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BARBAROI -鬼方の戦士は八徳を嗤う-  作者: ペンギンの下僕
chapter4“chase the hidden justice”
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foolish talk_2

 五月七日、放課後。

 龍煇丸は用事があるので早めに帰ろうとしていた。しかし玄関口のところで知り合いを見つけて足を止める。クラスメイトであり風紀委員長の雲雀丘(ひばりがおか)紀恭(ききょう)である。


「どしたのキョーちゃん? 風紀委員の見回りか何か?」


 話しかけられて紀恭は、ええ、と頷いて前を見る。そこでは、同じくクラスメイトの花屋敷(はなやしき)聖火(きよか)と風紀委員の一年生、南方(みなみかた)仁美(ひとみ)が熱く語り合っていた。


「だから、見た人が何人もいるんだって!! 裏山に隕石が落ちてきたって」

「ええ、でも隕石っていってもせいぜい小石くらいのものでござろう?」

「違うわよ。もっとでっかい、太陽くらいあるサイズのやつよ。それも派手に燃えてたって噂よ」

「しかしそんなものが落ちていたらやはり大惨事に……まさか、これも政府の秘密実験だというのでござるか!?」

「そーよ、間違いないわ。アメリカの目を盗んで極秘裏に開発してた火炎砲弾の実験が失敗して、政府のエージェントが落下寸前で阻止したのよ。でも完全に隠蔽は出来なくて目撃者がいるってこと!!」

「そ、そんな……。でもそれでは、その目撃者はそのうちに消され――」

「それ以上は行けないわ仁美!!」


 先日の燃える隕石――正確にはそれは、検非違使が危険物を保管している浮遊城“月宮殿”が不八徳の一人、羿の狙撃によって落とされたのだが、その真実を知っている龍煇丸にとっては当たらずとも遠からずな二人の会話を何とも言えない顔で眺めていた。

 そして紀恭は、眉にしわを寄せ、額に手を当てている。


「……キヨちゃんは今日も絶好調だね」


 龍煇丸のその言葉に紀恭はいっそう疲れたような顔をした。


「……そろそろこの二人には、インターネットを止めさせるべきかもしれないな」

「都市伝説くらいならいいけど、芸能界とか政治とかの陰謀論にハマったら普通に危ないよね」


 龍煇丸も紀恭の意見には賛成である。

 そして龍煇丸には、どうもこの二人はかなり真剣になってこういった会話をしているらしいというのが分かる。それだけに、友達として心配なのだ。

 そしてこの件については、検非違使としても頭の痛い話である。

 月宮殿には常に視覚的な結界が張られている。これは防御用の物とは異なるので落下した時にも機能は生きていた。しかし異能の力はなくとも、保有魔力が高い人間には見えてしまうこともある。仁吉と泰伯がすぐに見つけられたのもそれが理由だ。

 もっとも、本来ならばそれでも一般人に目撃されるということはあり得ないのだが、月宮殿の核である“月の心臓”が破壊されたことにより効果が弱まっていたので、見える人には見える、という現象が起きてしまったのである。


「まあ、そうなったら私がどうにかするさ」


 龍煇丸がそういった真実を知っているなどとは露も思っていない紀恭は、龍煇丸の言葉に項垂れながら返事をした。


「どうにか出来るの?」


 そう聞き返されて紀恭は、


「……そうなったら、琉火(るか)さんも手伝ってくれ」


 と助けを求めた。

 琉火――龍煇丸は、尚も与太話に夢中になっている二人を横目で見て、


「ま、力になれる範囲でならいーよ」


 と返した。

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