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第二話 王国への招待

「なんだこりゃ…… うひゃあっ」


麦袋から頭だけを出している俺を見つけた兵士は、心底驚いた形相を浮かべ、その場から飛び退き尻餅をついた。

護身術さえ身に着けていない俺には、目の前に居るガリガリの兵士さえ倒すことができない。

不本意ではあるが、降伏の意思をいち早く示そうと、俺は後ろで手を組み、脛と足の甲とを床につけた。


「団長、見つけましたーっ」


あらん限りの大声をあげた兵士は、すぐさま立ち上がり、近くの小窓から外の様子を眺め始めた。


「ありゃ……?」


声だけでは皆に届かないと判断したのか、首にかけていた銀の呼笛を吹き直し、周囲の兵士たちに警戒の合図を送った。

窃盗未遂に始まり、吐いて捨てるほどの罵詈雑言に至るまで、こいつは兵士にしてはちょっといい加減過ぎやしないか?

こいつを見ていると、村にやってきた兵士全員が、実は野盗の類なのではないかと心配になってくる。

この状況から生き延びることができたときには、こいつの不適切な言動の全てを、こいつの上司へ告発してやることにしよう。

騎士団の士気を下げるような輩は不要だろうし、何より愛着のあった家を見事にぶっ壊してくれたことへの報復がしてやりたいのだ。


甲高い呼笛の音を聞きつけ、数人の兵士が俺の居る部屋へと集まってきた。

すぐさま両手首に銀の手錠をかけられ自由を奪われた俺は、兵士に命令されるまま、足だけを動かした。


「ほら、さっさと歩かんかっ」


手綱を握った兵士に背中を叩かれ、隊長格と思われる男の前に突き出された。

鶏みたいな赤いトサカをつけた黄金の鎧が眩しい。

鎧を着けているために身体は見えないが、顔と挙動から察するに、恰幅の良い男であることは間違いないだろう。

褐色の顔と細い目、口の周りを覆うアーチ状の深いシワが、男に慈悲深い印象を与えていた。


「貴様、何者だ? 村の生き残りか――それとも野盗の類か?」


それだけ言うと、腰に差した鞘から緩やかに湾曲した剣を引き抜き、剣の切っ先を真っ直ぐ俺へ向けてきた。


前言撤回。男は顔に似合わず、めちゃくちゃ武闘派だった。

早急に最もらしい理由をでっち上げなければ、手遅れになるかもしれない。

この世界はゲームじゃないんだ。

『気が付いたときには殺されていました』じゃ、話にならないからな。


「ち、違います。村に突然盗賊がやって来て、俺は今までずっと隠れ続けていたんです。この村の生き残りは俺しかいないみたいで。父さん、母さん……」


手で悲壮感漂わない顔を覆い、涙のない目を懸命に擦り、この世界に居るはずもない両親の死を嘆いた。

亡くなった村人たちに多少の罪悪感は芽生えたが、こうなったら嘘を貫き通すしかない。

そうでなければ、何をされるか分かったもんじゃない。

こっちだって命が懸かってるんだ。

そういえば、昔ばぁちゃんが『亡くなった人を大切にするのもいいけど、今生きている人を一番に大切にしなさい』って言ってたっけ。

そうそう、今が正にその瞬間なわけだよ。

ありがとうね、ばぁちゃん。


俺の嘘くさい芝居を聞き終わった男は、顔を俯かせ、肩を大きく震わせ始めた。

――やはり、駄目なのか?

誰が見ても分かるくらい見え透いた嘘だったが、団長と呼ばれる男の返答は、俺の予想を裏切るものだった。


「そうかそうか。不憫な思いをさせて済まなかったな、少年。このスルトン王国騎士団が到着したからには、もう心配はいらないぞ?」


隊長格の男は『俺に任せろ』と言わんばかりに、自分の胸を拳で強く叩いてみせた。


「王国騎士団?」


俺が思ったままの疑問をそのまま口に出すと、


「なんだ、知らんのか?」


払拭したことに胸を撫で下ろしていた矢先、再び疑惑の視線が俺に注がれることになった。

そりゃ当然だよな……

この国に住んでるのに、この国の軍隊を知らないなんて、どう考えてもおかしいだろ。


「いや、その……」


まさか、自分で墓穴を掘ることになろうとは。

さて、知っていると言い直すべきか、惚けて知らないふりで押し通すべきなのか。

俺が焦ったように頭を高速回転させていると、


「まぁ、これほど離れた村に住んでいるのだから、知らなくても無理はないか」


男は俺に答えを問うこともなく、自分の中で勝手に落としどころを見つけてくれたようだった。

今のは流石に危ない瞬間だったが、これでどうにか乗り越えられそうだ。

これからは、自分の言動に逐一気を配らないといけないな。


「ごほんっ 良いか、諸君? スルトン王国騎士団は、この鷲の紋章に誓って、高潔でなければならない」


突然、咳払いした男が兵士たちの方へ向き直り、野太い声で大演説を始めた。


「同時に、困っている者を見過ごすことは、善悪の区別ができない愚か者のすることだ。我々は皆、一人前の騎士(ナイト)であり、国に忠誠を誓い、剣を取った身の上である筈。ならば、国の宝である国民をどうして放っておけようか?」


