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可愛すぎるから死んだんですか?

 空前のVtuberブーム…というのは一昔前。

 しかしいまだ根強い人気を誇るコンテンツで今日もコツコツとライブ配信をしている者ありけり。


「みんなー!今日も見てくれてありがと!」


 画面に映るのは白い髪が特徴のキュートな少女。


『夢見照ちゃんおっつおっつ』

『今日も生きる活力あざっす!』


 夢見照(ゆめみてる)と言われた少女は手を振るモーションをすると、OBS(配信ソフト)の電源を切る。

 最近のアニメや小説ではここで配信の切り忘れでトレンドするのが一般的だが、夢見照はしない。

 入念に配信が閉じたのを確認してパソコンをシャットダウンさせると、モニターの電源が切れて黒い画面に少し禿散らかした男の顔が映る。


「おっふ…いきなり自分の顔がうつると気持ち悪いぜ」


 そう、夢見照こと夢見鯛(ゆめみたい)通称バ美肉おじさんである。

 世代が進むにつれて進化するAIボイスチェンジャー等をフル活用することにより、ついに嗜好のバ美肉おじさんが完成したのである。


「スパチャはないけどやっぱり美少女として配信するの楽しいですぞ…」


 鯛はデュフデュフと気味の悪い笑みを浮かべると、ぐーっとおなかの音が鳴った事に気づく。


「そういえば朝から何も食べてないや」


 この男、別に仕事をしていないわけではない、朝8~17時までの一般的な働き方をしている。

 ただ単純に食に無関心なだけである。

 ちなみに照のほうでは、その時間は学校と部活ということにしている。


「今日はラーメンでも食べますかな」


 鯛はそう呟くとすかさず自分のXにポストを始める。


『今日の晩御飯は麺類で決まり☆パスタがいいかな~?』


 麺類だから嘘はついてないと心の中で言い訳をしながら、鯛は近くのラーメン店に向かう事にする。

 近場のラーメン店はこの時代にワンコインでがっつり食べる事が出来るので重宝しているのだ。


「デュフフ、今日はギリギリまで替え玉しますぞ~」


 ルンルン気分でアパートから外に出ると、黒いフードで顔を隠したいかにもな男が包丁を構えて鯛を凝視していた。

 一瞬俺の事じゃないよね?と鯛は周りを見渡すが、男はどう見ても鯛しか見ていない。

 そんな男はヒットマンのような声でポツリとつぶやく。


「お前を殺す」


 鯛は驚愕に目を見開く。

 え?なんで俺初対面の人にこんな事言われてるの?

 何かの冗談?それとも異世界転生の前フリ!?

 そんなことを考えながら、鯛は声を振り絞る。


「だ、誰かと間違えてるんじゃないかい?ほら、俺と君って初対面だろ・・・?」


 そう語りかけると、男はカタカタと震えながら小さい声で呪文のような言葉をしゃべりだす。


「身長139㎝…体重はマシュマロ並み、夢三ケ原中学所属のボランティア部、両親は共働き…けど豪華な一軒家に家政婦さんと一緒に暮らしている…大好きなペットのゴールデンレトリバーのベスと毎日楽しく暮らしています…朝から夕方までは学校と部活の時間…部活は軟式テニスをしていて副キャプテン…etc」


 ツラツラと男が呟くそれを聞き、鯛は戦慄する。

 それ夢見照のプロフィールまんまじゃん。


 我ながらよくここまで盛ったなという情報を関心気に聞いて、その上でこの男は俺を殺しに来たんだなと納得する。

 まぁ憧れの美少女がこんなおっさんとか殺意も湧くよね!


「俺の可愛い照ちゃんがこんなおっさんなんて、あってたまるかーーーーーーー!!!!」


 男は絶叫、両手に包むように包丁を突き出す。

 鮮血が舞い散るなか、鯛は最後にポツリと呟く。


「ああ、すまないベス(家で飼ってる金魚)今日の餌・・・あげてなか・・・」


 火が差すような痛みと共に全身の力が抜け、ガクッと倒れこむ。


 夢見鯛、享年38歳


「うわーーー!?」


 そんな叫びをあげながら少年の声が響き渡る。

 先ほどまで感じていた痛みが消えている。


 これはもしやと周りを見渡し、鏡を見つける。

 鏡をのぞき込むとそこには若かりし頃の鯛の姿。


「異世界…転生…?」


 いや、よく見ると見たことのある部屋だ。

 中学時代の我が家か…ってことは!


「俺、タイムリープしちゃった系?」

過去に戻って可愛いの調整をしながら最強Vtuberを目指す話にしたい。

でもアバターを使ってVRや異世界にも連れてきたい・・・。

挿絵(By みてみん)

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