第八話「再起動」
「よし、みんな準備はできたな。整列!」
星川の声と共に俺たちを除く全員が整列をする。星川を前に横一列に。軍隊のようだ。
「こっちも準備は大丈夫だ。これからの予定はこの地下から抜け出すまでは一緒に行動を。それからは別れて脱出口を探すということで間違いないな。」
この地下で共闘はし、そのまま行動をすればいいと思うがこの迷宮は広大だ。少しでも捜索範囲を広げて出口の発見する確率を増やしたい。長くいればいるほどここは生存確率が下がっていく。未知の生物が襲いかかってくる。それなら少数でも出口探索に力を入れたほうがいいと考えた。
「ああ、その通りだ。僕たち2グループがまだ見ていない入り口に行くこと。『セーフルーム』で手に入れた地図を活用して進んで行こう。」
一晩分だけしっかりと休息を空腹だったお腹も満たしみんなの活力は充分満たされた。俺の傷も動ける分には回復をした。スキルの便利さは本当に頭が下がるものだ。でも、未知の部分が多いので安心はまだできない。しかも安心できないのはモンスターもだ。ギガントは明らかに逃げないといけないぐらい強いモンスターだが、これから脱出口を見つけるのに強いモンスターは出てくるのは間違いない。だからこそ強くならないといけない。けど、その方法はわからない。
意識を現実に引き戻す。
「僕たちが先行するので後ろからついてきてください。後ろには誰か1人ついてくれ。」
そういい先導していく。これから気を引き締めていかないと命を落とす危険がある。大きく息をすって吐いてを繰り返し脳に酸素を回していく。武器も大きな剣ではなく、ナイフを腰につけておく。狭い場所や集団戦ではこっちの方が扱いやすい。
「スキルのおかげとはいえまだ本調子ではないだろ。」
後ろから零が話かけてきた。今まで話していなかったからなんだか新鮮に感じる。
「まあ、だるさとかは抜けていないけど、どうにかはなるから。大丈夫だよ。」
「戦闘になっても私たちに任せておけ。ゆっくり休むことも重要だ。」
肩をポンと叩いて前に出ていく。そういえば、槍が手作りから変わっているように見える。銀色に青の装飾が綺麗な槍。籠手もつけている。それにみんな何かしら装備が新調されている。今の今まで一切気づかなかった。一番聞きやすい隣を一緒に歩くこっそり祐樹に聞いてみた。
「なんか、みんな装備が新しくなってないか。あれどこで手に入れたの?」
「ああ、あれは有二さんが寝ている間、あのセーフルームで漁っていたら出てきたものです。聞いてなかったのですか。」
「初耳だったんですけど、、、。俺、この剣があるからスルーされたのかな。」
「みんな誰かが言うと思っていたとも思います。僕もその1人なので。すみません。」
「いや、気にするな。今の今まで気づかなかった俺も悪い。でも、少しだけショックかな。(あんなゲームのような装備つけてみたかった。)」
気分を紛らせるため昨晩習った魔力の循環をする。昨日よりもうまくなった気がする。スキルが発現したのかな。まぁこれやるとなんだか落ち着く気がしてきた。気のせいだろうけど。
「有二、魔力が扱えるのか。」
中央にいた星川が尋ねてくる。
「まぁ、昨晩にちょっとね。でもこれの使い方はイマイチわかっていないけどね。」
「昨晩、みんなが寝ているときに起きていたのか。君はなんだか不思議な人だね。」
と疑問には答えず元いた所まで戻っていく。遅くに起きていることがそんなに不思議なことなのだろうか。星川が何を考えているのかよくわからない。するとカタリナが横から
「魔力をさっきのように扱うまでには時間がかかるはずなんですよ。ですが有二さんはものの数時間でその段階まで至ってますので。魔法や魔力の概念が空想の世界の人なのにそのセンス、そしてあの強さ。不思議と言ってしまうのは仕方ないです。」
「俺が夜に起きていてそれが気に触ったのかと思った。星川がその程度のことで怒るわけでもないか。」
