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新クラス~自己紹介の一幕~

ひとまず俺たちの通う高校の説明。

【私立 風見学園】

学力、普通。

部活動の成績、普通

進学率、普通

男女比、普通

これがオレたちが通う学園だ。

うむ、実に俺好みの学園であることは認めよう。

篠原と共に登校した俺はひとまず教室に行く前に新クラスが発表されている体育館に向かう。

期待と不安を抱えた同じような表情を浮かべる同学年の生徒に混じり、俺も名前が羅列してある表を眺める。

…メールでもしてくれればいいのに。

目を細めクラス表を見ていると、あえて距離を取って眺めていたのだが、視界の端で突然篠原がハシャギ出した。

著しく嫌な予感。

『何ハシャイでんの?』

俺が半分諦めにも似た気持ちで尋ねると、案の定篠原は満面の笑みで俺のことをビシッと指で刺し宣言。

『一緒のクラス、ヨロシク!!』

『…さいですか』

改めてクラス表を見直す、すると俺の名前が載る表には紛れもなく篠原の二文字があった。

『…せめて今年は大人しくしてくれよ?』

『ニヒヒ…』

なんか笑ってるし…

肩を落とす俺の背中を押しながら篠原は嬉しさを隠しきれないような声音で俺を急かす。

『早く新クラス行こーよー』

『しゃあない行くか…』

まあ、ここまで喜んでくれると悪い気はしない。…単純で悪かったな。

体育館から出ると、俺たちの下駄箱がある校舎の入り口に人だかりが出来ていた。しかも女子だけ。

『…何アレ?』

そう俺が呟くと、横にいた女子の一人が黄色い歓声を上げた

『桐城せんぱ~い!』

その声に釣られるように人だかりのなかから声が漏れ聞こえてくる。

『朝から桐城先輩に会えるなんてラッキー!!』

『ねぇ見た!? 今先輩私のこと見てニッコリしたよキャー!!』

なんて声が人だかりから聞こえる。マジでなんなんだ…

俺がただただ困惑していると、俺の後ろに立っていた篠原が眉根に皺を寄せつつも呆れた目でボソっと呟いた。

『何だ…桐城先輩じゃん』

『えっ嘘マジで!?こんな人気あったんだな…』

いやはや…漫画みたいなこともあるもんだなあ…。

何を隠そう群衆の中心にいたのは我らが風見学園の現生徒会長の桐城円だった。

簡単なプロフィールは容姿端麗で、学業、スポーツともに優秀。

教師と生徒からの信頼も厚く、しかも趣味で弓道を嗜み実力はI・Hレベルの完璧超人。

まさに漫画の世界から飛び出してきたかのようなお人。…俺のような普通人からすれば雲の上の存在だ。

『噂には聞いてたけどマジでファンクラブとかあるんだな…』

俺が感心半分、呆れ半分で呟くと、篠原は俺の言葉に我が意を得たりとばかりに毒づく。

『朝から桐城せんぱ~いなんて馬鹿みたい、邪魔だっつの』

『あれ? 篠原は興味ねえの?』

…確かにコイツは昔からアイドルグループとかには興味なかったが、年頃の女の子だったら話くらいはしそうだけど…

『アイツあんまし信用出来ない』

『はぁ?』

興味あるかないかで聞いたのに、『信用できない』とはどういうことだ? そもそもコイツと生徒会長サマに接点があるとは思えないが…

『いいから早く教室行こうよ!!』

『ん…そうだな、行くか』

俺はこの時、篠原の様子が少しだけおかしいのに気付かなかった。


新クラス、晴れてオレ達は高2になった。

風見学園では2年に進級する時だけクラス替えが行われる。

なんでも3年時に混乱するのを避けるためらしい…意味分からん。

現在新しい教室では独特の緊張感の中で自己紹介の真っ最中だ。

ギャグをかまして空気をフリーズドライするヤツや、緊張からか喋れないヤツがいるなかで

『篠原七瀬、所属部なし、趣味は悩み事解決。なんでも悩み事は聞くよ!! 2年間ヨロシク!』

篠原だけは堂々としてた。 男子のオレから見てもカッケーな、オイ。

すると俺の席の後方から

『なあ、あの篠原って子、結構可愛くね?』

なんて声が聞こえてきた。

『後悔するからやめとけー』と内心呟いてると続けて

『確かに可愛いな~』

『ッ!? お前ら正気か!?』

…ビクッ!! ふう…驚いた、俺の心の声そのままが聞こえてくるんだもん。 

『はぁ? 急にどした?』

正気を問われた後方の生徒は訝しむようにもう一人の男子生徒に尋ねる

『アイツあれだよ元C組の…』

『!? まさか、アレ…か?』

『そうだアレだ』

『なあ、アレってなんだよ…』

なんて声が更にいくつも聞こえ始める。そのまま聞き続けてみると…

『ホラ、お前 樫木中学のアレの噂聞いたことねえ?』

ちなみに樫木中学はオレと篠原の母校だ。

『マジかよ…アレか…』

『ああ間違いねえ、あのカチューシャとポニテ…デストロイヤーだ』

…おいおい。

『マジかよ…ついてねーなー』

『だよなーアレと一緒のクラスじゃオレらまでアレと同じだと思われるぜ…』

…チッ 

心の中で俺は舌打ち。確かに篠原には暴力が常にイメージとして持たれるが、それは篠原の最終手段であって全てではない。

それに、篠原が力を使うのは何も弱い者を虐げるためではない。

俺の心の声は無論届くはずもなく、男子生徒たちは楽しげに会話を続けていく。

『ウワー超迷惑マジで消えろよ』

『不良消えろって感じだよな』

『そうそう、見た目だけはいいんだから大人しくしてりゃあ男も相手してくれんじゃねえの?』

…駄目だ、我慢の限界。

俺が見かねて口を挟もうとした瞬間…

ドガンッ!!!

『『『!!!?』』』

何だ何だ何だ何なんだ!!??

咄嗟に音のした方を見ると怒りの余り机を粉砕した篠原がいた。

…ふぅ~、ビビった~。何だ篠原か~、良かっ…

『って!! 違げえだろうが!!』

篠原を止める俺。

『どいてよ昇。アイツらシバク』

怒りに満ちた表情で俺の制止を振りほどこうとする篠原。

『落ち着け!! 全部事実だし、しょうがねえだろ!』

『はあ!?』

『はあ!?じゃねえだろ…とにかく今はマズイ』

気付けばニュークラスメイトが俺らをガン見だ。

とりあえず篠原を宥めて座らせた後、、席に戻る前に篠原のことを話てた奴らに言っとくことがあった。

『今ので分かったろ。ケガしたくなかったら余計なこと言うなよ』

言われたやつらは『余計なお世話だ』と言わんばかりの顔だった。

正直オレがこいつらを殴りなかった…が、それは俺には出来なかった。…少しだけもどかしい気もする。野蛮人だと思ってくれるなよ?

篠原のことを何も知らない奴らが、噂だけで篠原を傷つけるのは許せなかったんだよ


オレはクラス中の視線を浴びながら黙って席についた。


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