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BARBAROI -鬼方の戦士は八徳を嗤う-  作者: ペンギンの下僕
chapter5“vanguard:king of *****”
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riotous party_2

 つい数分前までは崖上に陣取った鬼面の男とその騎馬隊をどう攻略するかという緊迫した場面だったはずのこの場は、蒼天、龍煇丸、悌誉の登場で今や胡乱としている。

 仁吉と泰伯、そして鬼面の男までもが、本来は敵対しているはずなのだが、今は、何を見せられているのかという同じ心境になっていたのであるなっていたのである。


「おい、色々いいかげんにしろよお前ら!! 何しに来たんだ!?」


 仁吉が叫ぶと龍煇丸は、さも当然のように、


「え、ふざけにきた以外の何に見えるの(みな)ちゃん先輩!?」


 と返したので仁吉は顔を怒りで赤くした。

 泰伯さえも、


「あの……助けにきてくれたんじゃないなら、帰ってもらえないかな?」


 と、やや遠慮がちではあるが苦言を呈する。そんな泰伯の期待を裏切るように蒼天は笑った。


「安心するがよい泰伯どの。お巫山戯はここからじゃ」

「新喜劇はもういいよ!!」


 泰伯は思わず突っ込む。


「えー、なんじゃ泰伯どのはそろそろギャグパートはやめてシリアス戦闘パートに入れと申すか?」

「……パートって何だい?」

「ええと……正社員よりも短時間の労働で時給をもらう人のことじゃないか?」

「……南千里先輩は理性なのかボケなのかどっちなんですか?」


 先ほどまでは恥じらいを持ちつつ、照れながら蒼天と龍煇丸のノリに付き合っていた悌誉までもがついに神妙な顔をしてこのようなことを口にしたので泰伯はいよいよ訳が分からなくなってきた。


「まーまー茨木くん、こうなったら諦めて一緒にボケ倒そうぜ。ほら、衆人皆酔わばなんとかってやつだよ」


 それは漢文にある、世の中が皆酔っ払っているかのように不条理のまかり通る世の中であるなら自分も理性を捨てて酔人の世に適応しろ、という意味の言葉である。だがこの状況で酔人に当たるのはどう考えても蒼天と龍煇丸だけだ。


「ほれ、理性など疾く捨てよ。踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら踊らにゃ損損、じゃ」


 龍煇丸に続き蒼天までもがそんなことを言う。

 仁吉と泰伯は顔を見合わせて相談した。


「なあ、あれ何なんだよ本当に?」

「……それこそ、普段先輩がよく言っている通りですよ。僕に聞かないでください」


 そう泰伯に言われて、自分はそんなに泰伯からの問いかけを拒絶しているだろうかと考え――すぐに、していると結論づけた。


「……お前、割と嫌味たらしい奴だな?」

「それはすいません。というよりも、困ったらとりあえず先輩に聞いてみるというのはよくないよなと少し自省してます」


 そう語る泰伯はしおらしい顔をしているので仁吉としてもあまり深くなじることは出来ないでいた。


「しかし……。こうなったらやることは一つだよ茨木」

「な、なんですか?」


 仁吉はいつになく真剣な表情を浮かべる。つられて泰伯も顔を強張らせた。


「何か面白いことをやれ茨木」

「――はい?」


 しかし続く仁吉の言葉があまりにも素頓狂だったので泰伯は目を丸くして自分の耳を疑った。しかし仁吉のほうも、口にしておきながらとても嫌そうな顔をしている。


「だから、なんかやるんだよ。ああ、俺も一緒に何かしてやるから安心しろよ。こんなことでお前に借りなんか作りたくはないからな」

「は、はあ……。あの、本気ですか先輩?」

「いいや狂気だ。こうなったらヤケクソで頭のネジを飛ばすしかないだろ」


 そう言いながら仁吉は目線を崖の中腹に向ける。そこでは今も蒼天と龍煇丸が絶え間なくふざけ倒していた。


「俺だってもう分かんないけど、こうなったらやるしかないような気がしてくるだろ?」

「ところで先輩が自分のこと俺って呼ぶの珍しいですね?」

「それ、今言わなきゃいけないことか!?」


 崖下の二人も、本人たちは真剣なのだが段々と当初の場の空気にそぐわない緩いものになってきた。

 そしてふと蒼天は鬼面の男を見上げて笑う。その笑みは、今までのそれと違う猛禽のような鋭さがあり、鬼面の男は多少の警戒をした。


「さて、散々ふざけ倒したところじゃが、どうであった?」

「……ふん、くだらない三文芝居でしかないな」


 鬼面の男はまだ、煮え切らない声で言った。


「そうか? しかし――首斬りショー(・・・・・・)よりは見応えが(・・・・・・・)あったであろう(・・・・・・・)?」


 その一言に鬼面の男は、急に背後を振り返る。

 それを合図にしたかのように鬨の声が上がり、二十を越えるチャリオットが鬼面の男とその騎兵隊に一斉に襲いかかった。

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