冗談を交えながら彼女に返事する。何やら嬉しそうだ。それと気になったことが
「カタリナの目、昨日の夜と色が違っていないか。」
嬉しそうな顔が一瞬にして消えた。
「そうでしょうか?」
ここは率直な感想を言うべきだろう。
「とっても似合っているよ。夜はなんだか人を惹きつけない美しさを持ってて、今は赤く光る目が優しさに満ちていて親しみやすいな」
と心に思ったことをそのまま言う。すると彼女はまた嬉しそうな顔に戻った。何か危ない綱渡りをした気分になった。
なんだか他のみんながほっとしている。やっぱり俺地雷を踏みかけたんだな。たまに危ないことを言う時があるから気を付けることにしよう。
しばらく歩いてきてセーフルームからは離れてきている。
しかし、道中はモンスターの気配もなく、安全に目的の出口まで近づくことができた。裕樹の探知能力があるとどんな敵でも奇襲することは不可能。準備を万全に整えることもできる。
目的の出口は近い。ここまで通ってきた道よりも広くなっているらしい。しかも、暗いところにいたから出口の光が眩しく外の様子も全くわからない。この先が新たなエリア、油断していると簡単に飲み込まれてしまいそうだ。
みんなもゆっくりと光に目を鳴らしながら進んでいく。
抜けた先は真っ直ぐな道の両側に水路がある。しかも境目は崖のように絶壁で落ちたら登れそうにもない。
そのとき、自分たちがいるところに影が差す。なんだろうと疑問に思っていたら近くにいたカムイに横から思いっきり蹴られた。意外に力が強く体が地面から離れたことで飛ばされたことがわかった。空中で上から大量の岩、石などが降り注いでいることがわかった。俺はこのまま水の中に落ちていく。カムイは他のやつを救おうとしている。
そして、水に落ちる。水中の底は思ったよりも深く足をつけることはできない。しかも剣が重たいので姿勢の維持を怠るとすぐに沈んでしまう。それでもどうにかこうにかすることで水面から顔を上げることが出来た。
先程いた場所は岩などが全て落ち切って砂埃を上げている。だからよく見えない。しかし、道はまっすぐか俺のように左右どっちかの水の中に落ちるかの3つしかない。
すぐさま辺りを見回してみる。こちら側にいたのは俺を蹴り飛ばしたカムイ、チャラいキース、そして俺の3人。なんとも不安な。
「他の人はどうなったんだ。」
一番に反応ができていたカムイに聞いてみる。
「私がみる限りではお前とこいつだけだ。」
キースの強く頭を叩く。キースは魂がここにないように白目をむいていたが今魂が帰ってきた。アナログテレビの直し方と自信満々に言ってた親父を思い出す。
「そうか。みんな大丈夫かな。」
「気にしていても仕方ない。先に進めば上がれる場所ぐらいあるだろう。ここにいたいならそのままいろ。私は先に行くからな。」
カムイはキースを適当に引っ張りながら水の流れに沿って泳いでいく。ここにいても何もすることがないことはわかっている。なら行動あるのみ。他の仲間が気にはなるが、ここは先に進むしかない。
重たいものを背負いながら水中をすすんでいく。できるだけ体を平行にして重心が下にならないようにする。なんとなくだが水中での体の使い方がわかる。スキルのおかげだろう。カムイとキースを後ろからついていくことにした。
十数分泳いだところに上がれそうなところを見つけることができた。少し歩いた先には集落らしき建物がならんでいた。レンガを積み立てた日本にはない建築方法と素材の建物。現代では海外旅行やテレビでしか見ない。中世のヨーロッパの風景だった。建物が規則性に並んでいて何か中央を取り囲むようになっているようにみえる。記憶がたしかならその中央には教会がある並びをしているはず。こういうところでの教会ではなにかしらのボスがいるのでこの状況ではいくことはしないほうがいい。
カムイもキースも俺も服がびしょびしょ。予備の服なんてあっても絶対に濡れている。濡れているものを着ていると体力が消費されると学校で習った気がする。体温だっけ?
