第三話 スダニア学園
「降りろっ」
目を覚ますと、見知った顔の男――ミゲルが俺の顔を覗き込んでいた。
「うわっ」
「まったく、いつまでもぐぅぐぅ眠りおって。良いなぁ、切迫した仕事や責任感に縛られることのない、子供という職業は」
そう言うと、ミゲルは馬車から地面へ降り立った。
顔こそ平然を装ってはいるものの、皮肉っているのは明らかだった。
『そう言うお前は生まれた時からおっさんだったのか?』と言ってやりたくなったが、湧き上がる苛立ちをぐっと堪え、を俺は言う通りに馬車から飛び降りた。
「おぉ……」
馬車から降りた俺を待っていたのは、モダンな雰囲気漂う巨大な校舎だった。
現実世界ではまずお目にかかれないであろうそのスケールに、俺は思わず息を吞んだ。
俺が通っていた高校の校舎など、この学園の校舎と比べれば、犬小屋同然だろう。
同時に、白と黒を織り交ぜた二階建ての校舎は、格式高い印象を周囲に無理やり押し付けようとしているかのようにも見えた。
王国を出発してから馬車で一時間。
学園はスルトン王国の首都――ベルカの最南端にある。
ベルカは他国から見ても、文化的・経済的に著しい発展を遂げた都市らしく、毎年多くの観光者が訪れる街なのだという。
また、世界中から集められた多くの特産物や工芸品や武具や装飾品が店頭に並んでいるらしい。
何故これほど深くこの街について知っているのかといえば、、ただでさえ鼻の尖った執事が鼻高々と、長い馬車移動の中でスルトン王国の歴史をひたすら喋り続けてくれていたからだ。
聞いていたときは『うるせえなぁ、こいつ』くらいにしか思っていなかったが、今思えば貴重な経験だったのかもしれない。
パソコンやスマートフォンの無い世界では、情報は金よりも遥かに価値が高いはずだ。
街の様子を見た限りでは、書物が一般流通しているとは考えにくいし、民営図書館だって存在するかどうか怪しいところだ。
当面は、見聞きし自分で体験したことだけが、情報を取得する唯一の手段になるのだろう。
「ここまで来れば、学の無いお前でも何とかなるだろう。それと、これは王からの書状だ。この書状を学園関係者に見せれば、後は彼らが正当な手続きを踏んでくれるはずだ」
「はい」
ミゲルはそう言って、俺に一枚の書状を手渡してくれた。
A四判くらいの大きさの、薄手のプラスチックみたいに硬い一枚の紙。
この触り心地からして、この紙が羊皮紙であることはなんとなく分かる。
昔、海外旅行から帰って来た両親が、お土産に羊皮紙と羽ペンを買ってきてくれたことがあったのだ。
土産物らしいチープな出来であったことは間違いないが、それでも、当時中学生だった俺は踊り狂うほど喜んだものだった。
毎夜、孤独な自室で不敵な笑みを浮かべつつ、自作の呪文を羊皮紙に書き殴っていたのは――誰にも言えない黒歴史の一つだ。
手渡された書状自体はやけに簡易的な作りで、こんなもので本当に入学許可が下りるのだろうかと、疑念の払いきれない代物だった。
第一、これ名前しか書かれてないじゃん?
学園への入学を認める文言さえ書かれてないってのは、流石にあとで問題になったりするんじゃないだろうか?
