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BARBAROI -鬼方の戦士は八徳を嗤う-  作者: ペンギンの下僕
chapter4“chase the hidden justice”
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誰暇謀人

 黒と水色の魔力の刃が空中で衝突する。

 勢いは拮抗していたが、やがて――水色の魔力が押し勝った。フェイロンはそのままの勢いで泰伯を鉤爪で斬りつける。

 泰伯は必死になって無斬でそれを受け止めた。

 無斬には傷一つつかない。しかしそれを握っている泰伯は無事では済まず、勢いよく地面に叩きつけられた。

 フェイロンはそれを見届けると落下しながら蔵碓と蒼天に視線を向ける。蒼天は倒れたままだが、蔵碓はフェイロンの落下地点にいて、拳を握りつつフェイロンを静かに見据えていた。


(こいつを潰せば勝ちだ!!)


 フェイロンはそう思った。その認識に間違いはない。泰伯はすぐには動けず、蒼天も満身創痍である。

 一応フェイロンは蒼天が傀骸装を再換装していないかということも確認してある。

 傀骸装の厄介なところは、戦いの中で猶予を与えて換装しなおされてしまうと、それまでに与えた傷が無意味になってしまうことである。

 しかし一方で傀骸装はそれを作るために消費する魔力もまた膨大であり、何度も換装をすればそれだけ武器や攻撃に回すための魔力が減ってしまうことにもなる。

 今の蒼天にはもう魔力にあまり余裕がなく、傀骸装を作り直せば攻撃に使う魔力が足りないとフェイロンは踏んだ。

 そして再換装さえされなければ、この距離で蒼天が何をしてきても対処出来る。それがフェイロンの判断である。

 腹を決めてフェイロンは右手を振り上げる。その鉤爪の先には水色の光が集まっていた。泰伯に放ったのと同じ、魔力で出来た刃である。

 それを勢いよく蔵碓に振り下ろそうとしたその瞬間――。

 眼前に蒼天が現れた。

 それも、つい今しがたまで蔵碓のいた場所に、である。何が起きたのかフェイロンは理解出来ず、しかし振り下ろした腕はもう止まらない。水色の刃が蒼天を切り裂く。蒼天はその攻撃を避けようともせず、致命傷だけを避けるように身を捻りつつ、交差させるようにして右手一本で大斧――緋雨(ひさめ)闘戉(とうえつ)を振るった。

 蒼天の体の右半身、肩から腰にかけての部分が丸ごと削り取られ、血が噴き出して内部の臓器があらわになる。それでも心臓にまで攻撃は至っておらず、辛うじて蒼天は生きていた。

 そしてフェイロンはというと、腹を大きく抉られ、左足を失っているがまだ健在だった。足一本で立ちながら蒼天を睨んでいる。


『……この、小娘が』


 まだ奥の手を持っていたのか、と憎悪を持って蒼天を睨む。蒼天はぼろぼろの状態で、額に汗をかきながら笑った。


「ま、キツいから出来れば使いたくはなかったのじゃがの」


 それは本音であり、今の蒼天は傀骸装を維持するだけで精一杯である。しかも目の前には手負いながらもまだ動けるフェイロンがいるのだ。


「しかしこれにて詰みじゃ。せめて最後くらいは潔くせよ」

『するかよ。どうせ負けなら足掻いてやるさ』


 フェイロンが右手を上げて蒼天を切り裂こうとする。しかしそれは、二人の間に現れた石壁によって阻まれた。

 そして――。


『……はあ、マジかよお前?』


 黒い魔力の刃――“南風黒旋(はえのこくせん)”がフェイロンの首を切り落とす。

 泰伯は傀骸装を換装し直したわけではなく、そのままの状態でフェイロンに接近して来ていた。あれだけ痛めつけたのにまだ動けるのかと思うとフェイロンは泰伯が、脅威というよりも薄気味悪く感じながら、黒い霧となって消滅していった。

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