reincarnation
「君はどうしてここに? というかその戦車は?」
「それを言うならそなたこそ。じゃがその剣を見るに――どうも事情は同じらしいの」
お互いの落ち着きぶりや様子を見て泰伯と蒼天はおおよその事情を察した。
二人の理解の早さについていけない桧楯は目をくるくるさせながら二人を交互に見ている。
「えっと犾治郎。もしかしてこの二人が君の言っていた援軍なのかい?」
『せやで。二人いるとは思わなんだけどな』
犾治郎はそう答えたがその声は二人には聞こえない。蒼天は少し首をかしげながらも、すぐに胸を張って、
「よくわからぬがそれは違うぞ。おぬしが余らの援軍となるのじゃ!!」
と言った。
「……なんでそんな強気でいけるんスか蒼天さん?」
「そうだね、わかったよ三国さん」
「いいんスか!?」
「うむ、話が早いの。今はくだらぬやりとりに時を割いているのは惜しいでな」
「……じゃあくだらない上下マウント取ろうとしないでくんないッスか?」
桧楯は呆れて肩を落とす。
「それで犾治郎、改めて説明を頼みたいんだけど……この札、スピーカー機能とかないの?」
『あるで』
「どうすればいいんだい?」
『札を地面に置いて三点倒立して額に当てながら「札神さま札神さま、御声聞かせたまえ」って唱えれば出来るよ』
「……ふざけてるのかい?」
『やらんの? まあそれならそれでええけど』
泰伯は眉間にしわを寄せながら札を睨む。蒼天と桧楯からすれば完全におかしな人の状態だ。
「くそ、やればいいんだろ。……っと。えー、札神さま札神さま御声聞かせたまえ」
泰伯は半ば自棄で言われた通りの行動をした。
二人はそんな泰伯を気の毒な目で見つめている。
「……何してんスかねあの人? 顔はイケメンなのになんかこう、可哀想ッスね」
「こんな兄を健気に慕っておるとは、玲阿は本当にいい奴じゃの」
後輩二人の痛々しい視線に耐えながら泰伯は三点倒立を続けている。しかし札に変化はない。それどころか、
『なんや、本当にやったな泰伯クン。流石というか、真面目というか――』
相変わらず、その声は泰伯にしか聞こえないままだった。
「お前がやらせたんだろうが!! というかなんでやったってわかるんだよ!? カメラ機能でもついてるのかこれ? それともどっかで見てるのかよ? それならさっさと出て……」
叫びながら、ふらりと泰伯が倒れこんだ。
「……まぁ、逆立ちしながらあんだけ叫んだらそうなるッスよね」
「頭に血が昇ったんじゃろうの」
『ま、この場合は昇ったゆうより降りてったゆうほうが正確やけどな』
そこでようやく通信札から声が出て、犾治郎は蒼天たちとも会話できるようになった。急に札から声がして桧楯がびくっと肩をすくめる。
しかし蒼天は平然として、
「おぬしが先ほどからこやつが話していた相手か」
と言った。