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Dear Labyrinth_親愛なる迷宮_漆黒の影と神の使徒  作者: 森の番人
第一部 「世界の迷宮 labyrinth」
12/49

第九話「成長①」

まだ試作段階です。

「ここだ、ここ。ここだと魔物は入ってこないんだよな。不思議な場所なんだ。」

そう言ってビルは切り株にずっしりと座った。その年寄りについてきた俺たち3人はその言葉を聞いて緊張を解いた。分断されてからはずっと緊張していたからいい休息が取れそうで少し嬉しい。けど、別れたみんなのことを考えることを忘れることはできない。自分よりも自分以外を考えることは悪いのかなんてわからない。けど、考えてしまうことは仕方がない。

「お前たち、もっと強くなりたくはないか?」

ビルは突然言った。

「いや、強くならないとここからは出られないぞ。」

「なんだと。私が弱いとでも言うのか?じじいだからって調子乗るんじゃねぇぞ。」

カムイはビルの一言に怒り喧嘩を吹っかけている。カムイの短期さは恩人に対しても発揮をする。こいつは少しでも冷静になれないのかと呆れてしまう。

その言葉を聞いたビルの口角が少し上がったのがわかる。

「お前はカムイだったか。お前は3人の中で一番危うくて弱い。それは断言できる。」

そう言い切りった途端、カムイはビルに襲いかかって行く。また、直進的に。ビルは剣を抜きカムイの首元に来るように置いておく。直線的に走ったカムイは剣に当たるか当たらないかのギリギリで止まる。ビルはその失速した身動きが制限されるところをしっかりとついてカムイの足を払い地面と一緒にさせる。しかも勢いよく。肺の空気は一気に体外へ放出される。

「グフゥッッ。」

「お嬢さんは短期で直線的。冷静なやつには簡単に命を取られて終わり。わかるかい。」

咳き込んでいるカムイの顔を覗きながらニカっと笑う。そして俺たち2人を見ながら

「お前たちは襲ってこないのか?」

と言ってくる。さすがに無理です、と2人揃って首を横にブンブンと振る。

「ま、2人がかりでもワシには勝てんがな。」

また笑う。陽気なじじいだ。

「さて、これで分かったように弱いとここでは命を落とす。それは魔物に殺されるのではなく人にも殺される。わしが善人じゃなかったなら1人は死んでいたな。これでも強くなりたいとは思わないのか?」

キースの方を見ると

「俺は強くなれるなら強くなりたい。元の世界に帰っても強さは必要だからな。そうだろカムイ。」

「ゲホッ、そうだな。」

カムイとキースは同じ意見らしい。あとは俺の意見だけらしい。このじいさんを完全に信用したわけではないが悪意はなさそうだ。今ここで慌てて仲間を探すことは得策ではない気がする。強くない騎士であの強さを持っている。

「わかったよ。特訓をするってことだよな。特訓はあまり好きじゃないけどやるしかないか。」

特訓することになった。


「カムイとキースの特訓の説明は終わった。あとは有二だけじゃの。」

「俺は何をすればいいんだ?」

「お前さんは剣を今までまともに使ったことはないだろ。」

「ああ、ここに来てからだな。剣なんて持ってるだけで捕まる世界だからな。」

「なら、身体能力向上をして肉弾戦とかの方がいいだろう。あと、簡単な中距離の攻撃手段とかもな。」

見てろ、と言い少し離れる。

「まず、魔力を出す。そしてそれを体の周りに纏わせる。」

そう言いながら魔力が出て体を纏う。よく異世界系の小説である技法だ。

「鎧をイメージしろ。イメージ力は人間の特権だ。魔力は不思議な存在でいろいろなことに変化してくれる。」

すると集まった魔力が強さを帯びているように思える。

「ほら、わしの右腕を殴ってみろ。」

右腕を差し出してきた。大丈夫なんだろうか。スキルで身体能力が向上している俺がじいさんの腕を殴って怪我はしないのだろうか。

「じゃ、行きますよ。」

拳を握り引く、片方は前に出す。足は開き過ぎないぐらいに開ける。そして、腰を切りながら右腕に一撃をお見舞いする。普通ならじいさんの腕は折れるのではないかの威力。だが、腕は微動だにもしてない。むしろ俺の手が痛い。