「問題事を起こして、お前をわざわざ推薦してくださった王の顔に泥を塗らんようにな」
そう言い残すと、ミゲルはさっさと馬車に乗り込んでしまった。
「お世話になりましたっ」
聞こえなくては意味がないと、俺は腹から声を絞り出し、精一杯頭を下げた。
最後まで高圧的な態度を貫いた執事に、絶え間ない尊敬と半端ない怒りの念を込め、社交辞令の別れを告げたのだ。
王の側近という立場上、普段から感情を表に出さないように、他人と深く関わらないようにと心掛けているのだろう。
口では辛辣な言葉しか吐かない男だけど、本当は俺のことを誰よりも心配してくれているはずさ。
大概、一見冷酷なように見えて実は世話好きってタイプの人間は、ツンデレって相場が決まってんだよね。
「おいっ」
慌てて声の方へ振り返ってみると、馬車の小窓からミゲルが顔を出していた。
「お前が何かすれば、すぐに私の耳まで入ってくるんだからな?」
人がせっかく良い回想で締めくくってやろうとしているのに、まさか釘を刺してくるとは。
とんだ思い違いだったみたいだな、こりゃ。
一瞬でもお前を信じた俺の気持ちを返せ、この野郎。
御者が馬の手綱に力を込めると、ミゲルを乗せた馬車は、あっという間に見えなくなっていった。
◇ ◇ ◇
「さて、どうしたもんか……」
俺は再び学園に目を戻した。
白のレンガが千鳥に積み上げられた外壁に、濃い黒の三角屋根。
良く見ると、校舎は大・中・小といった三つの規模に分断されていた。
一見しただけでは分からなかったが、それも全ては、それぞれの校舎が等間隔に建てられ、色と形を統一していたせいだ。
俺はとりあえず、三つ並んだ校舎の中では小ぶりな、左端の校舎に入ってみることにした。
巨大なステンドグラスがあてがわれた窓や、塗り建てられて間もないくらいに汚れのない外壁など、他の追随を許さぬ高級感で満ち溢れていたためだ。
どの時代の学校であっても、職員室やそれを担う建物は、一番設備が整っているというのが定石なのだ。
もちろん理由はそれだけではなく、小規模の校舎は圧迫感が少なく、単に入り易かったというのも、この校舎を選んだ理由の一つではある。
とにかくこの校舎になら、教師か学園関係者が居ることは、まず間違いないだろうと踏んだわけだ。
しかし、人と会わないのは何故だろう?
校舎に足を踏み込んで早五分。
校舎の中に入れば簡単にことが運ぶと思っていたが、少し見込みが甘かったか。
部屋を確認して周るが、あるのは教室や図書室のような部屋ばかりで――どの部屋にもやはり人が居なかった。
気を取り直し、階段を使って二階に上がる。
白と黒のタイルが交互に敷かれた廊下を歩き進めていくと、薄暗い廊下の突き当りに、明かりの灯った部屋をようやく見つけることができた。
覗き防止の磨りガラスから、淡い黄色の光が漏れ出していたのだ。
機を逃すまいと、俺は迷わず部屋のドアを開け放った。
「す、すいませんっ この学園に入学することになった者なんですが、学園長と会うには――」
――俺は途中で言葉を失ってしまった。
『ドアを開けたら、美少女が生着替えしてました』なんて、妄想の世界だけだと思っていたからだ。
「え? あんた、いったいどこから……?」
突然の来訪者――不審者らしき男もとい俺の登場に、目を大きく見開いたまま、少女はその場で固まってしまっていた。
目の前の少女は俺と同世代くらいで、色白の肌に良く映えた赤髪のツインテール、気の強さを表すかのような釣り目が印象的だった。
出るとこは出て、引っ込むとこは引っ込んでいて――なんとも素晴らしい身体つきをしているのが分かる。
「きゃーーっ!!」
制服らしきブレザーでなんとか胸を隠しているものの、下半身に着けた桃色の三角布は丸見え状態だった。
