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桜咲く頃に、君と  作者: 月桃シュリー
プロローグ
4/6

4


気持ちが緩んでポロポロ泣きだした私を、おじいさんはそのままにしてくれた。


そこでお父さんみたいに頭をなでられるのも怖いし、困った様子を見せられると申し訳なくなっちゃうから、気にしてないみたいに足元の子猫を抱き上げてのんびりしているおじいさんは、やっぱり『紳士』だなって思った。


それなのに私が泣きやんだころ、あっと言ってポケットから飴をひとつ出して渡してくれるから、そのギャップに笑ってしまう。


気分転換に良いんだよ、と恥ずかしそうに微笑まれて、ありがとうございます、と言って受け取った。



「それで、君はどうするんだい?」


私が落ち着いたのを見計らってか、おじいさんが尋ねる。


「そうですね・・・。受験のことは、このあと学校に行って進路指導の先生に相談します。第一希望の高校は残念だけど、もしかしたら他に受けられる高校があるかもしれないし。

猫は・・・交番に行けば良いのかなぁ?」


ふむふむとおじいさんは頷いていたけど、私の独り言のような疑問を聞いて、ちょっと失礼、と言ってどこかに電話をかけた。

しばらく電話の相手と何事か話して、通話を終える。


「ふむ、どうやら警察や保健所など、いくつか届出をした方がよいらしい。ただそういった所に保護を頼むと、飼い主が見つからなかったときは処分されてしまうようだね。

今、この付近で迷い猫を探している人がいないか調べてもらっているけれど、もしも飼い主が見つからなかったときは、君はどうしたい?」


仕事、はやっ!と驚きつつも、考える。


「処分されちゃうのは嫌なので、飼ってくれる人を探します。うちのマンションじゃ預かれないから、飼い主さんか里親さんが見つかるまでどうするか、友達やお母さんにも相談してみます。」


「そうか。それならどちらにしても私の方で預かっても良いかな。飼い主が見つからなかったら、こちらで責任を持って里親を探すよ。」


そう言うおじいさんに、私が飼いたいと言わなかったら、はじめからそうするつもりだったと気付いた。

もしかしたら私が警戒しているのに気付きながらもベンチに座ったときから、この展開を予想していたのかもしれない。


本当に優しいのはおじいさんの方だと思いながら、私はありがたくその提案を受け入れた。



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