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桜咲く頃に、君と  作者: 月桃シュリー
プロローグ
5/6

5


「それで、高校受験の件なのだが」


とおじいさんは唐突に切り出した。


なんでもこの近くに全寮制の学校があって、そこの特待生として推薦してくれることができるらしい。

聞いたことのない名前に疑問を挟むと、そこは基本的に幼稚舎から持ち上がりの少し特殊な学校らしく、受験資格に条件が満たなければ学校案内さえ手に入れることはできないそうだ。


「寮生活を強いることもあるし、君が期待している高校生活とは変わってしまうかもしれない。

進路に関しては親御さんとも相談する必要があるだろうから、返事は急がないよ。

他の選択肢も調べてよく考えた上で、こちらを選んでくれたら嬉しく思う。」


降って湧いたような話に驚きつつ、おじいさんの言い方が気になった。

志望校の入試が受けられなかった私に同情してくれたにしては、『選んでくれたら嬉しく思う』なんて、まるで私に来てほしいみたいに聞こえる。


「特待生とか・・・何か条件があるんですよね?どうして私に?」


「特待生の条件は、実は学園の秘密なんだ。

最低限の条件をあえて言うなら、君は自らの選択の責任を理解しているように見える。」


選択の責任というのは、子猫を放り出さないとか、そういうことなのかな?



「私は君のような子に主人公ヒロインになって欲しいんだ。」


「ひ、ヒロイン?」


悪戯っぽい目で微笑むおじいさんは、それ以上は答えてくれなくて、冗談なのかな、と私もそれ以上聞くのをやめた。

ヒロインなんて普段使わない単語を口にするのが恥ずかしかったという理由もある。



その後、やたらと艶のある黒塗りの車がおじいさんを迎えに来て、車から出てきた男の人が私に『私立桜咲学園』の学校案内資料を渡してくれた。


子猫はそのままおじいさんが連れて行ってくれたので、私はすっかり乾いてしまったお弁当を食べて、事情を説明しに中学校に向かう。



進路指導の先生に桜咲学園のことを話すとすごく驚かれた。


どうやら知る人ぞ知る学園らしく、幼稚舎から中等部までは特別な人たちしか在学しておらず、高等部と大学部では多少の外部生を受け入れているようだ。

ただ特待生どころか外部受験の資格条件さえ公開されていなくて、スカウトのような形で試験なしに入学する人がほとんどらしい。


「成績やスポーツに秀でていてスカウトされた学生もいるようだが、どうやら部活等はないようで、その後何かの大会にでたと言う話も聞かないな。

まぁ外部からの卒業生はほとんどが内部生に所縁のある企業に就職するから、内部生の将来の側近を見繕っているという話もある。」


青田買いとまでは言えないけど、条件を公開しないあたりも怪しいな、と先生は小さく呟いた。


「環境としては申し分ないし、特待生は授業料から寮費、制服まで支給か。

将来やりたいことが決まっているなら勧めないが、そうじゃないならなかなか良いんじゃないか。

今からじゃあ他の高校といっても澤田の成績じゃもったいない所ばかりだしな。」


先生の言葉に私は心を決める。



両親は受験に行ったはずの娘が聞いたことのない学校に入学を決めて驚きつつも


「寮に入ってしまうのは寂しいけど、結衣が決めたことなら応援するよ。

得難い経験が出来そうだね。」


と言ってくれた。




そうして私は、私立桜咲学園に入学することになったんだ。




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