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BARBAROI -鬼方の戦士は八徳を嗤う-  作者: ペンギンの下僕
chapter4“chase the hidden justice”
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slash the blank_4

 何が起きたか、フェイロンはすぐには分からなかった。つい先ほどは、緋雨(ひさめ)闘戉(とうえつ)の攻撃を確かに防げていた。

 今の蒼天はその時よりも傷が増えており、しかも右腕一本で斧を振るっている。威力が増すことなどあり得ないはずだった。

 しかし現実としてフェイロンの守りは破られ、そして生まれた間隙に泰伯は魔力で伸長させた刃を滑り込ませる。

 フェイロンは咄嗟に下がったが、守るつもりでいたために動きが遅くなり、二の腕のところから左手を落とされてしまう。


『くそ……っ!?』


 攻撃を食らってしまったのは癪だが、不手際だと諦めて下がろうとする。しかしフェイロンの背後には退路を塞ぐようにびっしりと石壁が屹立していた。

 そして蔵碓も拳を握って眼前に迫ってきていた。

 反対からは泰伯も無斬に黒い風を纏わせて接近してきている。

 連携が上手くとれそうにないならば、僅かの隙から一気に畳み掛けてしまおうというのだ。


『舐めんな……ッ!! 裂地洪龍(リィエダホンロン)!!』


 フェイロンが叫ぶ。

 その体を中心に、今までとは比較にならないほどの巨大な水流が生み出された。まるで渦潮のようであり、その激流に巻き込まれた三人は為すすべもなく吹き飛ばされてしまう。

 三人はばらばらの方向に大きく散らばった。

 しかもその体には刃物で斬りつけられたかのような切傷があちこちにある。一番ダメージが少ないのが蔵碓だが、それでも無傷とはいかない。

 蒼天に至っては、元から緋雨闘戉で受けた傷に加えて今の攻撃を受けてしまったので、左腕は完全に切り落とされてしまい、緋雨闘戉を杖代わりにしてどうにか立っているという状態である。

 フェイロンは息を荒くしながら、散らばった三人を見る。

 誰を先に潰すべきかと考えてから、蒼天のほうへ駆けた。

 緋雨闘戉の威力が上がった理由についてフェイロンは、最初こそ戸惑ったが、おそらくそれは蒼天の傷に反比例して威力が上がる能力なのだろうと考察した。

 一度目と二度目の攻防で違いがあるとすれば、それは蒼天の傷の量以外にない。そういう能力があるとすれば、あの非合理的な形状にも一応の納得がいく。

 そうだとすれば今の満身創痍の蒼天を放置して他の二人に当たると、虚を突かれて一撃で倒される可能性がある。その懸念を潰すためにも蒼天から潰すことにしたのだ。


(まあそんな大層な能力なんかなく、二度目の仕込みのために加減してたならそれはそれでいいさ。優先順位を変える必要はない!!)


 手負いの敵から確実に倒すのは戦術の常道である。

 今の蒼天は気合いで立っているに過ぎず、緋雨闘戉を振るう力はないと見てフェイロンは蒼天の眼前にまで近づき、確実に息の根を止めるために鉤爪を振り下ろした。

 しかしそれが蒼天に届くことはなく、フェイロンの体は足元からせり上がって何かによって空高くへと打ち上げられた。

 せり上がって来たのは石壁である。

 宙を舞いながらフェイロンが下を見ると、蔵碓が地面を殴りつけていた。

 蔵碓が石壁を生み出せる範囲の広さはフェイロンの想像よりも遠く、不意打ちを食らった形となる。


「会長!!」


 その間に泰伯は蒼天のほうへ走り寄っており、喉が枯れんばかりの大声で蔵碓を呼ぶ。そして右手で、自分を指差してから手のひらを上に向け、何かを持ち上げるようなジェスチャーをした。

 それで蔵碓はすぐに意図を察した。

 蔵碓が地面を殴る。泰伯の足元から石壁がせり上がり、泰伯の体をロケットのように垂直に打ち上げた。

 打ち上げられたその瞬間から、泰伯は詠唱を始める。


「魂を(とか)し、流し、心火以て風を起こす。我が敵は眼前に居らず。絶ち斬るは虚空に在り」


 高く飛び上がった泰伯は無斬に黒い風を纏わせる。先ほどは不発に終わったが今度こそはと真剣な顔をして剣を振り下ろした。


 「――破軍(はぐん)風刃(ふうじん)!!」


 しかしフェイロンにも意地がある。

 空中で無理やりに体を捻って右の鉤爪を振るう。


『――決河黒剣チィエフフェイチィエン!!』


 放たれたのは水色の、三日月状になった魔力の刃だった。その一撃が、泰伯の纏う黒い風の形をした魔力の塊と空中で激突した。

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