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BARBAROI -鬼方の戦士は八徳を嗤う-  作者: ペンギンの下僕
chapter2“a*en**r b*ea*s *ein**r*ation”
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what's your soul name?

 悌誉に来るなと強く言われた蒼天は、しかしその言いつけを破っていた。

 悌誉が学校に行ったのを見計らうとこっそりと出かけ、授業が始まる時間帯に学校の前を通らずに裏山へと向かったのである。

 そうして、山道の途中にある簡素な屋根とベンチのある休憩所に腰かけた。

 ここならば学校で何かが起きた時にすぐに察知できる。校舎から少し距離が離れているのがもどかしくはあるが、今の蒼天であれば騎匣獣(きこうじゅう)を展開すれば坂弓高校の敷地内のどこへ行くにも三分とかからない。


「杞憂であれば良いのじゃが――」


 ほぼ確実に、何かが起こる。

 蒼天はそう確信していた。

 悌誉の様子が明らかにおかしかったことが、一応の根拠ではあるがそれ以外の確証はない。しかし、これ以上のものはいるまいとも蒼天は思っている。

 さて、ならば悌誉は何故、蒼天に学校を休めと言ったのだろうか。

 考察その一。

 悌誉には何らかの予知能力があり、避けようのない何かが起きることがわかった。しかし社会的に学校を休校にするような立場はなく、悌誉の力でその何かを未然に防ぐ手段もないので、親しい人間だけでもその被害を受けないようにした。

 考察その二。

 また前のような――怪物が発生するような危険があり、悌誉はそれと戦っている。蒼天が戦える力を持っていることを知らない悌誉は、自分の戦いに蒼天を巻き込まないようにしている。

 考察その一と似ているが、この二つかその派生のようなものであればまだ良いと蒼天は思っている。

 問題なのは、考察その三だ。

 坂弓高校に今日、何かが起こるとして、それは避けようのない、あるいは防ぎようのないものではなくて。


(悌誉姉が、引き金を引く側であるかもしれぬ――)


 それこそが、蒼天にとって最悪の事態であった。

 しかしその可能性が一番高いとも蒼天は考えている。

 昨日の悌誉の様子はとても悲痛に満ちていた。その顔にあるのは、まるで断崖に追い詰められた人のようで、後はないが、前に進むのも躊躇うような切羽詰まったものだった。

 悌誉の本性は間違いなく善だ。蒼天はそう断言できる。

 しかしもうどうしようもなく追い詰められた時、それでも道を外さずに進めるかということは別の問題である。

 蒼天には想像もつかないことだが、悌誉はずっと何かに苦しんでいて、精神が圧迫されていて、道を踏み外すかどうかの瀬戸際にいる。そんな風に思えた。


(その時、余はどうすべきなのであろうか――)


 そんなことを考えている間に昼休みのチャイムが鳴った。

 蒼天はひとまず、コンビニで買ってきた安い菓子パンと値引きシールの張られていたコーヒー牛乳を取り出す。簡素な昼食であるが、こういった食事は蒼天にとってはむしろ慣れた、安心感のあるものであった。


「――そんな簡素な糧食を共に斥候の真似事とはな。南方の雄、その三軍を率いた王とは思えぬ粗末さだ」


 声がした。

 抑揚がなく、感情の感じ取れない声である。

 いつの間にか蒼天の真正面に、その人物は座っていた。

 黒いフードつきの外套で全身を隠した、男とも女とも判別のつかぬ何者かである。

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