「二人ともこの建物の中に入ろう。」
「そんな必要はない。すぐにでも行動すべきだ。この程度で休むなど程度がしれる。」
「お、おれは家に入ってあったまりたいけど、、、。」
「きさまはその程度で根はあげないだろう。そいつと違ってな。」
「おまえ会ったときから俺に突っかかてくるよな。俺のなにが気に入らないんだ。」
「、、、、、、、。」
「ほんとに、、、。」
俺に構わずカムイはどんどん中央に向かっていく。ひとりにするわけにもいかずキースと後ろをついていくことになった。
どこの建物も似ていて人を迷わす構造だったら迷子になってしまうと思うほどだ。カムイは考えて行動しているのだろうか。ここが中世ならここに出てくる敵は騎士か神父とかゾンビだろう。騎士を見てみたいのはちょっと心の隅に隠しておこう。
先程の態度からして忠告をして中央のボスに行くことをやめさせることは無理に近いだろう。キースはあの時の行動を思い出すと馬鹿だから言っても理解はできないだろう。本当に困った。
静かな村だからこそ動いていると音がすることがよくわかる。だから歩く先の左側の建物の角からカチャカチャと金属同士がぶつかる音が聞こえてきた。
カムイとキースはさっと武器を構える。元の世界で訓練されていたことがわかる。3人とも接近型なので陣形も何もない。相手が見えないので奇襲もできないので待ち構える。
金属音は複数。騎士だと思うが武器は剣、槍、盾などどれも初めて対人戦なのですこし手に力が入る。
そして出てくる直前に煙に似た真っ黒のオーラのようなのが見える。出てきたものは真っ黒な影を纏った騎士。体からは真っ黒なオーラを放出している。明らかにファンタジー系に出てくる影の騎士そのものだ。
「なんだ、あれ?奇妙なものにとり憑かれていないか。」
「だが、敵意は丸出しのようだぞ。」
キースの戯言をカムイにちゃんと返答をする。なんだかイラっとする。
ナイフは騎士の鎧?に効果はなさそうなのでナイフではなく、大剣をどっしりと中段に構える。先制攻撃は控えて相手の動きをみる。
「人型なら頭を潰せばいいだろうよ。」
カムイは低姿勢で軽く弧を描きながら騎士に向かっていく。騎士は腰に携えている片手直剣を抜く。その行動はあまりに人間じみていなかった。剣を抜く動作が直立不動でゲームのNPCのようだった。
その後の行動は素早かった。剣をカムイの進路方向にぴったりと突き刺す。カムイの速さはなかなかのものでそこからの変化は難しいもの。カムイはその剣の下をくぐり抜ける。低姿勢をさらに低くしたときの反動を使って地面を蹴った。そして体の向きを上下反転させ強烈な蹴りを騎士の頭に浴びせようとする。
ギャキィィンと鈍い音と共にそれは防がれた。
新たに登場した騎士が大きな盾でカムイと衝突をする。
「くぅ。なんだ、馬鹿でかい盾だな。」
カムイはしっかりと受け身を取る。そして、影の騎士との距離を空ける。盾の騎士は前に出て短刀を半身に。更に金属音が増える。
槍、槍と盾、メイスの騎士そして、影の鎧ではなく、白銀の鎧、生き物ではなく機械の巨大な馬に騎乗している騎士。明らかにオーラが違う。
「ここのボスだ。」
光と影は表裏一体、光があれば影ができる。それを考慮したモンスターだとすると影の騎士の戦力とあの騎士1人で同等の強さではないのか。
俺たちを馬の上から順番に見回していく。
「貴様らが異世界からの侵入者か。強者かと期待していたがそうでもない。ましてやあの男でもない。私の相手ではない。」
「こいつはただものじゃないよね。」
圧倒的なオーラの前にキースが口を開く。俺たちは口を開こうにも緊張して動かすことができない状況だったのに。今まで会ってきたモンスターは狩りをするようにしかかんじなかった。だけど、殺気を帯びるだけで生物を支配することもできる。平和な日常では感じることはできない。
「私の殺気をまともに受けて口がきけるのかなかなか。だが、三等騎士で十分だろう。お前ら私は帰還するからそいつらを片しておけ。」
白銀の騎士は俺たちに背を向けて教会のほうへと足を進める。騎士はそれを見ず俺たちを見続ける。白銀の騎士がいなくなるまで俺たちは動くことができなかった。
そして見えなくなると騎士は三人に減っていた。先ほどの盾使い、剣使い、新たにハルバードを持ったやつがでてきた。体型もがっつりしていて明らかに力自慢だ。
「三等騎士だと。なめやがって。」
カムイがなにやら起こっている様子理由はよくわからないけど。三等ていうぐらいだから騎士たちの中でも弱い部類なんだろうが逆に言えば助かったていうほうが正しい気がするけど。
(三等騎士ていうのは俺たちの世界でいう戦闘員の中でも弱いグループのトップなんだ。おれでもなれるからね。)
キースがこっそりと教えてくれる。
(いまはその低いくらいの騎士で助かって喜ぶところなのでは?)