次いで、そう高らかに宣言してみせた。

よく見ると、士気を高める兵士たちの中に、俺を見つけた痩身の兵士の顔があった。

他の兵士同様、両腕を天に掲げ、腹から声を振り絞っている。

いやいやいや、お前は調子が良すぎるだろうよ。

さっきまで、悪態つきまくってたじゃん?


それはともかく、俺は案外幸運の星の元に生まれていたのかもしれないな。

いや、転生前はついてないことばっかりだったから、転生後に良い星周りになった可能性もあるけど。

結果的にみると、俺は馬鹿真面目な騎士道精神に救われたというわけで、これがなかなかどうして凄く恥ずかしかった。

何故ならば、思春期特有の反抗期やら中二病やらで、『友情』、『愛』、『正義』の全てがダサいと思い込んでいたからだ。

自室のベッドで一人、『この世には金と権力――それにこの力さえあればいいっ』とか叫んでいたくらいだったから、ちょっとしたカルチャーショックだったのだ。

もしもそんな世界に転生してたら、君は数分前にぶっ殺されちゃってるからね?

少しは目が覚めたかい、暗黒時代の俺よ?

俺も来世では真っ当に、正直に生きることを目標にしてみようかなと、小指の爪の先くらいには思った。


「この少年を城まで連れていけ。部外者であろうが、自国の者であろうが、義賊であろうが、『村に居る人間は全て、城まで連れて来い』というのが国王の命令だ」


ここで下手に抵抗しても、死期が早まるだけだ。

犯罪者という汚名は晴れたとはいえ、俺の近くに居る兵士たちは未だに剣や槍を構えたままでいる。

俺は拒否する素振りを見せることもなく、兵士に促されるまま馬車へと乗り込んだ。

二頭の白馬を動力源にし、十字架や女神の飾りがつけられた木製の馬車。

太い木材で屋台骨を作り、分厚い布で全面を覆われた客室は、意外にも抜群の座り心地だった。

もっと言えば、見張りの兵士が俺を挟むようにして座っていなければ、最高に良かったんだけどな。


「これより、スルトン大国へと帰還する。全隊前へっ」


隊長格の男の掛け声で、列の先頭と最後尾の兵士が団旗を高らかに掲げ、後を追う形で馬車がゆっくりと動き出した。

馬の蹄と客車の車輪とが、絶えず地面を踏みしめる音だけが、重々しい空気の車内に響き渡っていった。



◇◇◇



「起きろっ」


目を覚ますと、鋭い目つきの男が、俺を見下ろしていた。

額の狭い黒髪のオールバックに、黒いタキシードと蝶ネクタイを合わせ、口元に黒いちょび髭を携えた英国執事風の男。

厳格そうな顔に肩眼鏡という組み合わせのせいで、余計に歳をとっているように見えるが、肌艶からみても実年齢は三十代半ばといったところだろう。


「まったく。どこか怪我してるわけじゃないんだろう? いつまで私を待たせるつもりだ?」


そう言って腕を組む男は、俺への不服さを体現するかのように、軽く舌打ちをした。


馬車の揺れが眠気を誘ったのか、どうやら俺はいつの間にか寝てしまっていたらしい。

異世界に来てからの数日間は、環境の変化に対応することに追われ、気力と体力を激しく消耗していたのだ。

そんな最中に、敵か味方かも定かではない騎士団が村を訪れ、『生きるか死ぬか』という極限状態を味わったんだ。

まぁ、眠るなという方が酷な話だろう。


「す、すいません。今降りますっ」


執事らしき男の態度を不快に感じながらも、俺は口から零れそうになる暴言をどうにか飲み込んだ。

せっかく掴んだチャンスを、こんなつまらない感情で棒に振るわけにはいかないからだ。

俺が頭を下げつつ馬車から降りると、外の景色は見事に一変していた。


「なんだ、こりゃ……?」


本やテレビでしか見た覚えのない、溢れんばかりの気品に包まれた、西洋建築の城。

目を惹きつけるような赤色の屋根や、汚れのない白の外壁など、城の外観は絶景と呼ぶべきものだった。

しかし、海外旅行の経験も教養もない俺の目には、なんだか玩具の城みたいに見えてしまい、いまいちピンとは来ていないのが本音だった。

