ゼロと言うもの
ゼロは5歳の時に親を亡くし、6歳で養子として引き取られた。しかし、8歳の時にその親の都合でまた養護施設に預けられ、10歳の時に国の魔導施設に引き取られて国家魔術師になった。
そんなゼロの養子の時のお話。
3歳の時に父親を亡くしたが、父親の記憶は余りにも幼い時だった為忘れてしまったが、母親が亡くなった時の事は鮮明に覚えている。5歳の時、風邪をひいて寝込んでいた時に、家に電話がかかって来た。親が薬を買いに出かけていたので、その頃のゼロ…当時の名前は彼方という。
彼方は受話器を取り、電話に出た。その相手は救急隊員だった。そして、その隊員はこう言った。
「あなた様のお母様は事故により、先程お亡くなりになりました。」
おそらく、ゼロの中で最も古く、かつ鮮明な記憶だった。
しかし、その頃の彼方には、到底理解出来なかった。お母さんは帰ってくる。そう信じていた。
しかし、二時間後に家に来たのは、先程電話をかけてきた救急隊員だった。そして、彼方に説明した。
「彼方君のお母さんは先程も申し上げた通り、亡くなってしまいました。」
その時の事は今でも覚えている。
救急隊員が深刻な顔をして、家に尋ねて来た。そして、そう伝えた。事故の内容はほとんど覚えていない。というより、聞きたくなかった。
その後、身寄りのいない彼方は養護施設に預けられた。
そして、6歳の時に、養護施設にとある男性が来た。お金持ちの男性らしいが、自分には関係ない。そう思っていた。しかし、その男性は自分を引き取ると言った。理由は遠い親戚で今まで海外にいて、彼方の母親が亡くなったという知らせが届いたので、引き取りに来たと言う。なので、ゼロはついて行き、家に着いた。そして、家に着いた彼方はある少女に出会った。名前はこころ。父親似の優しい目に母親似の綺麗な金髪。そして、自分と同じくらいの背。それがこころだった。
こころとはすぐに仲良くなった。年齢も変わらず、誕生日もほとんど同じだつたからだ。彼方とこころは本当の兄妹のようになっていった。しかし、ある日こころの両親の都合で海外に行かなければならなくなった。そして、こころの父親はこう言った。
「彼方君、君にもいつか分かる時が来るだろう。その時がいつになるかはわからない。しかし、その時にまた会えるように願っている。」
そう言って、こころの父親は彼方を養護施設に預けて海外へ行った。その後、6年間一度もこころとは会っていない。そして、こころの父親の言い残した言葉は今になってようやくわかった。おそらく、会社の都合上養子を連れて行く訳には行かなかったのだろう。そして、彼方は養護施設に預けられた2年後に国に引き取られた。そして、その能力を高く評価され、最年少国家魔術師となった。
その能力とは魔力の事であった。彼方は10歳であるにもかかわらず他の国家魔術師よりも魔力がかなり強かった。そのため、ナンバーワンの称号を与えようとしたが、すでに、ナンバーワンは決まっていたため、ナンバーゼロを与えられた。そして、彼方は本来の名を捨てて、ゼロとなった。
しかし、ゼロはいくら魔力が強いとはいえ、基礎が出来ていなかった。そのため、魔術師育成機関へと入れられた。その時には、すでにゼロは12歳となっていた。