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BARBAROI -鬼方の戦士は八徳を嗤う-  作者: ペンギンの下僕
chapter5“vanguard:king of *****”
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the wheel turner_2

 蒼天たちは最初、『ヒラルダ』のフードコートで夕飯を食べる予定だった。しかし途中、蒼天がペットショップで見たハムスターを衝動買いしてしまったことで予定を変更し、惣菜を買い込んで悌誉の部屋で夕飯を食べることにしたのである。

 予定を変えたのには、ハムスターを連れてフードコートには行きにくいからというものもある。しかし蒼天としては、勢いで何の相談もなしにペットを買ってしまったことへの弁明を一緒にして欲しいという打算もあった。

 そして現在。

 蒼天は部屋の真ん中で正座して悌誉に叱られている。


「人間生きてれば衝動買いの一つや二つくらいすることはあるだろうさ。それも、お前が自分で稼いだ金だ。そのこと自体が悪いとは言わない」

「……はい」

「しかしその内容が問題だ。べつにうちはケージに入るくらいの生き物なら飼っていい規約になってる。私も別に動物アレルギーはないしな。ただし、問題はそこじゃないぞ」


 悌誉に叱られながら蒼天はどんどん肩幅を狭め、声は蚊の鳴き声のように小さくなっていく。


「ペットは物とは違うんだ。生き物の世話をするとなると責任が伴う。それにもし私にアレルギーがあったり賃貸規約で飼えなかったりしたらどうするつもりだったんだ? 簡単に返してくる、というわけにもいかないだろ?」

「……おっしゃる通りでございます」

「飼いたいと思ったのならまずは私に相談して欲しかったよ。私は頭ごなしに反対なんかしたりしないさ。ハムスター……というか、生き物全般好きだよ私は。だけどな、二人で住んでる部屋のことを自分だけで決めてしまったというのが私は悲しい。信頼されてないのかと思ってしまうじゃないか」

「……はむむ」

「何がはむむだ。いいか、そのあたりのことをよく反省するように」


 蒼天には返す言葉がなかった。悌誉の言葉が正論であり、自分に非があることを自覚しているからだ。

 ちなみに玲阿たちは蒼天に何の助け舟も出してはいない。


「これさ、捨て犬とか拾ってきちゃった子供とお母さんみたいな感じだよねー」

「うん。まあ……悌誉さんがよっちゃんのお母さん、っていうのはなんとなく分かるような気がするよ」

「そう考えると蒼天さんって、シスコンというよりマザコンよりになるんスかね?」


 忠江、玲阿、桧楯はそんなことを話しながら正座させられている蒼天を眺めていた。

 完全に他人事である。無論、他人事なので正しい対応であった。

 それからも暫く蒼天は悌誉にこってりと絞られることになった。しかし一通り言うべきことを言った後で悌誉は、


「まあ、このくらいにしておくか。いつまでも玲阿ちゃんたちを待たせておくのも悪いしな」


 と言ってため息をついた。

 そしてそのまま五人で夕飯を取ることになった。


「ま、蒼天。飼うんだったらちゃんと責任もって世話しろよ」

「うむ。それは任せておくがよい。どこに出しても恥ずかしくない一人前のハムスターに養育してみせるとも!!」

「……一人前のハムスターってなんスか?」


 胸を張って威勢よく語る蒼天を桧楯が横目で見る。ちなみにその言葉を聞いて、忠江はサーカスで派手な曲芸をするハムスターを想像し、玲阿はスーツを着てパソコンの前で仕事をしているハムスターの絵面を思い浮かべていた。


「別に、普通にちゃんと餌やりとかケージの管理とかをすればそれでいいさ。ところで蒼天」

「ん、なんじゃ?」

「このハムスターの名前、どうするんだ?」


 そう言われて蒼天はあ、と小さく呟く。まだ名前を決めていなかったということを完全に忘れていたのだ。

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