表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
BARBAROI -鬼方の戦士は八徳を嗤う-  作者: ペンギンの下僕
chapter2“a*en**r b*ea*s *ein**r*ation”
65/384

sorry,if I kill you

 鍛練中の泰伯に声をかけてきたのは、泰伯の去年のクラスメイトである正雀(しょうじゃく)犾治郎(ぎんじろう)だった。

 犾治郎は帰宅部だったと泰伯は記憶している。

 記憶違いか、今年から何かの部活に所属したとしても、この時刻にこの場所にいることには違和感がある。

 何故なら日の暮れた後の裏山で一人、剣を振るっている泰伯の状況がそもそも普通でないのだからだ。


「どしたん茨木クン? ああ、ごめん邪魔したかな? ま、そこは大目に見てや」


 仮に何か用事があったりしてこの場に居合わせたのだとしても、出てくる言葉は泰伯の行動を不審がるようなものになるはずだ。

 しかし犾治郎はこの状況に何の疑問も持たず、落ち着いた様子で話しかけてくる。

 疑問を持つようなことはないと言っているようで――いや、泰伯の状況はすべて解っていると言わんばかりの余裕がある。


「困ってる、っていうのは……どこを見てそう感じたのかな?」


 泰伯はおそるおそる聞いた。


「ああ、困っとるゆうのは少し言葉が不適切やったかな? 正確に()うなら――行き詰まっとる、ってとこか?」

「……っ!!」


 泰伯は思わず息を呑む。

 犾治郎は間違いなく泰伯のこれまでの行動を見ていた。無斬を展開していたところも含めて。その上で、それらを不思議な現象としてではなく鍛練と認識し、しかもそれが個人で行う訓練として限界に来ていることまで見抜いているのだ。


「……正雀君。君は、何者なんだい?」


 そう訊かずにはいられなかった。

 そこには不審と警戒と、そして期待がある。もしかすると犾治郎は自分と同じような境遇にいるのかも知れないと――。


「何者かて言われても。そうやな――」


 そう言って犾治郎は懐からあるものを取り出した。

 それは、泰伯の持つそれによく似た珠だった。ただしその色は淡い青色をしていた。


「茨木クンと(おんな)じようなもん、てとこかなぁ?」

「ということは、君も――これを武器に変えて、戦う人ということかな?」

「ま、そんなとこやな。それに一応、茨木クンよりは覚醒したんは先やで」


 手の平の上で珠をくるくると回しながら犾治郎は言う。


「そうなのかい?」

「うん。こないだのグラウンドの戦いも、旧校舎前の戦いもちゃんと見とったよ。危なそうなら手ぇ出そうかなと思たけどまあ大丈夫そうやったしな」

「……出来たら、手伝って欲しかったかな」


 泰伯は犾治郎を睨む。蜘蛛の怪物といい包帯の女といい、結果的に生き残れはしたが楽勝というわけではなかった。


「ま、それはごめんな。ただ、グラウンドのほうは本当に大丈夫や思てたけどもう一つのほうはちょっとこっちにも事情があってな。出来たら出ていきたなかってん」

「事情?」

「すごい個人的なことや。あんま(ふこ)ぉ訊かんといて」


 話ながら犾治郎はずっとにこにこしている。

 感情が読み取りにくく、やりにくい。これならばあの包帯の女のほうが、顔が隠れていてもよほど感情豊かだったとさえ思えてくる。


「それで、暗躍とかくれんぼの好きらしい君が今になって出てきた理由は何なんだい?」

「そりゃもちろん。茨木クンの修行を手伝ったげよう思てな。ほら、僕ら友達やろ?」

「……友達、かな?」

「んなつれないこと言わんといてーや。同じ八荒剣(はっこうけん)同士、仲良うしよや」

「ハッコウケン?」

正雀(しょうじゃく)犾治郎(ぎんじろう)

家族構成:母、姉

誕生日:5月5日

部活:無所属 委員会:無所属

好きなもの:刺身、コーヒー、兵法書、オセロ

嫌いなもの:大根おろし、博打、幽霊、洋楽

備考:胡散臭い

 関西弁で話す眼鏡をかけた高校二年生。泰伯とは一年生の時のクラスメイト。

 親が関西人なので自然と関西弁を話すようになったが関西に住んでいたことはない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