2
疲れたから一先ず落ち着こうと、たまたま目に付いた公園に入ったら、ベンチの近くにいたおじいさんが目に入った。
ベンチの下や茂みを覗き込んだりしながらウロウロして、何かを探しているみたいだ。
これでボロボロの服を着ていたらちょっと怖くてすぐ立ち去るところだけど、ケンタッキーのカーネルおじさんみたいな白いスーツとステッキを見ると、食べ物やお金を探している人ではなさそうだ。
ベンチに座りたいけどそのままだと落ち着けなさそうだったので、勇気をだして声を掛けた。
「あのぅ、どうしたんですか?」
おじいさんは驚いた顔で私を見て、困ったように眉毛を下げた。
「いやね、ちょっと探し物を。あぁ、もしかして座りたいのかな。すまないね、すぐに退こう。
・・・あ、待って。いや、しかし・・・うーむ。」
一旦立ち退こうとしたおじいさんだったけど、振り返って私を見て、何やら悩んでいる様子を見せたあと、すまなさそうにまた口を開いた。
「君のような若い女性にお願いするのは大変不躾だとは承知しているのだが、ひとつ頼まれてくれないだろうか。」
「内容によりますけど、あの、何でしょうか?」
女性だなんて言われたのは初めてだったので、大人として扱われたようでなんだかくすぐったい。
「実は携帯電話をなくしてしまってね。この公園で使ったのが最後だったから、この辺りを探していたんだよ。嫌じゃなければで良いのだが、もし携帯電話を持っていたら、私の番号に電話を掛けて欲しいんだ。もちろん、非通知で結構なんだが・・・」
本当に申し訳なさそうにそう言われて、少し考えたけど、私は頷いて鞄からスマホを取り出した。
非通知でいいって言ってるのもあるし、このおじいさんは、品があると言うか、『紳士』って言葉がぴったりで、悪いことをするようには見えなかったから。
そうして鳴らしたおじいさんの携帯電話は、無事におじいさんのサイドバッグから見つかった。