(彼女は知っての通りプライドはでかいからね、、、)
(難儀な性格をしているんだね。)
(苦労はしたがカムイの実力は本物だから。あと事情も事情だし。)
(ふーん。ま、あの騎士をどうにかできればいいか。)
カムイはさっきと変わらずにつっこんでいく。俺もそれに乗じて大剣を中段から下段に変えて走り出す。俺の狙いは最初に出てきた剣の使い。盾の騎士はおそらくカムイを標的にするはず。
「、、、、、。」
盾の騎士はカムイの突進を正面から叩きつけるようにぶつけにかかる。案の定カムイは叩きつけられる。けど、執念深い彼女はただではすまない。
「てめぇ、盾ごときで私を止めれると思ったかぁああああ!」
盾にしがみついている。しかも、顔に血がついていて一種のホラーを想起させる。NPCじみた騎士もこれに驚いたようで盾を振り回してほどこうとしている。彼女は獣のように唸っている。
「野生児かよあいつは。」
そう呟きながらも盾の騎士を完璧に翻弄してくれているからハルバードに気を付けて一撃をかますだけ。俺の動きに気付いてハルバードは動き出す。けど、おれの方が速い。
剣の騎士は天にまっすぐと剣を立て俺と向き合う。そして近づいてきたところを渾身の一撃と言わんばかりに振り下ろしてくる。それに対して俺は大剣の能力を使い、剣と真っ向勝負をする。ステータスや剣の重さを比べて俺のほうが圧倒的に有利。そして激突する。力がお互いに最大の位置で。騎士の剣は押し負け後方へと飛んでいく。好機を逃すわけにはいかない。振り上げた剣を今度は騎士の頭に向かって振り下ろしていく。
鈍い金属音が俺の剣を弾き飛ばした。今ここで邪魔をする人は一人しか思いつかない。
剣が飛んで行った方向とは反対を向く。そこにはハルバードの騎士がいた。しかし、先ほど持っていたハルバードを持ってはいない。つまり、おれの剣にぶつかったなにかはハルバード。
あの騎士との距離は十数メートル。ハルバードもかなり長く、重いことが想像できる。
「馬鹿力だな。あの騎士とは真っ向勝負はしたくはないな。」
ハルバードの騎士は長いのでH騎士と呼称する。
H騎士は体制を低くする。いわゆる大相撲で見る力士の体勢に似ている。つまりはこっちに突っ込んでくる。H騎士の体格はでかい。その体でぶつかってこられるとひとたまりもない。
すかさず剣のあるところまで引く。
H騎士は案の定まっすぐつっこんできた。速さもそこそこだが、躱すことは簡単だ。スキルで身体能力が向上しているおれにとったら楽勝である。
「やっぱり馬鹿力の脳筋なんだな。」
そう呟き、さっと避けようとするが足を何かにつかまれた。
「は、お前離せよ!」
掴んでいるのは先程の剣を飛ばした騎士だ。両手でしっかりと右足をつかんで離さない。振りほどこうにも上手く力をいなされる。
その間にもH騎士は近づいてくる。これは普通に危険な状態だ。腰に装着しているナイフを抜き騎士の両手を刺そうとするがまた上手いこと俺の体を揺らして的を絞らせない。
「このままじゃ、、、くそ!」
さらに最悪なことにバランスを崩して転けてしまった。騎士は掴んでる両手から体勢を整えてさらに拘束しようとしている。
「有二君!」
キースが遠くから叫んでいる。本当にこれはやばい。
チャキっと音がすぐ近くで聞こえた。すると右足を掴んでいた騎士の重さが消えた。
「おい!早く避けんか。」
しわがれた年寄りの声が聞こえた。H騎士はもうすぐそば。今の体制のまま真横に転がる。