「なかなかいい威力ではないか。でもわしの体を強化すればこのぐらいは防ぐことができる。」

ほらなと言って腕は平気だと言わんばかりに動かしている。

「全力で殴ったけど本当に大丈夫なんだな。すごいなその技法。」

「これをやるにはまずは魔力操作ができないことにはどうしようもないがな。まずはそこからだ。」

「魔力操作か、、、できるにはできるけどこれでいいのか。」

カタリナから教わった魔力、操作方法を試してみる。体の中にある魔力を放出し纏うのではなく表面に凝縮させる。纏うのではイメージがしづらい。

「そうだ、魔力を知っていて操作できなら早い。次はイメージの具現化だ。自分がイメージをしやすいものでいい。やってみろ。」

イメージは全身鎧、先ほどの騎士を思い浮かべる。

「ありゃまできてないようだな。そう簡単にはできないもんだからな。」

失敗、魔力が乱れてただただ魔力を消費しているだけだ。

「ま、わしは他2人を見てくるとする。」

そう言って歩いて行った。

それからも何回も行いイメージもはっきりとしたものになっても成功はしない。

「いきなり魔力で体を纏おうとするから難しいんだよな。魔力を扱うのだって1日経ってもないのに。そろそろ1日だけど。」

ため息が出てしまう。今の今までが簡単に行き過ぎたのがおかしいのだけどでも上手くいかないもどかしさはなんか気持ち悪い。

「体を全部覆うぐらいの魔力なんて俺に本当にあるのか?せいぜいじいさんがやっていた腕ぐらいなものだけ、ど?」

今思いついた。なんで全身でやろうとしたんだろう。一朝一夕のものなんだから腕だけでいいじゃん!その方がイメージも集中もしやすい。

「両腕から手にかけてをフルアーマーにするように集中して、、、。」

魔力を具現化させる。すると纏わせることに集中をしなくても魔力はそこに留まってくれている。一部だけど成功でいいのかな?でもじいさんのとは違いなんか自分の魔力の感じとは少し違うような気がする。

動いて解除されるようでは使い物にならないとか言われるのは嫌だからちょっと動かしてみよう。

早朝のテレビでよくある体操をしてみよう。

両腕を高くあげながら息を大きくゆっくりと吸う。そして体の真横から腕を下ろしながら息をゆっくりと吐く。その他諸々をやっていくがこの技法は保ったままだ。

「これで大丈夫かな?これがどれほどの耐久値があるのかが問題かな。」

ようやく納得をすることができた。

「お、一息ついたようじゃの。こっちで飯でも食おうや。カムイとキースもそろそろくると思うからの。」

「その前にこいつを見てくれよ。成功しているはずなんだが、、、、。」

先ほどから展開させているものを見せる。

ビルは驚いた顔をしている。

「有二、お前その腕何か特別性なのか。」

「は、何言ってんの。どう見たって普通の腕だよ。」

「いや、わしの目にはその中に聖遺物が埋まっておるのだが。」

「聖遺物。何それ。」

「神話は知っておろう。神様や偉人のこととかは。それらが扱っていたと言われる道具などが現代になっても衰えることなく力を持っているものなど様々なものがあるが、大雑把にいうと神話時代ぐらいのすごいものとでも思っておけばいい。」

