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BARBAROI -鬼方の戦士は八徳を嗤う-  作者: ペンギンの下僕
chapter5“vanguard:king of *****”
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moon's core

 如水の話によると今この白斗山にあるのは“月の心臓”と呼ばれる宝貝(パオペイ)らしい。

 仁吉は宝貝(パオペイ)と言われてもさっぱりだったが、そこは勇水が、超常の力を秘めた魔道具だと説明してくれた。

 それは月宮殿の動力炉となっていたものであり、以前に羿の矢によって破壊されたのだがその残骸が白斗山にあるらしいことが判明したのである。

 残骸と言えど危険物であることに違いなく、在処が判明した以上一刻も早く回収する必要がある。それを仁吉に頼みたいというのが如水の依頼だった。

 如水も白斗山に向かっているらしいが仁吉がいるなら先に探し始めてほしいと言われた。


「まあ、焦ったほうがよさそうだな」

『どういうことだよ仁吉?』

「ついさっき、“鬼名”持ち――って言って伝わるのか? まあ、敵に攻撃されてね。そいつもその月の心臓とやらを狙ってる可能性は高いんじゃないか?」

『なるほど。オッケ、なる早で向かうからよろしく頼むぜ』


 そう言って通話は切れた。仁吉はとりあえず勇水に、


「さっきの……ハクインとやらで月の心臓ってのを探せそうかい?」

「あら、いきなり私頼みなのね。安請け合いはよくないわよ」


 窘めるように言われて仁吉は少し拗ねたような顔をした。


「だって、いきなり言われてもどう探せばいいか分からないからね」

「もし私が出来ないと言ったらどうするの?」

「その時はさっき攻撃してきた奴を探してその跡をつけて――そいつが月の心臓を手に入れてから奪おうかなと」

「まあ力技」


 可愛らしい声で言われて仁吉は、否定はしないよと口を曲げて言った。実際、いかにも龍煇丸あたりが考えそうな手段だという自覚はある。

 しかし他に何も思いつかない以上、現実的な方法を取るしかないのだ。しかし勇水は、


「まあ、たぶんなんとかなるわよ。とりあえず山頂へ向かって」


 とさらりと言った。仁吉は頷いて、勇水を抱えて山頂へ走る。しかしその道中に妨害があった。

 空から何かが降ってきた。しかし先ほどの光弾ではない。矢の雨だった。全速力で駆け抜けて矢の範囲から逃げ出そうとする。しかしその前方には槍を持った騎兵が隊列を組んで待ち構えていた。


「イサミ先生、口開かないでね!!」


 そう叫び、足に力を込める。仁吉の全身が白い光に包まれた。

 流星のような速さで前方の敵に向かって進んでいく。今は両手は塞がっているが、その突進で兵士たちの隊列は崩れた。

 しかし駆け抜けた直後の仁吉は疲れた顔をしている。


「ヒトヨシくん、大丈夫?」

「まあ、なんとかね……。けっこう消耗するんだよこの技」


 そう言いながらも仁吉は山頂目掛けて走る。

 背後からは蹴散らした兵士の残党が追いかけてきていた。その速さは騎兵であることを加味してもあり得ないくらいに速い。ある程度予想はしていたことだが、やはりあの兵士たちも異能の力を持った存在なのだと仁吉は確信した。

 仁吉は山中を走りながら、いつの間にか山道に出てしまった。走りやすいという利点はあるのだが、まずいことにそこにも騎兵の部隊がいたのである。数はざっと見たところ二十程。

 騎兵が仁吉たちに気づく。それとほとんど同時に、背後から迫っていた騎兵も追いついてきた。


(くそ、挟み撃ちか!!)


 前方の騎兵が弓を構え矢を番える。

 一斉に放たれた矢は仁吉たちと――背後の騎兵たちを襲った。

 仁吉は何がなんだか分からなくなった。その時、不意に自分の体が羽根のように軽くなったような気がして――気がつくと近くの木の上にいたのである。


「大丈夫かしら、ヒトヨシくん?」

「あ、ああ……。イサミ先生、何かしたのかい?」


 困惑の表情を浮かべる仁吉に対して勇水は平然としている。


「一時的な避難よ。多用は出来ないし、そう遠くまでもいけないのだけれどね」

「いや、助かったよ」


 そう言って仁吉は下を見下ろす。そこでは二つの騎兵部隊が激しい戦いを繰り広げていた。


「あいつら、味方じゃないのか?」

「そのようね」

「くそ、なんとも混沌としてきたな」


 仁吉は小さく毒を吐く。つまり少なくとも白斗山には敵勢力が少なくとも二つはあることになる。仁吉の想像以上に厄介な状況になってきていた。


「でも今この場に関しては幸いだわ。あの兵士たちの矛先がこちらに向く前に頂上を目指しましょう」

「……そうだね」


 仁吉は頷いて、道を走らず木から木へと飛び移って山頂を目指した。

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