すると、横にはH騎士と思われるデカイ足音が過ぎ去っていく。
「おい、若いの大丈夫か。ほれ手を貸さんか。」
目の前に白髪のおじいさんが手を差し伸ばしてきた。「ああ。」とその手を握って起こしてもらった。
右足を見てみると騎士の両手だけが残っていた。それを引き剥がすとわかった。人と思っていた騎士は人間ではなかった。騎士の手からは血ではない何かが出て、内部は切断されたケーブルや何やらの部品などロボットアニメで見る構造をしていた。
「こいつらロボットだったのか。どうりで動きが単調なところと力が強いわけだよ。」
「オートマタのことを知っているのか。なら話が早い。こやつらの心臓部を狙え。そこを破壊すれば動くことはなくなる。三等騎士ならな。」
「おじいさん、あなたは仲間でいいんだよな?」
「わしの名はビル。ビル爺とでも呼んでくれ。」
ビルはそう言い剣の騎士に襲いかかる。俺は剣をすぐに拾ってH騎士に向かう。
心臓部というぐらいなんだから人間で言う心臓の位置でいいんだろう。ハルバードがないならこいつはただの巨体で力が強い奴。速さなら俺が上。
H騎士はこちら見て拳を振り上げる。俺は剣を騎士にまっすぐ向けて突き刺す構えをとる。
振り下ろしてきた拳は今までの敵と比べてゆっくりに見え体をあまり動かさず避け、剣を心臓に突き刺す。だが、このままだと鈍い音を立てて中途半端に刺さるだけ。この剣は加速する突き刺す時でも。魔力を流し込み剣に指示する。剣は加速をしH騎士の胸を貫く。
「よし、これで倒した。」
だが、騎士はまだ動く。俺の体を包むように絞め殺そうとしてくる。急に停止するほどの代物だったら騎士型ロボットにならないよな。しくじったぁ。
「まだまだですな。見込みはあるようですが。」
ビルの声が聞こえると同時に俺を包んでいたH騎士の両手がボトリと地面に落ちていく。
また、いとも簡単に騎士を斬った。振り返ると盾にしがみついていたカムイや後ろにいたキースがビルと一緒にいた。
「いやー、このおじいちゃんに助けられちゃった。強いねこの人。」
あはははとキースは能天気に笑っている。カムイは俺を見てなんか複雑そうな顔をしている。2人は本当によくわからない人だ。
「助かったよ、ビル。」
「何、困っている人がいたら助けるのが引退した身だが騎士の役目。気にすることはない。」
「その腕輪、もしかして、あなたもここに目覚めたらここにいた話の人ですか?」
「おお、そうじゃ。いかにも。同じ境遇の方と出会うのはこれで二度目。一度目は酷かったからの。」
そう言いながらガハハハと笑っている。酷いと言いながらそんな笑うのはなんかやばいおじいちゃんなのではと思ってしまう。
「騎士たちは片付いたからここから立ち去ろうかな。お前たちもついてこんかどうせ行く目当てもないんじゃろうからな。」
ほら、こいこいと手招きをしてくる。騎士たちについても知っているらしいから俺としてはついて行きたい。けど、カムイはどうなんだろうか。あいつはあの騎士ぐらい今すぐやってやるとか言いそうだが。
チラッとカムイの方を見るとなんか悩んでいるように見える。あらま新しい反応だ。
すると、キースがカムイの肩を叩いた。
「案内よろしくね、じいさん。」
はぁとカムイはため息をついてゆっくりとビルについて行こうとする。
俺たちはついて行くことに全員同意し、歩き始めた。
文章かくの疲れた