表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
BARBAROI -鬼方の戦士は八徳を嗤う-  作者: ペンギンの下僕
chapter1“*e a*e *igh* un***tue”
38/384

twin chainwhips

 どうにか蜘蛛の怪物を倒した泰伯は自分のスマートフォンでとりあえず救急車を呼んだ。

 幸いにして野球部員たちは皆、衰弱こそしているが死者はいなさそうである。そのことにひとまず胸を撫で下ろした泰伯が次に考えたのは、あの蜘蛛の怪物は何であったのかということだ。

 泰伯はすぐに一つのことが思い当たった。

 旧校舎の隠し部屋。札と鎖が張り巡らされていたあの空間である。その有り様はいかにも――よくないモノを封じ込めているようだった。


(まさか……僕が不用意に立ち入ったせいで)


 不安に駆られ、泰伯は走り出した。

 蜘蛛の怪物に浴びせられた毒の苦しみはいまだあるが、一度しか喰らっていないからか、動けないというほどではない。歯を食いしばりながら旧校舎へと向かう。

 まだ日の入りまでには少しあるが、すでに薄暗くなりかけている時刻の旧校舎は、気味な雰囲気を漂わせている。

 ましてつい先ほどまで妖怪譚に出てくるような怪物と戦っていた泰伯にとっては、何かが出そうだと嫌でも思わせる。

 たどり着いた旧校舎は、以前と変わらぬ沈黙を貫いている。

 そこでふと、気づいたことがあった。

 旧校舎の一部は一週間前のフェイロンとの戦いで一部が破損しているはずである。にも関わらず、泰伯の目に映る旧校舎は以前とまったく変わらない。


(あの後は、彼ともう一度対話しようとか、部長は大丈夫だろうかとか、そういうことばかりを気にしていて旧校舎のあたりに行くことはなかったけど……。くそ、なんで今まで気づかなかったんだ!?)


 いかに今は使われていない旧校舎とはいえ、一週間も誰の目にもつかないということはあり得ない。

 そしてそうなると破損は必ず見つかり話題となる。副会長である泰伯がその話を耳にしないということはあり得ないはずだ。

 にも関わらず一週間の間、泰伯はそんな話を一度も聞かなかった。それがおかしいという思考に至らなかった。

 疑問は増えたが、ここまで来た以上、退くことは出来ない。

 少し紀恭に悪いと思いながらも旧校舎に踏み入ろうとしたその時である。

 旧校舎の中から出てこようとする人物を泰伯は見つけた。

 顔を包帯で覆って隠している髪の長い人物で、体の輪郭からするに女性のようだ。紺色の弓道服のような服装をしている。


「……」

「ねえ君。少し聞きたいんだけどさ」

「……なんだ?」


 聞き覚えのない低い声がした。その手には竹簡のような物を握っており、泰伯の姿を見ると、彼女はそれを懐にしまった。


「あの部屋で何をしてたんだい?」

「ッ!!」


 その言葉を聞くと同時、彼女は泰伯に向かって敵意をむき出しにして飛びかかってきた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