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前話調整分かなり短め
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「って送っちゃ駄目じゃんっ、カムバック生首」
項垂れるゴぇもん。
離れた所で兵士達が混乱している
「何だ、何が起きてるだ」
「オラもわかんないだでよ」
「鬼婆さ、どっか連れてかれちまったな」
「ああ、あんな強そうな夜叉が連れてかれちまったな」
「今度はおらたちだべか、どこさ連れてかれるだ」
「そんなの地獄に決まってるべよ。ナンマンダブナンマンダブ」
薄汚れた化けダヌキが泣き笑いながら兵士達の方へ徐々に近づいていく。
やがて化けダヌキが壊れたように一心不乱に呟いている言葉が聞こえる。
「クビガナイト、カエリタイケドカエレナイ、ダレカヒトリヲツレカエロウ」
その意味を理解した兵士達がパニックを起こしそこら辺にあるモノを投げ始める。
「ひぃ、こっちに来るな」
その中の一つの瓶がゴぇもんの近くで割れると、辺り一帯に酒の匂いが漂う。
ハッとしたゴぇもんが匂いの下を辿り、割れた瓶に飛びつき欠片を舐める。
「酒をあいつに投げろ。聖酒でも薬用焼酎でも何でも良い、瓶ごと投げろ」
大小様々の酒瓶が投げ入れられるが、ゴぇもんは己の俊敏性を駆使して全てを手に入れた。その内の一つに恐る恐る口をつける。凄まじく美味かった。
異世界に放り込まれてから二ヶ月が過ぎたが、ようやくまともな物を口に入れた。
思えば、死んですぐに閻魔大王と対面したら、「鬼捕まえて来い」って異世界に飛ばされるし、起きない子供がいつの間にか15人に増えたし、老人には家を乗っ取られるし、俺の手足を奪う存在がいるのに力を貸してくる存在はいないのか、もっとこう主人公優遇イベントとかさ。
だって俺、衣食住、まともなの全部ないじゃん。
自棄酒しか無いじゃん。ゴぇもんは泣いた。
「くそっ、いつの間にこんなに中級妖魔が沢山、総員城まで退避、途中にいるであろう妖魔は全て無視しろ、さぁ死ぬ気で駆けろ」
隊長が素早く命令し、その場を離脱する。隊長の予測は外れ、意外にも農園部の損害が小さい。これは近くに現れた閻魔の波動が下級妖魔たちにひたすら逃避行動を取らせた事に起因する。そして逃避方向は城壁が遮っている。隊長は城に戻るのは不可能と判断し、他の関所に伝令を発したあと、伏兵として森に潜んだ。
一方その頃ゴぇもんは、いつもの様に、その場を更地に変えた。
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「知らない天井だ」
ゴぇもんはようやく正規ルートに入ったかと一瞬テンションを上げるが、良く見てみると自分が造った丸小屋の中だった。違和感があったのは子供達が一人もいなかったからだ。
「まっいっか」
ゴぇもんは二度寝した。
しばらくすると軽快なリズムで腹が叩かれる。
これは古くマヤサイ族に伝わる戦いのリズム、今度こそ北のマンイーターブラックタイガーを――
「起きろおっちゃん」
目を開けると拾った子供達がいた。
「いつまで寝てんだよ」
ふぅ、ようやく今まで溜めに溜めた突っ込みが言える。
ゴぇもんは
「誰がちっちゃいチンチンじゃーーーーーーーーー」
間違った。
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一章完結
次章は未定っす