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BARBAROI -鬼方の戦士は八徳を嗤う-  作者: ペンギンの下僕
chapter4“chase the hidden justice”
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HEI LONG

 一年生にも「ミカゲシキ」という名の生徒がいる。

 蔵碓からそう教えられた泰伯は、フェイロンのことを思い浮かべた。

 泰伯が初めて戦った敵であり、その最中に無斬が覚醒した。

 そしてフェイロンは泰伯に会うや否や、ミカゲシキを知っているかと名指して聞いてきた。その時の泰伯は剣道部の部長である信姫のことしか考えていなかったが、もしかするとそれは一年生のミカゲシキのことかもしれない、と思ったのである。

 それが僅か一ヶ月前のことであり、そして今日までに色々なことがありすぎた。そのせいで今までしっかりと考えていなかった――というよりも、泰伯の身に起きた不思議なことのうちの一つとして括っていたのだが、フェイロンという存在はそれらの中で浮いているように思えたのである。

 フェイロンの次に会った蜘蛛の怪異は、無差別に生徒を襲っていた。

 悌誉と羿は不八徳として、“鬼名”から来る自分の願いのために騒動を起こした。

 ではフェイロンは、何のためにミカゲシキを殺そうとしていたのだろうかと疑問に思ったのである。

 いやそもそも、フェイロンは何者なのかというところから分からない。見た目からすれば人型ではあるが人間らしさはなく、怪異と考えるべきなのだろうが、泰伯はそれに違和感を覚えた。

 考えこんでいても仕方がないので、泰伯は正直に蔵碓に説明した。前に蔵碓に異能について話した時は不八徳のことに頭がいっていてフェイロンのことを話し損ねていたのである。

 今から向かう御影家は崇禅寺の檀家で、検非違使関係の書物の避難先にもなっているということは、御影家からして検非違使と繋がりがあるということだろう。ならばフェイロンの正体や狙われる理由も蔵碓には心当たりがあるかもしれないと思ったのである。

 そして蔵碓はフェイロンの名を聞くと驚いたような顔をした。


「本当にその男は、フェイロンと名乗ったのかね?」


 蔵碓は泰伯の両肩を掴んで真剣な目をしている。それは疑問と、そして泰伯を案じる気持ちが混ざった視線だった。


「え、ええ……。会長は、ご存じなんですか?」

「ああ。と言っても、私も存在を知っているだけで邂逅したことはないのだがね。一年の御影くん……御影家の息女を狙っている人型の怪異がいるとは聞いている。それも相当な手練だと」


 そう聞いて泰伯は急に背筋が冷えるような思いがした。フェイロンに告げた言葉にも行動にも後悔はないが、自分が知らぬうちにとても恐ろしい敵と対峙していたと今さらながらに気づいたからである。

 兎にも角にももう少し話を聞きたいと思ったその時である。


「おや、ヤスタケどのではないか?」


 声を掛けられた。

 相手は蒼天である。振り向くとそこには蒼天と悌誉。そして、青の短パンに黒いTシャツ、その上からぶかぶかの紺色のカーディガンを羽織った女子生徒と、白セーラーを着たツインテールの女子生徒がいた。

 そのツインテールの女子生徒を、泰伯は思わず二度見してしまった。

 彼女は背丈こそ低いが、その顔立ちが信姫にうり二つだからだ。

 そして、自分が見られていること。その理由におおよその察しがついたので、


「……一日に二度は、悪気がなくても腹が立つわね」


 とツインテールの女子生徒――御影詩季は声に棘を含ませて呟いた。

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