今は怒りと恥ずかしさとが入り混じった瞳で、じっと俺を睨みつけている。
「うわーー!! 待て待て。俺は偶然ここに来ただけで、そんなつもりは……」
驚きやら興奮やらで、ついつい少女と同調するかのように、大声で叫んでしまった。
こんなアホみたいな失態で、入学直前に退学処分では洒落にならない。
少女の叫び声に狼狽えつつ、誤解を解こうと説明を始めた俺だったが、
「問答無用――っ」
少女は近くに落ちていた竹刀を拾い上げ、身体を仰け反らせるようにして、大きく振りかぶった。
こんな状況では身の潔白を証明するにもしようがなく、俺は少女の下した判決を受け入れざるを得なかった。
――少女が真っ直ぐに振り下ろした竹刀は、俺の額を的確に捉え、『ばしーん』という軽快な音と共に俺は気を失った。
◇ ◇ ◇
「痛たた…… ここは?」
目を開けた俺は、まだ痛みが残っている頭部を指で摩った。
曇った目を擦りながら周囲を見回すと、先ほど自分に強烈な一撃を叩き込んでくれた少女が、俺の顔を覗き込んでいるのが分かった。
ベージュのブレザーに、赤茶色のチェック柄のスカート。
胸元についた蝶のブローチと同じくらい、黒のニーソックスからはだけた太ももが眩しかった。
「スダニア学園の医務室よ。私がここまで運んであげたんだからね?」
少女の言う通り、俺は倒れてからずっと、ベッドに寝かしつけられていたようだった。
医務室だという説明を受けたが、未確認生物の標本や薄気味悪い薬品の入った瓶が並んでいるところを見るに、俺には研究室や実験室の類にしか見えなかった。
「俺、ここに来たのは初めてで――」
俺が目覚めきっていない頭で、身の潔白を証明しようとすると、
「分かってるわよ。これでしょ?」
少女はそう言って、俺がポケットに入れていたはずの書状を見せつけてきた。
大方、俺が気絶していた間に、身分を確認できるものを探し当てたのだろう。
着の身着のままで学校関係者に突き出されなかったのは、不幸中の幸いだった。
「まさか入学希望者だとはねぇ。すっかり油断しきって、応接室で着替えていたあたしにも非はあるし、ここは大目に見てあげるわ」
まだ怒り冷めやらぬといった口調はではあるが、一応俺のことを許してくれているみたいだった。
思ったより話の分かる女の子で助かった。
「まぁ、本当の覗き野郎だったら、今頃海に沈めてやってたけどね」
可愛い顔のわりに、怖いことを平気で言うじゃないか。
誤解が解けてくれて、本当に良かった。
これも全ては、国王の書状のおかげだとも思ったが、そもそも俺を一人で学校に行かせたのも国王だったよな?
何が『心配いらない』だ。
危うく、初日から犯罪者になるところだったじゃないか。
「はい、これ。熱いわよ?」
「お、おぅ……?」
少女が手渡してくれたのは、黒い液体の入ったマグカップだった。
匂いを嗅ぎ、口をつけたことで、それがコーヒーだと分かった。
この世界にコーヒーが存在していたなんて。
俺にとっては嬉しいサプライズだった。
なぜなら俺は、毎日味の違う缶コーヒーを買って、飲み比べしていたほどのコーヒー好きなのだ。
『ドリップしてからコーヒー通を語れよ』と言いたくなるだろうが、俺は普通の高校生、毎月の小遣いから缶コーヒー代を捻出するのも苦労したもんさ。
馴染み深いものを口にしたことで、元居た学校や自分の家を思い出し、俺はすっかりノスタルジーに首まで浸ってしまった。
コーヒーを啜る音だけが、静寂に包まれた医務室に響き渡っていく。
暫しの沈黙。やがてモニカが口を開いた。
「あんた、あんまりお金があるようには見えないけど、本当にこの学園に入学するつもりなの?」