「で、それが俺の腕に埋まっているって?埋まっていても何も変わらないけど。」

「聖遺物とてちゃんと使わないとただの道具でしかない。今、お前の使っている技で聖遺物が反応しているんだ。」

「へぇ。どんな聖遺物なんだろ。効果とか知りたいな。」

「わしが見てやろう。この目[スピリットアイ]でな。」

「ふーん。ま、正体を知っても俺自身は変わらないからいいけど。」

(そうか、じゃ見るかの)というとビルの目が薄い朱色に光る。そして、じろじろと見られる。なんか気持ち悪い。

「一つ分かったことがある。有二の腕にあるものは相当な希少なものだ。ワシの目はランクBまでなら名前が分かり、実際に知っている能力かランクC以下は詳細までわかる。だが、そいつはランクBより上のもの。わかったのはわからないってことだけだな。」

と笑っている。

「おいおい。危ないものかどうかぐらいはわかりたかったけどな。」

「そのうちわかるさ。いやでも。」

早くこいこいと手招きをする。

「嫌でもわかるか、、、。」

本当に何がなんだかわからなくなってくる。巻き込まれてからほんとまともな休憩を取っていないからだろうか。今日は怪我も治り身体もよく動かしたからちゃんと寝ることが出来そうだ。



「お、ようやく来たのか。ほらほら、これ食べなさい。その辺で猪がいたからそいつで料理してみた。おいしいぞ。」

「ほんと、ほんと、これおいしいから有二も食べなよ。」

キースはモリモリとスープを食べている。顔には笑顔が溢れている。カムイは相変わらず無表情だが頬には赤みがかかっている。息を切らしていてもそんなことにはなっていなかった。そんなにおいしいのか。

ビルの差し出した器を受けとりスプーンですくう。そこには雑斬られているものの大きめの肉、野菜がありチーズの風味が食欲を駆り立てる。

「ん、では。いただきます。」

そう言い食べたら手が止まらない。4人で鍋が空になるまで食べた。


睡眠時は民家がありそこで寝ることにした。カムイが人間が襲ってこないように監視をするため外で見張りをしている。もともと夜目が効くらしくて名乗りをあげた。

すぐに意識が飛んでいった。



なんやら眩しくて目を開ける。ここで目を覚ますなら民家の屋根が見えるはずだ。なのに見えるのは空だ。しかも、白い建物、神殿、目の前に異様にデカイ円状の机がある。

で自分は椅子に座っている。今気づいたが足元は水がある。水に濡れて衣服が重くなる感じは一切ない。そして円状の机に複数の人が座っていて円卓らしい。

顔のあたりにモヤがかかっていて見えない。順々に見ていくと男性、女性、身体的特徴、衣服、武具がありなんとなくはわかる。顔だけだ。そこがわからないと人間はぼんやりとしか覚えることが出来ない。

(ここはどこだかわか、、、、声がでない。)

声が出ない。どこかを訪ねようとするが口を塞がれるような感覚だ。みんなもそういう状況かと思ったがほとんどは動くこともしていない。まるで寝ているかのようだ。

体は上半身のみ動く。隣の人には絶妙に届きはしない距離間。

仕方なく後ろにある背もたれにもたれた。

正面は誰も座っていない。その他は誰もが動いていない。

(ここにどうやって来たんだろうか。夢ならいいんだけど。)

ため息はちゃんとできるようだ。

建物を確認をするが西洋風に似ている気がする。大理石の机であることも確認できる。しかも、雲が自分の視線と同じ位置にあるのが不思議でならない。

正面が空いているのはただの偶然なんだろうか。と考えていたがちょうどモヤがかかって来ている。途端に眠気が襲って来た。うっすらうっすらとまぶたが重くなっていく時に正面には人影が見えて来た。

(人が増えた、のか、、、顔が見える。)

正面の人の顔だけは見ることができた。

(あんときの、、、おんなのひとか、、、)

