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BARBAROI -鬼方の戦士は八徳を嗤う-  作者: ペンギンの下僕
chapter3“*oon *as**e *a*ling”
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playing on the board

 次の日の朝。

 十時になっても蒼天はまだ布団でごろごろとしていた。悌誉はさすがにそろそろ起きろと言ったのだが、蒼天は一向に布団から抜け出す気配はない。


「あと二日の連休じゃ。今日はとことんだらけると余は決めておる」

「……そうか」

「真面目に、一昨日の戦いでかなり疲弊した上に昨日は少しハメを外しすぎたのでな。今日はもうゆっくりと英気を養うことに決めた」


 悌誉は目を細めて蒼天を見る。そして、


「分かった。なら、玲阿ちゃんと忠江ちゃんには帰ってもらうことにしよう。二人ともお前と遊びたそうだったが、疲れてるならしかたない」


 その言葉を聞くと蒼天は起き上がりこぼしのような勢いで立ち上がった。


「そういうことは早く言わんか悌誉姉!! すぐ支度する故少し待つよう頼んでおいてくれ!!」

「忠江ちゃんは、三分間待ってやろう、って言ってたぞ」


 蒼天は凄まじい速さで寝癖を直し顔を洗い、服を着替えた。本当に三分ほどしか経っていない。

 準備が出来ると二人が部屋に入ってくる。悌誉が招き入れたのだ。


「おーっすヨッチ。ボドゲしよーぜー」


 忠江は手に持っていた紙袋から巨大な箱を取り出す。そして悌誉に許可を取ると部屋にあったちゃぶ台の上に中身を広げ始めた。


「余の意見は?」

「ハイかイエスで答えてくれし」

「じゃあ、イエスで……」


 有無を言わせぬ強引さに蒼天はうなるような声を出した。しかし遊ぶことそれ自体に異論はないので忠江を手伝ってゲームを広げる手伝いをした。


「ところで忠江ちゃん、これってどんなゲーム?」


 一緒になって広げるのを手伝いながら玲阿は不思議そうな顔をする。

 四色のプラスチックの駒があり、槍、剣、弓のいずれかを持った兵士の上半身を象ったものと、馬車と馬がある。さらにそれ以外にも城だったりレンガの塀のような形の置物があり、杭を寝かせた台車や投石機のようなオブジェクトがいくつもあった。そして何枚かある折り畳み式のパネルには将棋盤のようにびっしりとマス目が掛かれており、その下には森だったり灰色の山だったりが掛かれている。


「んー、まあ要するに戦略ゲームっぽいね。名前はなんか読めなかった」

「……ぽい、とは?」

「……読めなかった、って?」


 蒼天と玲阿は不安な声を出した。そして忠江はあっさりと、


「あーうん。ぶっちゃけ、昨日ふらふら歩いてて偶然見つけたおもちゃ屋で衝動買いしたんだ。美人の店員さんにオススメされてね。だからまだ私も遊んだことないよ。説明書すら読んでない」


 と言った。

 大丈夫なのかと不安がっていると、悌誉が横から口を挟む。その手にはいつの間にか、このゲームの説明書があった。


「ゲームの名前は『春秋(しゅんじゅう)演義(えんぎ)』だな。プレイヤーが自国を決めて手番ごとに相手プレイヤーのエリアに侵攻して、最終的に敵を倒すことで勝者を決めるゲームらしい」


 悌誉が読んだところによると複数枚あるパネルはそれ自体が一つの国家であり、プレイヤーは最初、それらの内から一つを選んで自国とするらしい。選んだ自国によって初期戦力も変わる。それぞれのパネルによって多く取れる資源が決められており、資源は兵士を補充したり武器や兵器、貨幣に帰ることが出来る。

 プレイングの想定人数は二人から四人だがパネルは最大で十六枚ある。一人一枚で四枚を使うやり方から、一人一枚を自国として、それ以外にも何枚かを並べて『空白地帯』として使うプレイングも可能らしい。当然、それらのパネルにも特色があるので早い者勝ちで『空白地帯』を保有できれば戦況を自分優位に運ぶことも可能だ。

 また、一人三枚、ないし四枚を最初から自国のパネルとして扱う遊び方もあるらしい。

 その説明をざっくりと聞いた蒼天は目を点にした。


「……これ、恐ろしく時間かかる上に頭も使うやつではないかの?」


 ここまででまだ、パネルの使い方の説明しかしていない。この後に最低でもそれぞれの駒の特性や戦闘のルール、さらにはそれらを拡充させるための『資源』についてのルールが追加されるのだ。いや、もしかしたらルールはまだまだあるかもしれない。

 とても、今から気軽に始められるゲームとは思えなかった。

 しかし悌誉は、


「でも、面白そうだぞ」


 と声を弾ませていた。いや、楽しそうと思ったのは蒼天も同じである。だが二人はどうだろうと思ってみると、少なくとも忠江はうきうきとしている。玲阿は少し自信のなさそうな顔をしていた。玲阿は忠江からボードゲームをやるとしか聞かされておらず、その手のアナログゲームに対しての知識が皆無だったので、せいぜいが人生ゲームくらいの気軽さのものだと思っていた。なので悌誉の説明を聞いて一気に不安になったのである。


「なら……そうだな。蒼天、これのルール把握するのに何分かかる?」


 説明書を渡されて蒼天は、二十分あれば、と答えた。

 そこで悌誉は、今のうちに自分が軽食をいくつか用意しておくから、その間に蒼天にルールを把握してもらい、最初は蒼天と玲阿、悌誉の忠江のチーム戦という形でやってみてはどうかと提案した。

 蒼天もそれならばと頷き、真剣な顔をして説明書と向き合う。

 そして悌誉は、少し出かけてくると言って買い出しに向かった。

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