心配そうな顔つきで問いかけてくるので、今まで触れてこなかった『お金』の話題がやたらと気になってきた。
「金を持ってることと入学することに、いったい何の関係があるんだ?」
「そうじゃないの。学園に入学するときに、金貨百枚を学園にことを知ってる? あんたにそれが払えるのかって聞いてるの」
「き、金貨百枚って、いくらぐらいなんだ?」
少女の発言ぶりから窺うに、金貨百枚が高額であることは分かる。
しかしここで問題なのは、金貨百枚がどれほどの価値を持っているのかということだ。
「はぁ? そんなことも知らないで入学しようとしてたなんて、あんたどこの山奥から出てきたのよ?」
「どこって、サイタマケ――ごほっごほっ 俺はエルーガ村の出身だ」
完全に気が抜けていたせいか、本来の出身地である『サイタマケン』とか言いそうになった。
俺はわざとらしい咳ばらいで誤魔化し、異世界での出身地になっている、例の廃村の名前を言い直した。
「うわ、あんなど田舎の出身なの? それじゃあ、金貨なんて見る機会はなかったのかもね…… ごめんなさい、今のは忘れて?」
物凄く失礼な理由で詫びを入れられた気がしたが、今はそんなことを気にかけている場合ではない。
「ちなみに金貨百枚って、何が買えるくらいの価値なんだ?」
「そうねぇ…… 田舎者のあんたに分かるような例えでいうと、牛が百頭買えるか、家一軒を丸ごと買えるってとこかしらね?」
「嘘だろ? えっと、じゃあ君は――」
「――モニカ」
「え?」
「名前よ、名前」
「あぁ、そういうことか」
「あたしはモニカ・アディスタ。これじゃあお互い話し話し辛いでしょう? で、あんたは?」
「瀬川和樹だ」
俺はモニカに自分の名前を明かした。
「セガワって呼べばいいのかしら? なんか変な名前ね」
「違う違う、カズキ・セガワだっ」
この世界では名前を苗字より先に持ってこなくちゃならないのか。
そういえば、スルトン王国の城では一切名前を尋ねられたことはなかったが、きっと一国民の名前などどうでもいいと思われていんたんだろうな。
「ってことは『カズキ』で良いのよね?」
「あぁ。それと、話を蒸し返すようで悪いんだけど、モニカはその大金をどうやって作ったんだ?」
「あら? こう見えてもあたし、結構お金を持ってる方なのよ?」
モニカのような年頃の女の子に、家一軒が買えるほどの高額な学費が払えるわけがない。
普通の暮らしをしているのなら、親は子供をこの学園に入れようとさえ思わないだろう。
しかし、ここは異世界だ。
もしかすると、俺に想像できないような稼ぎ方があるのかもしれない。
他に思いつく稼ぎ方といえば、
「一応聞くけど、まさか水商売で稼いでるわけじゃないよな?」
「ふぅ。さっきは手加減してあげたんだけど、今度は本当に頭をかち割ってあげようかしら?」
溜め息をついたかと思えば、モニカは鬼の如き恐ろしい形相を浮かべ、俺の頭上に拳を構え始めた。
「嘘嘘、冗談冗談だって、いやマジでマジで」
俺の誠心誠意が込められた土下座を前に、モニカはどうにか怒りを抑えてくれた。
危ない危ない。
だって、どうしても気になったんだもん。
俺から見たモニカは、完全に『じゃじゃ馬娘』といった印象だったが、もしかすると貴族の娘なのかもしれないな。
そうであれば、モニカが裕福なことにも説明がつく。
「そもそも、なんであんたみたいな見るからに弱っちそうな奴が、この学園に入学を許されたの?」
「は?」
これは流石に怒っても良いんじゃないだろうか?
不慣れな文化にイラついているせいもあるだろうが、最たる理由は勿論、モニカに失礼な態度を取られてばかりいるせいだ。
この世界の住人は、外見や出身で人を判断し過ぎやしないか?
