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4話 変質

アステルと少年達は向かい合って立っている。

 少年達の表情からは、隠しきれない苛立ちを感じる。


「後悔してもおせえからな!」


 各々ポケットに手を入れ、一つの石を取り出す。

 彼らがその石を手に持ち、集中すると――石は徐々に青白く光り始めた。


「……?」

「召喚石って、丸腰の女の子相手に必死過ぎじゃないのー」


 アステルが何をしているのか疑問に思っていると、それに答えるように、微かに笑いを含んだ声音でライラが言う。


 魔法陣が地面に出現し、そこからは少年たちが使役する召喚獣が現れる。

 ウルフ、スライム、ゴブリン、コウモリ。

 どれも下級な存在だが、丸腰で相手にしていい相手ではない。


「いけ!」


 金髪の少年の号令と共に、召喚獣達はアステルへと襲い掛かる。

 何とか躱し続けはするが、武器がないのではどうにもならない。


「ほらぁ! やれ! やれ!」


 楽しそうなライラとは裏腹に、周囲の人々はざわついている。


 せめて武器があれば……


 そう強く念じると、次第に右手から徐々に熱が宿り始める。

 アステルがふと視線を落とせば、右手が微かに青白く光っていた。

 先ほど彼らが石に集中していた時と同様の光。――魔力の光だ。


 もしかして……。


 剣、剣、剣。


 アステルは召喚獣から距離を取り、明確に剣のイメージを思い浮かべる。

 すると、次第に魔力は伸びていき、青白い剣へと形成された。

 青白く輝いているが、今にも消えてしまいそうな程に色が薄い。


「……へえ」


 先ほどまでの弾んだ声とは打って変わり、ライラは落ち着いた声音で呟いた。


 これなら……!


 アステルは走って勢いをつけてきたゴブリンの一撃を躱し、手に持つ魔力の剣で反撃を与える。

 その剣は抵抗なく肉を切り裂く。

 しかし、一撃与えるだけで粉々に砕け消えていく。


 も、もろい……。


 ならばと短めのナイフ程の長さをイメージすると、先ほどより短い時間で再び生成される。


 自分のイメージ通りに作れる……。


 次々と襲い掛かる召喚獣を相手に、アステルは彼らの攻撃を躱し、反撃を与える。

 空舞うコウモリを切り落とし、スライムには生成した武器を投げナイフのように放ち、ウルフの懐に飛び込んでナイフを突き立てる。


 その度に、生成した武器は鮮やかに砕け散った。


「……はあ」


 安堵からか、それとも集中が切れたからか。

 溜息が自然と漏れ出る。


「なんだよそれ!?」

「知らないよ」

「魔力で武器作るなんてすごいねぇ。魔力操作がうまいってレベルじゃないよ。――脆いけど」


 ぱちぱちとライラは拍手しながら、うんうんと頷いている。


「ふざけるな……。ふざけるな!」


 そういうと金髪の少年は、再びポケットから召喚石を取り出す。

 石は激しく光り輝き始め、やがて先ほどとは比べ物にもならない程大きな魔法陣が空に出現した。


 だが、様子がおかしい。

 魔法陣はやがて、黒く澱んでいく。


「あぁ……。勝てないからってやりすぎじゃない? 少年」


 黒く澱んだ魔法陣から、徐々に巨体のなにかが姿を現そうとしていた。

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