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BARBAROI -鬼方の戦士は八徳を嗤う-  作者: ペンギンの下僕
chapter4“chase the hidden justice”
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the locking_2

 五月七日、放課後。

 一年一組の教室で蒼天と忠江はのんびりとしていた。

 しかし蒼天の顔は精彩に欠ける。それは前に忠江とカラオケに行った時に面と向かって音痴と言われたことを気にしているからだ。

 玲阿は陸上部に行ったが、玲阿もやはり消沈していた。

 しかし忠江のほうは、その時こそ怒っていたが今は普段通りである。カラオケにさえ誘われなければ蒼天と玲阿に含むところは何も無いからだ。


「……のう忠江。余と玲阿の歌、そんなに下手かの?」


 しかし蒼天は自ら傷口に塩を塗るような質問を忠江にする。


「うんド下手。耳死ぬかと思ったねー」


 そして忠江ははっきりとそう言う。蒼天は塩をかけられたナメクジのようにへなへなと机に突っ伏して力を失った。


「つーかヨッチ、今までレアチ以外の誰かとカラオケ行ったことないの?」

「……前に一度、玲阿の兄と桧楯の姉と、あと三年の先輩と行ったくらいかの」

「災難だったねその人たち」

「じゃ、じゃが……玲阿の兄君は褒めてくれたぞ。玲阿の歌に似ていると」

「言っとくけど褒め言葉じゃねーかんね、それ。レアチの兄さんがやんわり皮肉言ったのか本心で言ったのかは知んないけどさ」


 忠江は口を尖らせる。少なくとも泰伯は本心でそう言っていたようだったと言うと忠江はうげ、と唸った。


「兄妹揃って耳が馬鹿なんだね」


 忠江はいつになく辛辣だ。

 蒼天もここまで忠江に言われて流石に反省はしており、これからはカラオケに行くなら玲阿とだけ行くようにしようと心に決めた。

 その時、教室に悌誉がやってきた。その手には大きな紙袋を持っている。中身は前に忠江から買った戦略ボードゲーム、『春秋演義』だ。

 悌誉は二人のところに近づくと、


「なあ蒼天、忠江ちゃん。ボードゲーム同好会の知り合いっているか?」


 と聞いた。『春秋演義』を持ち込もうと考えたまではよかったが、いざ放課後になって、悌誉は同好会の活動日もメンバーも全く知らないことに気づいて二人に聞きに来たのである。

 しかし蒼天は知らないと答える。そもそも蒼天は話に出るまで存在すら知らなかった。


「あー、それなら確かしーちゃんがそうだよ」

「その子、紹介してもらってもいいかな?」

「いっすよー」


 忠江はそう言うとスマートフォンを操作してメッセージを送る。しかし返事はない。


「うーむ遅いな」


 五分ほど待ってもなしのつぶてである。


「んじゃあ適当に空き教室でも巡ってみます? 運が良ければいるかもしれませんよ」


 このまま待っていても埒が明かないので三人は忠江の提案に従って教室を出た。


「ところでしーちゃんって誰じゃ? なんか、どこかで前に聞いた気がするのじゃが」


 蒼天が忠江に聞く。

 忠江はそこで、前に木から降りれなくなったところを蒼天が助けた相手だと説明した。


「あぁ、ようかん娘……と、この言い方はダメなんじゃったの。シキじゃ、シキ」

「そーそ。だからしーちゃん」


 シキ、という名前を聞いて悌誉は少しだけ眉を動かした。三年生の御影信姫を連想してしまったからだ。

 しかし忠江の言動からして一年生のようなので、そこまで珍しい名前でもないかと思い気にしないことにした。

 しかし、


「あ、しーちゃん見っけ!!」


 と忠江が廊下でツインテールの女子生徒を見つけて走り出す。呼びかけられて振り向いたその顔を見て、悌誉は目に力を込め、全身を強張らせた。

 背丈は信姫より少し低く、髪形も違う。そさて、信姫は常に和装だが彼女は白いセーラー服だ。

 しかしその顔は、信姫とうり二つ(・・・・・・・)なのである(・・・・・)

 その態度を目ざとく見抜いたしーちゃん――詩季は悌誉をキッ、と睨み返して冷たい声で言う。


「何よ? もしかして貴女、あの極妻の知り合い?」

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