それでもこの光景に感動できたのは、きっと長い間あの廃村――エルーガ村に滞在していたせいだろう。

本当に良く頑張ってたよ、俺は。

俺が惚けたような目で城の全容を眺めていると、


「ついて来いっ 国王から直々のお呼び出しだ。今すぐこの服に着替えて来い。国王の前で粗相を起こさんようにな」


それだけ言うと、男は俺の胸元目掛けて衣服を乱暴に投げつけてきた。

オリーブ色の厚手のジャケットと白いシャツ、それに焦げ茶色のゆったりとした皮ズボン。

――だがしかし、


「こ、ここで着替えるんすか……?」


恥ずかしいというわけではないが、見ず知らずの男と二人きりという状況で着替えるのは、多少の心苦しさがあった。


「何故わたしがお前の汚い裸を見なくてはならんのだ。あそこで着替えるんだ、あそこでっ」


憤然とした男が指差したのは、城のはずれに建てられた、円筒形の建物だった。

中に入ると、そこにはパンやチーズといった食料品に加え、ワインや焼き菓子などの嗜好品が所狭しと並べられているが分かった。

たぶんこの建物は、食料の保管を目的に作られた風変わりな備蓄倉庫なのだろう。

あまりの空腹感に、つまみ食いしようという邪な考えが一瞬頭を過ぎったものの、結局食物には一切手をつけなかった。

後でばれたら大変なことになるのは目に見えているし、もしかしたらあの男が俺の善人性を試しているのかもしれないからだ。

加えて、王への謁見時に、豪華な食事が振る舞われる可能性もゼロではない。

それまでは、しっかりと腹を空かせておいた方が良いだろう。


「まだなのか?」


急かすような男の声が、ドアを挟んだ向こう側から聞こえてくる。

慌ただしく着替えを済ませた俺は、今になってようやく『異世界の住人』と呼ぶべき格好になった。

我ながらなかなか似合っているとは思うが、自意識過剰だろうか。


現状、最大の懸念事項は、あの執事風の男から疎まれているということだ。

王の側近でそれなりに身分もあるのかもしれないが、王に余計な口伝をすることだけは勘弁していただきたい。


倉庫から出て男と合流した俺は、男の後をついて城内にある螺旋階段を上り、一際豪奢な造りをした部屋へと辿り着いた。

神々が描かれた極彩色の天井壁画、部屋中に散りばめられた金の装飾など、世界中の富全てを詰め込んだような部屋だった。

部屋の最奥部では、赤と白のローブに身を包んだ男が、金の玉座に深々と腰掛けていた。


口元を覆うように白髭を生やした、風格のある男。

額や目元に刻み込まれた深いシワは、男が老齢であることを俺に教えてくれる。

男の後ろには、世話係と思われる数人の侍女が控え、一人の例外もなく皆美しかった。

場の空気感からもひしひしと伝わってくるが、こいつが王で間違いないだろう。


「クラウス様、エルーガ村で捕らえた少年をお連れ致しました」


王にそう告げると、執事は片膝を立てて跪いた。

俺に接する態度とはあまりにも違うので、その見事な変貌ぶりに、俺は思わず目を丸くするばかりだった。


「よく来たな、客人よ。まぁ、座るといい。ほれ、椅子を持って来ないかっ」


クラウスと呼ばれる国王が手を数回叩くと、傍らに居た侍女らしき女たちが、俺の近くへ椅子を用意してくれた。

高級家具みたいな椅子を壊さぬよう、おっかなびっくりで腰を下ろし、クラウスが喋るのを待つ。


「君の話は騎士団長から聞かせてもらった。遼遠の村とはいえ、辛い思いをさせたな。君の両親もさぞや悔しがっていることだろう」


クラウスの口調は、ゆったりとしているが――ときに力強く、長旅で疲れた俺に安心感を与えるような響きがあった。


「まぁ、はい……」


自分の両親が死んだというわけではないので悲しいもくそもあったもんじゃないが、共感し心を痛めてくれているクラウスを見ていると、騙しているという事実に若干の罪悪感が芽生えてきてしまった。

