で位置が逆転をする。先ほどの会話は極力小さく話し、距離も離れていたので聞こえないはずだ。なら、後はキースが仕込みを行ったというところまでもっていけばとっておきが発動するはず。
「ごり押しでもいいから押し込まないと体力が限界を迎えてしまう。」
「魔力にはまだ余裕があるから魔法もいけるぜ。」
「なら、さっさと行くぞ。魔法は出し惜しみするなよ。」
「任せておけよ。」
先程から左手腕に溜めた力もずっと100%で保っていけるわけではない。少しずつ溜めた力は減っていきそれをまた溜めないといけない。これに集中力が削られてしまう部分がある。
キースにそのようなことを話したいがそんな余裕はない。絶対的な要件以外を話し合うとあの攻撃を喰らってしまう。
しかし、攻撃にも規則性が、つまりは癖がある。それは攻撃を与える隙でありその攻撃を避ける隙である。
それを活用して攻撃を仕掛けていけば、キースのとっておきの場所に追い込む決定打なる。
攻撃を学習していき今までは大きなステップで避けていたが小刻みなステップへと変化をし、そして、ぎりぎりのところで躱していく。そうすると、天狗までの攻撃するルートが頭のなかで作成された。
チャンスをものにしなくてはこれから成長はしない。思いっきり距離を詰めたところで、
「ここだぁ!”ブレイク”」
大剣のブーストと腰を使った回転を加えた敵の防御を砕くように自分で考えた技である。回転での威力とブーストで空中でも使える汎用性の高さが売りである。
「くぅ。これしき。」
小手を付けた両腕に当たり弱点への直撃はできなかったが、目的の位置までは後退させることができた。あとは、次に備えて力をほかの部分に回せるように溜めを始める。
「魔法式展開!第一層術式実行。対象を捉えろ!」
キースが設置をしていた魔法を発動をする。天狗を拘束をする魔法式がまず展開をして天狗の身動きを取る。第一層と言っていたからまだ他にもあるのだろう。まだ、力を溜めておく。
「なんだ、これは。魔力がまだ弱い。これなら、、、」
「第二層展開。有二、次の魔法が発動したら頼むよ。」
「任せとけ。一撃粉砕してやる。」
攻撃の準備はできている。大剣の重さと強化した身体能力の現在の最大値ならそれなりに威力が期待ができる。それに大剣の性能で速度がブーストされる。この一撃なら天狗は倒すことが簡単だ。
「第三層、、、てんか。」
「奥の手を使わざるを得ないとは、、、仙術『活育気功』」
キースが次の魔法を展開をする前に天狗が奥の手といい何かしらのスキルを発動をさせている。仙術というぐらいだ、仙人の扱う技の一つなのではという予測が立つがキースはぴんと来ていないが俺の警戒が強くなっている。
その仙術というぐらいなら拘束されているのを打開するとっておきかと思った。しかし、天狗が白いオーラのような湯気を纏ったように思うと体がメキメキと音を立て体がずんずんと大きくなっていく。まさかの肉体強化であった。
おそらく、身体能力を上げて物理的に拘束を破るのだろう。しかも、魔法に対しての抵抗値も上がるとても貴重な能力なんだろう。そんなのが完全に効果が発動するまでにとどめを刺さなければいけない。一瞬の遅れが命取りとなる場合になるのは前にも言った気がするが、そういうことだ。
「キース!!」
「展開!魔法<ショックデスバインド>」
中二病だと今なら言われるような魔法を発動する。天狗がバチバチと光を放つ。
「なんだ、この電流が走る痛みは。」
「電撃拘束魔法の上位魔法だ。普通は失神して拘束が完了するけど、、、このレベルの相手だと無理か。」
上位魔法で痛みが走ると、魔法の段階がどれぐらいの感じなのかはよくわからないけど、チャンスは今だ。
「我流、七星剣<<シチセイケン>>メテオ」
たった今考えた技名を口に出す。ちょっとだけ恥ずかしい。突撃の勢いを利用して剣を下からかちあげる。飛ぶときにも使えるけど敵を空中に上げることのでき、行動を制限させる。それから六連撃。力を溜めて放つ俺のスキルは一気に力が抜けるのではなく段々と抜ける。抜ける速度は使用方法によって変化する。素早い攻撃だとそれは遅くなる。
そう、一撃目は軽くつかい、残りは一気に解放をして瞬撃をする。右左上からを二連撃、左右二連撃、上から叩きつけ、即座に同じ軌道を戻り斬る。斬り返すときに筋力が足りないと脱臼などのケガをしてしまうことになる。それはこのスキルと身体能力のおかげで耐えることはもちろん、速度を上げることができる。ブレイクなんて比にならないレベルでだ。
とあるクール系陰キャ主人公の剣技の真似をする。剣の軌道は違うけど想像、明確な技の構成があると体も動きやすくなり、一撃一撃に威力がこもる。
天狗だけでなくキースの魔法陣ごと切り裂く。天狗は鮮血をまき散らす、魔法陣は綺麗に砕け散り虹の結晶のごとく振り散る。
天狗の体が小さくなっていく。おそらくは気を失うか、死んでしまったからであろう。天狗は地面に倒れピクリとも動かなくなった。
「魔法陣を破壊するなんてどういう攻撃なんだ?魔法剣とか、魔力のこもった武器でも透過するのに、、、。」
なにやら天狗を倒して安心しているのではなく、魔法陣が壊されたことに疑問をもっているようだ。魔法陣っていってもそこに具現化している回路なんだから破壊できるでしょ。
それよりも、天狗から情報を聞き出さないといけない。
「おい、こら。寝てんじゃねーぞ。起きろ~。死んだふりしてると骨を一本ずつ丁寧に粉砕していくぞ。いいのか。」
と冗談半分で脅し文句を適当に言ってみる。それでも、天狗は反応しない。やるしかないのか。
「えい!」
大剣を思いっきり足に叩きつける。なんか、いやな音がしたのだがそこは気にしない。時間は有限なのだから。
「っっっ!き、貴様。高貴な天狗の足を折るなどとは。」
「うっさい。高貴なんてもの俺たちからしたら全く関係ないんだからな。」
今度は長い鼻をぶん殴る。最初に会った時からとても偉そうにしていて腹が立っていた。純粋に殴るとその心の荒波も収まることは間違いなし。
「で、お前たちはこの迷宮の何者なんだ。ここの事しっかりと話してもらうぞ。」
「なぜ、そんなことをわしが。」
「拒否権、黙秘権はこの迷宮にはないんだよ。しゃべれば命まではとらないさ。」
「、、、、」
怒りという名の力を籠めたこぶしを地面にたたきつける。そこには亀裂が走っていてもう力のない天狗がその一撃で絶命の一歩手前になってしまうことが明白である。それを察してなのか、命まではということで話し出した。