見た顔はあの怪物「ギガント」の2段階目を倒した女だった。


もう一度目が覚めると民家の天井が見えた。先ほどの光景は夢だったのだろうか。いつもなら夢はすぐに忘れてしまうのに今回はなんだか忘れるようなことはなさそうだ。

キースとカムイはまだ寝ているようなのでゆっくりと起こさないように外に出る。

朝かなと思うが朝か昼わからない。そもそもここが夜になるのかすらわかっていない。

体はなんだか好調で昨日の疲れも一切ないと言ってもいいぐらいだった。いや、精神的な疲れはあるけど。

ビルの姿が見えないので探しにいく。

昨日?の食事をしたところはその跡だけでいない、ここでは空はないが上を見てしまう。すると視界の端で民家の屋根に寝そべっているビルを見つけた。無防備すぎるし欠伸をしている。だけど、攻撃を仕掛けても簡単に避けられてしまう想像しかできない。自分よりも遥かに強いことが本能的にわかってしまう。

普通ならゴブリン相手でも倒すことができたなら、「俺強いんじゃね」と自信がつくところ。いや、自惚れるが一番正しいのか。だが、俺はそんなことはここに来てからすぐに修正された。あのミノタロスだ。あいつのおかげで自分は弱い。だから弱いなりの戦いをして来た。だが、スキルも成長しちょっと浮かれていたのかもしれない。昨日の騎士、ビルを見ると明らかに自分が弱いことに間違いないと身に染みる。

だが、ヒトの強さを測る力はそのおかげで少しだが身について来ている。これは生き残る上で大切な気がする。

今は測る力よりも自身の力を上げることが一番だと思う。肉体的な強さは1日にしてならず、新たな技術は才能かコツを掴めばそれだけで力になる。あとこの腕の力はなんなのか。わからないことだらけだ。

わからないことをいつまでも考えても俺の頭では解決はしない。

「武器の手入れでもするかな。ビルも寝てるし。」

あー疲れた疲れたと疲れをとった人のセリフではないことを言う。

ナイフは手にした時からの鋭さを保っている。大剣は軽く布で拭いていく。剣の手入れは漫画の中の剣士がやっているのを見ただけで自分がしていると思うとなんか感動してしまう。でも、うっかりすると自分で自分を傷つけてしまう。やるなら集中してやった方がいい。

ここにいると家のことを少しだけ思い出す。学校に行こうと思ったらガスで眠ってここにやってきた。ここが異世界ならそんなガスで眠らせて連れてくることもないのだが。俺と同じマンションでガスで眠ってここに来た人もいる可能性もあること。お隣さんは大丈夫なのだろうかと一つ思うと沢山出てくる。

早くここから出て安全なあの場所に帰りたい。恵まれていたことを実感することができる。

「起きるのが早いな。あまり眠れなかったのか有二。俺なんて爆睡だったよ。」

キースが起きてきた。いくらここがモンスターから安全て言われても今までのことをが脳裏に浮かんで爆睡まではいかないだろうに。昨日は俺はケガをしていたから自然に寝たけど。キースは凄いやつなのか鈍感なだけなのかよくわからないやつだ。

「爆睡まではいかなかったけどしっかりとは寝たよ。カムイはまだ寝ているのか?」

「ああ、あいつは結構朝に弱いほうでな無理に起こすと襲い掛かってくるぞ。」

(襲い掛かってくるってどんだけ野性味があふれているんだ。)

「そやさ、ビルっていう爺さんがやれっていうことって一日を使えば習得できるものだったんだよな。意外に戦闘で使えるってのが驚きなんだよ。」

「まあここで漫画みたいな修行ですぐに力がつくわけでもないからな。すぐに使えないと意味がないからな。」

「漫画ってのはよくわからないけど、スキルがあらわれれば簡単習得なんだけどな。」

「スキルがどういう条件で発現するかはさまざまだから期待はできない。」

「ま、ゆっくりとでも強くなって生き残るしかないよね。」

お互いに何かがおかしくて笑い合う。ここにきて初めて笑ったのかもしれない。キースはイラつきはするが悪い奴ではない。そしてなんだか居るだけで場が和むような。カムイがキースに対して信頼をおく理由がわかった気がする。カムイのようなせっかちな性格の人でもキースがいると和むようだ。