「この校舎は『選ばれた人間』しか通えない場所だし、あんたも何かしらの力を持ってるってわけよね?」
この場合、『選ばれた人間』とは金や身分を持つ者のことなのだろう。
俺は明確な身分もないわけだし、何よりこの国の通貨を一枚も持ってはいないので、この点においては納得せざるを得ない。
今は金を持ってないことがバレないように、話を合わせることだけに意識を集中させよう。
「力? ま、まぁそんなにひらかすようなもんじゃないんだけどな……」
自分自身に『俺、何言ってんだろ……』というツッコミを入れつつも、モニカの話にちゃんと合わせた。
「でしょうね。あんたからはほとんど力を感じないもの。あたしくらいになれば、見ただけで相手の力は把握できるようになるものなの」
「へぇ。そりゃ凄い」
俺が卑屈を込めた返事をすると、
「『へぇ』じゃないわよ。いい? スダニア学園には階級があって、実力順に三階層に分かれているのよ。上から順に、〈スキル・ワン〉、〈スキル・ツー〉、〈スキル・スリー〉っていう風にね。ここは最も優れた力を持った者だけが入れる〈スキル・ワン〉の校舎で――もちろんあたしもその一員ってわけ」
モニカは腕を組みながら、自信たっぷりに話してくれた。
何かと鼻につく話し方だが、この学園のことを聞きもしないのにベラベラ喋ってくれているというのは、非常にありがたいことだ。
とにかく今は、モニカから情報を引き出せるだけ引き出してみようか。
その後モニカは、『主に自分がどれほど有能なのか』を筆頭に、この世界の情報をいろいろ聞かせてくれた。
言葉に多少の棘はあるものの、根は優しい女の子と言っていいのかもしれない。
驚くことに、この校舎に常駐している教師は一人だけで、校舎の管理を任された唯一の教師でさえも、時々顔を合わせる程度なのだという。
それだけ、この特権階級――〈スキル・ワン〉の生徒たちは信頼されているというわけだ。
つまり、校舎の規模や設備に違いがあるのは、実力に応じて待遇が異なるためだったのだ。
正直に言うと、差別意識の高そうな学校で、嫌な印象は拭いきれなかった。
絶対にイジメとかやっかみとか、負の感情で溢れ返ってるだろ?
もしかしたら、俺はとんでもない場所に入学しようとしてるんじゃないか?
俺がネガティブな感情で頭を悩ませていると、モニカが突拍子もないことを俺に尋ねてきた。
「第一あんた、文字の読み書きはできるの?」
「できるわっ できるに決まってるだろ」
この世界のことは知ったこっちゃないが、俺の世界じゃ字を読み書きできるのは当然だし、サルやゾウでも上手く字を書いていたもんだ。
「ふぅん…… それじゃあ、まずは入学試験を受けなきゃね。ほら、行くわよ?」
そう言うと、モニカは医務室の扉を開き、俺を手招くような仕草をしてみせた。
ベッドから起き上がった俺は、重たい身体を引きずるようにして、モニカへ近付いていった。
「なぁ、どこへ連れて行くつもりなんだ?」
モニカが俺へ振り返り、
「採用担当のヴィスミル先生が居る執務室まで、あたしが連れて行ってあげる。理由はどうあれ、あんたの頭にコブを作っちゃったのは、あたしの責任でもあるしね。これで貸借りはなしよ?」
人差し指を俺に向け、頬を若干赤く染めながらそう言い放った。
「ふぅ…… 黙ってれば可愛いのに」
赤く腫れあがったコブを摩りながらぶつぶつ文句を言う俺に対し、
「なんか言ったかしら……?」
小声で呟く程度だったが、緑玉のピアスで飾られたモニカの耳は、俺の言葉を一言一句正確に捉えているようだった。
モニカは眉間に数本のシワを刻み、無理やり口角を上げた口だけが笑顔で、目は決して笑ってはいなかった。
こいつはまずい。
「いや、何も……」
俺が慌てて首を振って否定すると、モニカはさも満足そうに頷いた。
「ふん、よろしい」
なんだか、ひどく疲れた。
この世界に来てからというもの、次々に襲い掛かってくる目新しさに、俺のちっぽけな脳は立派に食あたりを起こしていた。
未だ剣やら魔法とやらが出てこないことだけが、俺にとって唯一の救いでもある。
今はまだ、モニカとの出会いが運命を大きく左右することになるなど、この時の俺は欠片も感じていなかった。
この先――果たして俺は上手くやっていけるだろうか?




