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BARBAROI -鬼方の戦士は八徳を嗤う-  作者: ペンギンの下僕
chapter3“*oon *as**e *a*ling”
252/386

horseplay

 焼肉屋『狂天(ぎょうてん)』を出た四人が向かったのは、JR坂弓駅の南側――繁華街の一角にあるカラオケチェーン『エコーズ』の店舗へと向かった。

 四人とも高校生なので午後十時以降の滞在は条例で禁止されているが、今はまだ八時前なので二時間は遊べることになる。

 幸いなことに待ち時間もなく、四人は少し広めの部屋に案内された。


「さて、とりあえずピザ頼もうぜピザ!!」

「あ、じゃあポテトも頼まないかい?」

「ふはは、レモンスカッシュとコーヒーと野菜ジュースのミックスじゃ。これはさぞ未知なる味がすることであろうな!!」


 龍煇丸と泰伯はしこたま焼肉を食べたはずなのだがまだ食べるつもりらしい。そして蒼天はというと、全員分の飲み物を取ってくると言いながらしっかりとドリンクバーで遊んでいた。トレイの上には濁った緑色の液体が入ったコップが四つ並んでいる。


「お、じゃあついでにこれも頼もうぜ。ロシアンルーレット・たこ焼き。辛さのグレードは……10辛でいいな!!」

「くう、まずい――もう一杯!!」

「あれ、でもこのミックスドリンク、そんなに悪くないんじゃない?」


 龍煇丸は聞くからに恐ろしいものを注文し、蒼天と泰伯は奇怪な色のドリンクを平然と飲み干している。いよいよ泰伯の舌馬鹿を確信しながら、仁吉は一人頭を抱えていた。


「……か、カオスだ」


 先ほどの焼肉屋では、周囲の目もあったのでまだ三人とも大人しいほうだった。その時の仁吉は少しもそんな風には感じていなかったが、分別を弁えていたほうだったのだと今なら思う。

 カラオケボックスという防音の個室にやってきた今となると、完全にタガが外れている。蒼天と龍煇丸は特に酷い。そして泰伯もそんな二人に何かを言うこともなく、むしろ一緒になってふざけている。

 今の仁吉は後輩と遊びに来ているというよりも、子供の引率をしているような気分であった。


「さ、(みな)ちゃん先輩、ほら歌って歌って!!」


 龍煇丸はそう言って仁吉にマイクを渡してくる。


「採点入れて一番点数が低かった人からロシアンルーレット・たこ焼き食べるルールですからね」


 泰伯はいつの間にか運ばれてきたたこ焼きの皿を持って嬉しそうにそう言った。


「……もういいよ。やればいいんだろ?」


 仁吉は諦めたようにマイクを受け取る。そして機械を操作して曲を入れた。入れたのは『踊る大捜査線』のエンディングテーマである。

 仁吉は滅多にカラオケに行かないが、それでも来た時は必ずこの曲を歌っている。それだけに点数も平均以上であった。

 続いて泰伯の番だ。泰伯が入れたのは『鏡花水月』という曲だった。仁吉と蒼天はそれが何の曲か知らないので普通のJ-POPだと思って聴いているが、龍煇丸は名作時代劇のリメイク版の主題歌だと分かった。

 点数は平均くらいで、仁吉よりも少し低い。


「く、これは……流石ですね先輩」


 泰伯は悔しそうである。


「何がだよ?」


 その反応を仁吉は呆れたように横目で見た。


「ふむ、これで激辛たこ焼きが近づいたのヤスタケどの」

「つーか今さらだけど、ハズレ引く確率って別に何番目にやっても同じだよな?」


 そう言いながら龍煇丸も曲を入れた。

 前に『坂弓フードフェス』の時に仁吉と龍煇丸の知人のバンドが演奏していた、ナノの『CATASTROPHE』という曲である。

 龍煇丸はとても上手かった。声を張り上げながら、しかしうるさいとは全く感じず、歌声から伝わる熱量が心を震わせてくる。三人はついつい聴き入ってしまっていた。

 歌い終わり、採点の結果は97点である。今のところ文句無しの一位だ。


「うむ、これは――余も負けておれんの!!」


 その結果に蒼天はむしろ奮起した。

 手に力を込めて機械を操作し、入れた曲はXJAPANの『紅』である。

 蒼天は立ち上がった。英語のイントロを静かに歌い、歌い出しが終わると、部屋中に轟音が響き渡った。

 その歌声に仁吉と龍煇丸は――耐えきれなくなって反射的に耳を塞いだ。

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