「キースは魔法がある世界から来たんだよな?魔法について詳しく教えてくれないか。」

「ああ、いい

とキースが言いかけた時、ガシャんとガラスの砕ける音と同時にバキバキと少し離れた家が砕ける音がした。そして、前にある民家の壁が一瞬盛り上がったと思うと弾けた。そこから出てきたシルエットは壁を壊した元凶であると考える。ものが僅か数メートルの距離を開けて俺たちの前に降り立つ。

そいつはロボットのような仮面をつけ金属製の胸当てや籠手などをつけた戦士だった。見た感じモンスターではないような雰囲気だ。そもそも、ここにはモンスターは入って来れないらしいので人であることはおそらく間違いではないと思う。

「手合わせを願おう。そして私が勝てばその命らをもらおう。」

「「いや、お断りをさせていただきます。」」

「いざ尋常に勝負!」

「話を聞かないのかよっっ。」

キースとハモったお断りに聞く耳持たずでいきなり襲いかかってきた。言葉は通じているはずなんだが。キースは起きてきたばかりで武器を持っていない。今この場で武器を持っているのは俺だけ。しかも、いきなりすぎて頭が混乱している。

大剣をそいつに向かってバットを振るようにスイングをする。刃になる部分は避けてぶつけたので怪我はないはず。

そいつは空中で身体をひるがえし自分の獲物を抜く。片手剣、刃の部分が凹凸している。あれで切り裂かれるとなんか危なそう。あの刃を剣で受けると剣が壊れてしまう。横側で受けるしかない。

地面に着地を軽やかにするとすぐさまおれを目掛けてやってくる。

また剣でその勢いを返してやろうと構える。剣を突き出す。しかし、剣に当たった衝撃は思ったより少ない。そして、剣は何故か前に引っ張られる。あの凹凸の剣でおれの剣にひっかけ引っ張ている。あの剣の使い方が異常にうまい。そもそも喧嘩や戦いなんて数えるほどしかやってない俺にとって剣の扱いなんてもってのほか。

剣をすぐに離して魔力を体に行き渡らせる。剣よりもこっちの方がやりやすい。一発顔に全力打ち込めば強化された攻撃力で黙らせることができるかもしれない。

拳を握りしめる。先に相手の剣が向かってくる。右方向からの斬撃なので左腕を犠牲にしてやろうと思い受ける。しかし、左腕は怪我一つすらなかった。拳が相手の頬をしっかりと捉え飛んでいく。左腕からすごい痛みと出血があると思ったのだが若干の痛みしかない。服だけが損傷した。

「変な能力を使ったな。剣士かと思いきや能力者だったのか。」

相手は何か勘違いしている。しかもフラフラしている。この腕にある聖遺物のおかげなのかこの腕はあの程度では怪我ひとつも負わないらしい。

しかも力が異常に込めることができる気がする。力というより何かエネルギーなものを溜めるに近い。あとはこの腕で守りつつ黙らせることができればいい。

「こちらもスキルを使わせてもらう。幻影錯視(ミラージュ)

スキル名らしいもの叫んだと思うと一瞬消えたかと思うと2人に別れて出現した。ミラージュというぐらいなのだからどちらかが本物であることだろう。ナイフを抜き一番近い方に投げつける。そのナイフはすり抜けていく。もう片方が本物であるということ。

首を狙って振られたと思う剣撃を下にかわしドッシリと構える。魔力の集中する割合を腕から拳にかけて高める。それを相手の腹に打ち付ける。すこし浮いたかと思うと何もしていないのにもう一度殴られたかのような衝撃で後ろに飛ぶ。

