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BARBAROI -鬼方の戦士は八徳を嗤う-  作者: ペンギンの下僕
chapter5“vanguard:king of *****”
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berserk girl_2

 鬼方士(ガイファンシ)とはかつて龍煇丸を攫い、“鬼名”を持った戦士を人為的に生み出すための研究を行っていた悪の術士集団である。

 しかしその実験の最中、龍煇丸の力が暴走したことによって研究者と組織は壊滅したはずであった。


「ま、悪党など雑草のようなものじゃし、別に生き残りがいたところでおかしくはあるまい」

「まあな。だけどなんでそれを潰しに行くのに反対されるんだ?」

「一人で行こうとしたら怒られたんだよ。危ないからやめろって。いつまでも人のこと子供だと思ってやんのねあの兄貴」


 不貞腐れたような顔で龍煇丸は言う。ふくれっ面で文句を垂れるその様はどこからどうみても拗ねた子供であった。


「そんで監視つけられそうになったからとりあえず兄貴をボコって親父をのして逃げてきたってわけ。でもまだ兄貴がこのあたりうろついてるからちょっと一晩匿って」


 龍煇丸は両手を合わせて頼んだ。


「もうこれ、さっさと保護者に連絡したほうが早いんじゃないか?」

「えー、悌誉さんのケチ」

「ケチじゃないよ。だいたい、一人がダメなら副会長かお父さんについてきてもらえばいいじゃないか。お二人が心配する気持ちも私には分かるよ」

「そりゃそうなんだけど、兄貴たちは暫く忙しくてさ。だけど二人の手が空くのなんて待ってられないし、待ってたくないんだ」


 それに、と龍煇丸は付け加える。


「二人が出張ってきたら、つまんないじゃん!! 俺が!!」

「よし、副会長のところ行ってくる」


 ここでいう副会長とは如水のことである。これは保護者案件だと感じた悌誉は即座にそう決めた。しかし龍煇丸は部屋を出ようとする悌誉の腰に抱きついてそれを止める。しかし悌誉は龍煇丸を引きずりながら進んでいった。


(玩具を買ってもらえなくて駄々をこねる子供と母親のようじゃの)


 その光景を見ながら蒼天はそんなことを考えていた。しかしふと、いい案を思いついた。


「そうじゃ悌誉姉。それなら、余と悌誉姉で龍煇丸について行ってやる、というのはどうじゃ?」

「は?」


 悌誉は何でそうなると言いたげに蒼天を睨んだが、龍煇丸は飛び跳ねて蒼天のほうに駆け寄っていった。


「ほら、龍煇丸には世話になっておるしの。その仇討ちとなれば助けてやらねばなるまい。義を見てせざるは勇な無きなり、と言うであろう」

「さっすが蒼天、話が分かるねー。うんうん、兄貴と親父同伴はヤだけど蒼天と悌誉さんなら大歓迎だよ。なんか遠足みたいで楽しそうじゃん」

「三百円以内で菓子でも買って行くか」

「お、いいねー」


 二人は言葉を弾ませながら、遊びに行くような感覚で話している。

 悌誉は頭を抱えた。ここで悌誉が何を言ってもきっと二人は行ってしまうだろうと分かったからだ。

 この二人を放置して好きにさせるか、それともついていくかどちらがましかを考えた末に、悌誉は二人に同行することにした。


「よし、じゃあ明日は朝五時起きで出発、ってことでいい?」

「うむ、問題ないぞ。それでどこへ行くのじゃ?」

白斗山(はくとざん)ってとこ。知ってる?」


 蒼天は知らなかったが悌誉にはすぐに分かった。

 坂弓市から電車で三十分ほど北に向かったところにある山である。


「白斗城のあるところだろ?」

「なんじゃそれは?」

「昔、御影氏と烏丸氏が戦った山城だよ。戦国時代の古戦場としても有名でな。坂弓一帯を支配していた烏丸氏が御影氏に攻められた時、この城で激しい攻防戦を繰り広げたんだよ。三月に渡る激戦の果てに御影氏が勝ち、敗走した烏丸氏はやがて衰退した、白斗城の戦いというのが起きた山だ。歴史好きでは割と有名だよ。かなりしっかりと当時の城趾やら戦場の碑やらが残ってるからな」


 二人は感心したようにその説明を聞いていた。蒼天はともかく、白斗山に鬼方士(ガイファンシ)の残党がいるという話を持ってきた龍煇丸すらそのことを知らなかったのである。


(こんな調子で大丈夫なんだろうか?)


 悌誉は早くも先行きに不安を感じ始めた。

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