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BARBAROI -鬼方の戦士は八徳を嗤う-  作者: ペンギンの下僕
chapter4“chase the hidden justice”
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rough swordsman

 裏山の頂上を目指していた龍煇丸は、旧校舎の前で十人ほどのガラの悪い生徒が一人の男子生徒を囲んでいるのを見つけた。

 見過ごそうかとも思ったが、


(こりゃいくらなんでも、シャレに(・・・・)ならなさそうだ(・・・・・・・)


 と思い割って入ることにした。


「あー、ほら。そのあたりでやめとけお前ら」


 急に緩い声をして割り込んできた龍煇丸を見て、囲んでいた不良たちも囲まれていた、右目を包帯で隠した大柄な黒学ランの男子生徒も思わずあっけに取られた。

 そんな反応を気にもせず龍煇丸は言葉を続ける。


「何があったか知らね―が、こういうのは不毛だからやめとけよ」


 その言葉に、青と白のスカジャンを着た不良たちの代表格らしき生徒が龍煇丸を睨む。しかし龍煇丸はまったく怯まない。

 スカジャンの不良は龍煇丸を威嚇しつつ、


「オンナに手ぇ出すようなつもりはない。これは俺らとこいつの問題だから引っ込んでろよ!!」


 と声を荒げた。

 しかし龍煇丸は、


「へえ、その程度のプライドはあるんだ? えらいえらい」


 と小馬鹿にするようにからりと笑う。そして、


「誰が後ろのこいつを庇ってるって言ったよ? 私はさ、十人がかりで(・・・・・・)挑んで負けたら(・・・・・・・)お前らの面子が(・・・・・・・)立たないだろう(・・・・・・・)って思ったから止めてやってんだよ」


 はっきりとそう言った。笑いながら言う龍煇丸は、止めているような言動のくせに挑発的だった。

 そして振り向き、黒学ランの男子生徒のほうを見る。黒学ランの男子生徒は突然の闖入者にありがたがるより迷惑そうに顔をしかめていた。


「なんだよお前? 余計なことすんじゃねえよ」

「まーそう言うなって。相手が羽虫に近い三下でも、喧嘩で怪我させて停学なんてつまんねーぜ? 青春は有限なんだからよ」


 龍煇丸は完全に、不良たちが負ける前提出話しを勧めている。その物言いに不良たちはいきり立った。

 龍煇丸は呆れたように、そして憐れむように不良たちを見る。


「ったく、そんな見た目で彼我の力量も分かんねーとは残念な目ぇしてるなお前ら」

「なんだと?」


 スカジャンの不良は声を荒げる。

 そして黒学ランの男子生徒は、迷惑そうな顔をしていた。


「おいお前、実は止める気なんかないだろ?」

「いやぁ、そんなことはないぜ。止めてやったほうがあいつらのためで、お前のためだとは思ってるんだ。だからさ――」

「何だ?」

「仲裁は時の氏神、って言葉もあるくらいだ。その氏神に免じて、骨は折れない(・・・・・・)くらいで(・・・・)勘弁して(・・・・)やってくれ(・・・・・)


 そう言われて黒学ランの生徒は、仕方ないなと言いたげな面倒くさそうな顔をした。

 その時には不良たちはもう、龍煇丸に散々煽られたせいで我慢の限界であった。龍煇丸は、


「ま、言っても止まらないなら俺はこのあたりで引くよ。助太刀はしてやらねーが、せめてお前らが大怪我しないように祈るくらいはしてやるよ」


 と言って少し離れた。

 そして喧嘩の口火が切られ――三分も経たないうちに、不良たちはたった一人に完膚無きまでに打ちのめされていた。

 龍煇丸はヒュウ、と口笛を吹いて――不良たちの健闘を称賛する。始まってすぐに不良たちはもう敗色濃厚だったのだが、誰一人として逃げることはなく黒学ランの男子生徒に果敢に向かっていった。骨がある奴らだと、龍煇丸は素直にそう思ったのである。

 そして、海岸に打ち上げられたクラゲのように倒れている不良たちの真ん中に一人、平然と立っている黒学ランの男子生徒に龍煇丸は近寄っていった。


「おー、ちゃんと手加減したねー。偉い偉い」


 子供扱いするようなその物言いに黒学ランの男子生徒は、苛立ちをたっぷりと込めてギロリと龍煇丸を睨んだ。

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