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BARBAROI -鬼方の戦士は八徳を嗤う-  作者: ペンギンの下僕
chapter3“*oon *as**e *a*ling”
251/386

consideration on the “soul name”_4

 蒼天は自分の“鬼名”を明かすのが嫌になり、強引に話題を、龍輝丸にとっての“鬼名”の認識はどうなのかというものに変えた。


「ま、だいたいは転生――つまりは生まれ変わりっつーことらしいんだが、その(えびす)の子孫、ってケースもあるらしいぜ」

「ふむ? それは、直系とか嫡流とかそういう話かの?」

「いや、別にそーいうのじゃないらしい。先祖返りとか隔世遺伝みたいなもんだと思うよ。これに関しても鬼方士(ガイファンシ)たちは、そこまでは分かってもそこから発展させることは出来なかったらしくてね。ま、どっかで混ざってる、程度の話だとは思うけどね」

「中国と日本は切っても切れぬくらいに深く関わりあっておるからの。別にそれくらいならおかしな話でもあるまい」


 蒼天は納得したように頷く。


「しかし、(えびす)の子孫と言われるとなんだか、騎馬民族征服王朝説を思い出すね」

「何それ?」


 泰伯の口にした馴染みのない言葉に龍煇丸は疑問符を浮かべた。蒼天と仁吉も当然のようにそれを知らない。


「大和王権のルーツとしての学説の一つでね。四世紀から五世紀くらいにかけて大陸からやってきた騎馬民族が大和王権を打ち立てたというものさ」

「……それ、本当に学説か? コンビニとかに置いてある怪しげなトンデモ歴史新説本みたいな胡乱さがするんだが?」


 仁吉は懐疑的に泰伯を睨む。


「学説ですよ。とはいえ、批判のほうが多いことには違いありませんし、現代ではほとんど否定されていると言っていい説であることには違いありませんね」


 それはそうだろうと、日本史については高校の授業レベルの仁吉でさえ思った。元寇よりも遥か以前に中国から騎馬民族が渡海して日本に王朝を建てるというのは、源義経とチンギス・ハンを同一人物とするような話と同じくらいに突拍子のない、ロマンはあるが真実味のない話のように感じている。


「まあ、この説は関係ないとしても、日本には中国から文化も人も入ってきているので、別にその中に(えびす)と呼ばれた種族の血筋が入っていることはあるでしょう」

「渡来人とかまさにそれじゃしの」

「江戸時代とかでも、有名なところだと明の鄭成功(ていせいこう)は明人と日本人とのハーフだしね」


 段々と話は歴史談義に移っていき、仁吉と龍煇丸は会話に取り残されてしまった。蒼天も最初のうちはよかったのだが、やがて泰伯についていけなくなってくる。


「おい茨木。そういう話したけりゃ売布神社(めふじんじゃ)先生でも捕まえてするか、歴史研究会にでも入れよ」


 会話に熱がこもってきた泰伯に仁吉が水を差す。

 そして龍煇丸も不貞腐れた顔をしていた。


「あのさー、そろそろこういう真面目で辛気くさい会話やめない? 情報共有も大事かなーと思って振った話題だけど、とりあえずこんなもんにしてそろそろ高校生らしい話しよーぜ?」

「……高校生らしい会話とは?」


 仁吉は眉をひそめる。


「そりゃズバリ――恋バナだよ!!」

「さっきすぐに頓挫したであろうが!!」

「あれはこの四人の中でしようとしたからだろ? なら他にさ……今、好きな人いる人手ぇあげて」


 誰も手を挙げない。泰伯に至っては見向きもせずに、歴史の話を辛気くさいと言われたことを拗ねて肉を焼いていた。

 ちなみに、言い出した龍煇丸も手を挙げていない。

 龍煇丸はつまんねー、と口を曲げる。

 その時、蒼天が何かを思いついたようで手を叩いた。


「話題ではないが、学生らしいことと言えば一つあるであろう」

「お、いいねアオゾラ。積極的な提案はモテる秘訣の一つだよ」

「今から四人でカラオケに行くというのはどうじゃ!?」


 蒼天の提案に龍煇丸はすぐに乗り気になった。

 泰伯も賛成したので、仁吉も渋々頷き、この後の四人の行き先が決まった。

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