初任務
ゼロが入学してから、一ヶ月が過ぎようとしていた。ゼロは入学当初から人気だった。質問をすると、必ず答えてくれた。国家魔術師としては、まだ新米と言うこと、ゼロは国家魔術師の固有ナンバーで、本名ではないことなどを教えてくれた。
しかし、ゼロは一つの質問だけは、どうしても答えてくれなかった。それは、過去についてだった。そして、周りの人も、あまり詮索しないほうが良いのだろうと思い、過去についての質問はしないようにした。なので、そんな気の利く人達には、勉強を教えたり、魔法のコツを教えた。そんなゼロを見て、教師達は感心し、初めは国家魔術師を反対していた教師でさえ、今は来てくれたことに感謝している。そして、当の本人も学校が楽しかった。そんなある日、ゼロに連絡が来た。それは、国家からの招集だった。内容は、数人の魔術師集団が、人質を取って立て篭もったというものだった。警察のみでは、対処出来そうに無いため、ゼロを頼ったのだった。本来なら、他の国家魔術師達が動くが、あいにく、手が詰まっているため動けないと言うらしい。なので、ゼロは学校に休みますと連絡を入れて、現場へ向かった。現場へ着いたゼロは一人の警察官に声をかけられた。
「ここは危ないので、近寄らないで下さい。」
「えっと、自分は国家魔術師のゼロと言うのですが…」
そう聞いた警察官は困った顔をして、どこかへ電話をかけ出した。
そして、数分後、その警察官は青い顔をして、
「しっ、失礼しました!どうぞ、こちらへ!」
そう言って警察官はゼロを手招きした。その後、ゼロは警察官に現状を聞いた。
その警察官の話によると、6人の魔術師集団によって、4人の人質を取られているため、動くに動けない状況らしい。
そう聞き、ゼロは少し考えて、
「警察の皆さんは突入の準備を、自分は犯人を拘束魔法で捕らえます。」
それを聞いた警察官は少し驚いたが、何か納得して、すぐに準備に取り掛かった。しかし、若手の警察官は、
「見えない場所から特定の人を捕らえるのは不可能なのでは?」
「一応、国家魔術師なのですよ?」
そう言ってやると、
「そうですね…失礼しました。」
そう言って、自分の持ち場に戻った。流石はプロだと思い、魔法の準備をした。準備と言っても、相手の補足だけだが。
「それでは、ゴーの合図で突入して下さい。」
そう言うと、警察は頷いて、持ち場に着いた。
「3、2、1、ゴー」
そう言うと、警察は突入して言った。それと同時に、ゼロは拘束魔法で犯人を捕らえた。
警察が突入して、しばらくすると、犯人と思わしき、人が6人、警察に連れられて出てきた。それに続いて、人質も救出された。救出された人は、前から、執事の服を着た人、美しい金髪の女性、背の高い髭を生やした、いかにもお金持ちそうな男性、そして、その間に不安げな顔をした美しい金髪の少女がいた。そして、ゼロはその少女に見覚えがあった。ゼロは思わず、声を掛けた。
「こころ?」
すると、その少女は、こちらを見て、涙を浮かべながら、こう言った。
「彼方…お兄…ちゃん…」
そして、涙を浮かべたまま、笑顔を見せた。