「ゲホゲホッ一度の打撃で終わりではなくその後に特大の衝撃が来るとは、、、」

解説してくれるとは、、、。この腕は頑丈さだけでなくて溜めることで衝撃波を二撃目として与えることができるらしい。

「なあ!ここらへんでやめにしないか。人同士が争っても不毛なだけだぞ。」

人と争って死ぬなんてごめんだ。ここはモンスターをやるかやられるかの迷宮だ。本当に不毛だ。

「そんなことはない。私は私の目的のために戦っているのだ。貴様は私の目的に一番近い存在だ。このまま続けさせてもらおう。」

と言いどこから出したのか小さめの盾が出てきた。バックラーと呼ばれるものより少し小さめだ。自身の体格に合う大きさにしていると思う。だが、本当にどこから出したのだろう。スキルによるものなのだろうか。

盾を前にして距離を詰めてくる。また同じことをするのだろうか。それだと盾を出す意味がない。後ろに軽く引き今度は両腕に溜めをする。右ストレートを顎を狙って素早く打ち込むが盾がその進路を阻むべく持ってくるが遅れている。そのまま盾に当たり吹き飛ばすかと思いきや盾を滑っていく。よく見ると盾の向きが変わっている。受け流しで使っている。そして何か脇のあたりに刺さるような気配が近づいてくる。視界の端で真っ直ぐについてくる剣を捉えた。畳んである左腕をすかさず剣の腹を目掛けて払う。真っ直ぐな軌道だったので簡単に逸らすことができた。脇腹あたりをかすめていく。遠ざかる方が危険な気がしてより近づいていく。肩を掴み剣を振らせないようにする。盾も剣もまともに触れないならやることは単純。頭突きをお見舞いしてやることだ。

特別石頭ではないので少しの痛みぐらいは我慢はするつもりだったが綺麗に鼻に当たり少しの痛みで済んだ。何かと運がいい。怯んだところで腹を蹴る。今度は相手が後ろに引き下がる。

「貴方は本当に最高だわ。もう貴方に決めようかな。決めたわ。()()()()()()。」

頭突きで仮面らしきものが壊れる。そしてそこから出てきたのは褐色の肌と高い鼻、黒髪の女性顔。しかもだいぶ美人だ。けど、何を決めたのだろうか。不思議と背筋が寒い。

「貴方を私のご主人様に指名するわ。さあご主人私になんなりと命令を。」

「え???は???」

何このオレtuee系な展開は?裏があるとしか思えない。しかも鼻から血を垂らしながら。

「ダメなのかしら。やっぱり、、、。はぁなんでなのかしら。私の何がいけないのだろうか。」

勝手に落ち込み始めた。なんか怖くなってきた。ブツブツ何か言ってるし。 

「私のご主人様になってくれないの?」

と暗い顔をしながら上目遣いで尋ねてくる。

「いや、ちょっと無理かな。(こんな状況だとなぁ)」

「そうですか。」

素っ気ない返事からは想像ができない殺気が込められている。この子はもしかしてヤンデレ属性のようなものを持ち合わせていられるのでは。

「ならこのどこにもやり場のない気持ちだけでも。」

あ、ヤバイやつだわ。

「もらっていただけないのでしょうか?」

今度は体に何かを纏っている。ドス黒い赤めのオーラだ。明らかに本気の形態だ。自分ではどうにかできるとは思えない。オーラからはパチパチと何か弾ける音がする。

「ちょっとやばくないか。どうしよう。」

魔力に関しては余裕があるのはいいが腕以外はあまりに防御力が心許ない。しかもなんか疲労するのがはやく息があがっている。

「おまたせ!ようやく参戦することができる。」

そう、武器を取りに戻ったキースの声がした。その後ろにカムイもついてきている。これならなんとかなるかもしれない。あとはビルじいが来ればいいのだが来ていない。この騒ぎに気付かないはずがないので

どこかで傍観しているのだろう。くそ爺が、楽しんでいるにちがいない。

「おれを狙っていると思うから横から沈めてくれ。」

「りょーかい。」

そして、相手は飛ぶようにして向かってくる。いや、実際にとんでいるそれも平行に。

人間はどうしても飛ぶときには放物線を描くようにして動く。しかし水平に五メートル以上飛んでいる。先ほどとは動きが変わっている。剣にオーラを纏わせながら振るってくる。それ自体の速度は先ほどと変わらないので防ぐことはできそうだ。