俺が素っ気ない言葉をクラウスに投げ返すのを見るや否や、


「貴様、クラウス様に向かってその物言いはなんだっ」


俺の隣で跪いていた執事風の男が、俺に向かって声を荒げた。


「口を慎むのだ、ミゲル。この少年は家族も故郷も一度に失っておるのだぞ。上手く喋れなくて当然であろう?」


クラウスの叱責を受けるなり、執事は口を閉ざして悔しそうに唇を噛んだ。

この執事風の男はミゲルという名前だったのか。

今まで名乗らずにいたという不躾な態度からも分かるが、どうやら本当に俺のことを目の敵にしているようだった。

現に今も、憎たらしそうな目で俺を睨み続けているしな。

いやいや、クラウスに怒られたのは俺のせいじゃないだろ。


クラウスは俺が失意の中で何も考えられないと思っているんだろうけど、俺はばりばりに冴え渡っている頭で、この世界で生きるためには何が必要なのかを熟考していた。

元の世界へ戻る方法を見つけるにしても、まずは衣食住の問題を解決するのが先だ。

温かい食事と安心して眠れる宿、さらに我がままを言えば、できれば動きやすい衣服も欲しいところだ。


「君はもう身寄りもないようだしなぁ…… そうだ、我が国きっての名門校――スダニア学園に入れてやろうか?」


「スダニア学園……ですか?」


まさか、この世界にも学校が存在するとは。

子供はどの世界でも、小難しい勉強と親への成績発表に、頭を悩ませているんだなぁ。


「そうだ。学費についても全額負担してやりたいところではあるが、あいにくわしの財布の紐は妻にしっかりと握られてしまっていてね。まぁ、一度入学してしまえば、学費を稼ぐ手段はいくらでもあるだろうから、心配しないでおくれ」


「ほ、本当に良いんですか?」


「もちろんさ。そこで多くを学び、スルトン王国の発展に大きく貢献してくれたまえ。無論、君がそれを望んでいるのならばという話が前提だがな」


次いで、国王は向かい合って座る俺に顔を近づけ、


「それから、君の故郷のことは胸にしまっておいてくれると助かる。君もあまり思い出したくないように思うし――分かってくれるね?」


耳打ちするような小さな声で、そう呟いた。


そう来たか。

自国の村で起きた騒動(トラブル)は、他国に漏れないうちに、もみ消してしまおうというわけだ。

外交を滞らせる原因になりかねないし、何より国民の不安を煽るような事態だけは避けたいといったところか。

要するに、村の焼き討ちに目を瞑ることを条件に、学園への入学を斡旋してやろうというのだ。


そんな汚れた方法で入学したくはないというのが本心だが、これは願ってもない機会(チャンス)だった。

今の俺には明確な身分を証明してくれるものが何もないのだ。

こんな状態のままでは、働き口も住む場所さえも手に入れることはできないだろう。

わざわざ入学の機会(チャンス)を蹴って、明日の見えない道へ逆戻りするよりも、生活は随分マシにはなる筈だ。


「お心遣い感謝します。ご厚意に甘えさせて頂きます」


初めて使ったよ、こんな丁寧な言葉。

元の学校じゃ、『疲れた』・『ダルい』・『かったりぃ』が口癖だったっていうのに。

あれ?

そういえばこれ全部、まったく同じ意味じゃねぇか?


「よし、それならわしが学校に推薦状を書いてやろう。ミゲル、お前は学園の臨時講師を兼任していたな? できればこの少年に学園を案内してやってくれないか?」


俺の快諾に満足そうに頷くクラウスに対し、不満そうな執事はすぐに異を唱え始めた。


「申し訳ありません、クラウス様。わたしはこの後諸外国との会合を控えておりますので、少年を案内することは叶わないのです。しかし、本当にこの少年を『あの学園』へと入学させるおつもりですか?」


『あの学園』という響きは気になるが、今は口を挟むべきではないだろう。


「何か問題でもあるのか? それとも――この私に意見する気かね?」


玉座から立ち上がったクラウスが、威嚇するような声色で言い放った。


「いえ、滅相もございません……」


クラウスの迫力を前に、ミゲルはすんなりと引き下がっていった。

俺を単なる田舎者として忌み嫌っているのか、それとも不確かな素性を疑われているのか。

どちらにしても、この執事には注意した方が良さそうだ。


話がまとまると、すぐに学園行きの馬車が用意されることになった。

国王と執事と侍女たち、それに十数人の衛兵たちが、城門まで見送りにきてくれた。

まぁ、見送りにきてくれた本当の理由は、王の護衛のためなんだろうけど。


「目標はスダニア学園だ。汝らの旅路に神々の御加護があらんことを――全速前進っ」


クラウスの掛け声と共に、馬車は勢いよく走り出した。

馬車といっても、ついさっきまで乗っていた簡素な造りの馬車ではなく、貴族専用の高級馬車だそうだ。

革張りのソファーに加え、天井には花を模したシャンデリアが飾られている。

ただ一つ残念なのは、俺の隣に座っているのが、自分を快く思っていないミゲルだということだ。

白馬が綱引く優雅な馬車だというのに、車内にはロマンチックとは無縁で無粋な男が二人。

こんな状況に陥っては、笑うなという方が難しい。

俺が身体を左右に揺らしながら、必死に笑いを堪えていると、


「なんだ?」


眉間にしわを寄せたミゲルが、俺を睨みつけてきた。


「いや、何でもないです」


危ない危ない。

下手なやっかみをつけられて、入学を破談にされては困る。

なるべく刺激しないようにして、ぼろが出ないうちに会話も避けるべきだな。

それにしても――なんだか随分遠くまで来てしまったものだなぁ。

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