第二話 現状確認ー無職のおれはこっちでも無職っぽいです2
※更新
一話、屋台での食事代金を100Gから60Gに下げました。
鳥のさえずりに目を覚ます。見知らぬ天井。一瞬驚いて、すぐに昨日のことを思い出す。
「そっか。転生…したんだよなあ。」
チート無双の未来に歓喜した初日と違い、穏やかに起きられた。2段ベットが4隅に配置されたこの部屋にはもう誰もいなかった。今は何時なのだろう。かなりの時間がたったことは確かなようだ。
ベットの上で目を閉じ、改めて初日のことを思い出す。ミリスの外にあるミリステリア草原には、それこそ何十何百匹のゴブリンがいた。ゴブリンとはいえ、数の暴力は恐ろしい。瞬く間に囲まれ、半死半生の目にあってしまった。なぜあれほどの数がいたのだろう。あれでは市民が城壁の外に出ることもできまい。ゲームのなかでは、NPCが外に出ることこそなかったが、そこまでエンカウント率は高くなかったと記憶している。
「うーん分からん。」
まあ、そろそろ起きなければ。二度寝したい欲求に逆らい体を起こす。
ゴツン。
「いってええええええ。」
そういえば2段ベットでしたわ、ここ。しかし・・いきなり頭打ちか。なんだか今の自分の状況を表しているようで笑えてくる。頭に刺激を入れても突然名案が浮かんでくるわけでなく。まだ痛む頭を抱えながら扉に向かう。
ゴツン。
突然扉が開き、まるで意思を持つかのように頭を襲撃した。なんだろう。自分の頭は呪われてでもいるのだろうか。
「おう、すまんすまん。」
扉を勢いよく開けた張本人の男は笑いながら謝ってくる。それにしても背中に背負った大剣からして冒険者とかなのだろうか。
「大地の神、豊穣の神よ。彼の者に癒しを与えん、『ヒーリング』。」
冒険者らしき男がそう唱えると、頭の痛みがすっと消える。これが、ヒーリング。これが、魔術。一気に起こった様々なことに頭の処理がついていかない。
「そ、それは。」
「なんだにーちゃん。剣士で魔法使えんのがそんな珍しいか?」
そうじゃない。そうじゃないのだ。ただやはり魔法という概念があったのだという喜びと自分はそれを使えないという悲しみに板挟みとなり、魔剣士ってかっけえという第三勢力と頭の中で熱戦を繰り広げているだけなのだ。
「そういやにーちゃん、もう夕方だけどまさか一日ずっとここにいたわけじゃないよな?」
あ。
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慌てて1階に降りると、宿の主人に宿代を払い、無理言って夕食を食べさせてもらう。1階は酒場兼食堂となっているようだ。ぽつぽつと冒険者然とした人がテーブルについている。
本来は朝食だというその定食は塩焼きそばのような見た目だ。
「うまい!!」
相変わらず味は薄い。でも。肉と野菜のうまみ。野菜の歯ごたえと麺ののどごし。かむたびに肉汁があふれ出す肉。素材の一つ一つが主張しあい、高めあい、響きあう。こんなにもおいしいものを食べたのは何年ぶりだろう。たちまちのうちに皿は空っぽになった。
「大将、おかわり。」
「もうねえよ、また明日の朝来な。」
そういいながらも大将はうれしそうだった。
こんな異世界もいいのかもしれない。そう思った。
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本日の収支(二日目)
先日までの残高 9,997,740G
本日の支出 食事代 100G
宿一泊 200G
本日の収入 なし
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現在所持金 9,997,440G
ミリステリアはミリス+エクステリア(外側)から。
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