腕に力を集中をして防ぐようにする。オーラのこともあるので強く溜める。

しかし、腕は傷つかないものの吹き飛ばされた。剣先はギリギリ体に当たらなく怪我はないが威力がでたらめだ。腕はじーんと痺れている。今度は盾の横腹が向かってくる。咄嗟にもう片方の腕で他の部位に当たることを防ぎ、威力を殺すために盾が向かう方向と同じ方向に体を回転させる。威力が威力なので回転しすぎないようにしっかりと踏ん張る。

隙をつきカムイが彼女の腹をドロップキックで遠くに飛ばす。すかさず空中で体勢を変え着地をする。

それでも彼女のオーラなどの気配は消えることが一切ない。彼女は丈夫すぎる。全力ではないとはいえ自身が飛んでいく攻撃をまともに喰らっても普通に起き上がってくる。最大の威力の拳を顔に当てることができれば脳震盪などで鎮静化ができそうだが、そんな溜めをする時間をくれそうにもない。再び間を置くことなく襲いかかってくる。

溜める時間がないなら作るしかない。1人ではできなかったが3人なら簡単に作ることができる。キースは槍の投擲をし行く手を阻みもう一つの武器で殴る。槍に関しては止まりはしたがその後の攻撃には怯むどころかびくとも動きもしない。オーラがそこに集中したかのように見えた。だけど、三分の一の力は溜まった。もうそろそろ二分の一。後は隠し球に対しても。

次にカムイが目の前に飛び出した。今まで通りの無茶な戦法で戦うと思ったが既に両手に魔力で作った魔法の準備が整っている。それを前に突き出し魔法を放った。黒い竜巻のような風の魔法のようだ。それは、ただ人を吹き飛ばすような風ではなく黒い色付きが体に当たると切り裂くような刃になっている。その証拠にオーラが弱い部分に当たると服や装備が削られている。その攻撃は無視できるほどではないが足止めが最低限である。だが、力は溜まった。今ここでの最大の攻撃力を上げることができた。

ついに射程圏内に近づいてくる。簡単には当てさせてくれはしないだろう。しかも、視界に入った状態では相手の方が素早さは上だ。だから、一瞬でいいから視界から消える。俺の俊敏さに一撃が入るかどうかがかかっている。そして頭の切り替え。

相手はすごい勢いで突っ込んでくる。剣のオーラはものすごく淀んでいる。息苦しい。飛びかかり斬り、ドラゴンの鱗すら切り裂きそうな勢いだ。

息を軽く吸い込み、勇気を振り絞るのみ。

県は制空圏に入るやいなや振り下ろしにかかる。今から避けても盾でぶん殴られる。痛みに対しては強い方ではないから一発勝負になる。剣はギリギリ引き付けてから、

まだ、

まだ、

まだ、

まだ、

まだ

まだ

、、

剣が後数センチのところの今が勝負!一気にしゃがみながら前進をする。距離はこっちの射程圏内の最高の距離。

拳はもう引いて発射の準備段階にあり半身になって左拳を全力で打ち付ける。

ドゴッと強化された拳の一撃がいい音をさせながら入っていく。そして本命の二撃目が近くにいる自分でも鼓膜が破れそうな衝撃波を打ち込む。その一撃で相手は宙に浮かぶ。

『マダまだまだダァアぁあ!』

全力の一撃を喰らわしてなおそいつは意識を保っていた。切り札を使ってトドメを刺すしかない。

宙に浮いたそいつは2メートルの高さに達している。100%ではないが半分近く溜めていた足の力を飛ぶことに使う。相手の上に乗っかる勢いで接近をする。そして利き手である右の一撃を顔へと地面に叩き落とす。

地面に激突し一回バウンドした。

自分が着地をした音の後には静けさがしばらく続いた。

次回にはステータスを公開していこうと思います。

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