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BARBAROI -鬼方の戦士は八徳を嗤う-  作者: ペンギンの下僕
chapter3“*oon *as**e *a*ling”
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consideration on the “soul name”_2

 唐突に“鬼名”を教えてくれと言われて泰伯と蒼天は驚いていた。


「そういやあのフード男もキメイがどうとか言ってたな。なんだっけか、それ?」


 そして仁吉は記憶を軽くあさって思い出せなかったので、すぐに諦めて三人に聞いた。

 代表して仁吉が、不八徳と八荒剣が持つ前世――(えびす)の名前のことを鬼名と呼ぶらしいと説明する。

 すると今度は龍輝丸と蒼天が疑問を挟んだ。


「フハチトクとかハッコウケンって何だっけ?」

「そういえば、それもシンドバッドの奴が言っておったの。確かフハチトクについては、あの時は鬼名を持つ悪党とか言っておったが、ハッコウケンについては初耳じゃ」


 二人も泰伯に説明を求めてくる。ならばと説明しようとして、泰伯はふと疑問に思った。


「あれ、でもまってくれ南茨木さん。君、なんで八荒剣とかのことは知らないのに“鬼名”のこととか……なんで僕らが“鬼名”を持ってるってことまで知ってるんだい?」

「そりゃ持ってるに決まってるだろ? 全員、傀骸装(くがいそう)出来るんだからさ」


 話しながら、情報が錯綜してきて四人は混乱してきた。

 どうやらこの場にいる人間――特に、泰伯と龍輝丸は不八徳や八荒剣、そして傀骸装と“鬼名”について断片的に知識があるらしい。しかし抜け落ちていることは全く知らないので、これを知っているならばこのことも知っているはずだ、という疑問が起きているようだ。


「よし、ひとまず会話を打ち切って――認識のすり合わせをしよう」


 仁吉はパン、と手を叩いて全員の注意を引くと、手近にあった来店アンケート用紙の裏に、アンケート記入用のボールペンを使って今までに出た用語を書き出した。書いたのは『鬼名』『傀骸装』『不八徳と八荒剣』である。泰伯と龍輝丸に漢字を確認しながら書くと、他の三人に話しかけた。


「これからこの単語一つずつについて、自分の知識で説明してくれ。分からないなら分からないでいいからさ。まずは『鬼名』だな」


 と聞くと、これは泰伯と蒼天は自分の中にある中国の(えびす)の名前と答える。仁吉もその認識だった。

 ただし龍輝丸だけは、


「んー、まあ俺もおおむね二人と同じような認識かな。俺の知識はちょっと違うんだけど、脱線しそうだから後ででもいい?」


 と少し濁したような言い方をした。それはそれで気になったが、今はともかく会話の進行を優先したほうが良いと判断して仁吉は追及しなかった。

 次に傀骸装である。これについて泰伯は、


「戦闘用の魔力で作られた仮の体」


 と答えたが、蒼天は、


宝珠(ほうじゅ)に備わった機能の一つであろう?」


 と答えた。そして龍輝丸は、


「つーかさ。宝珠なんて“鬼名”持ってる人間しか持ってないだろ」


 と、新たな知識を口にした。そして、蒼天もそれに同意している。

 仁吉は最初に龍輝丸と戦った時に、宝珠と傀骸装は関連性のある力だとは聞いていたが、“鬼名”を持つ人間しか宝珠を持っていないというのは初耳であった。

 そして最後に、不八徳と八荒剣である。

 これについては蒼天も龍輝丸も知らず、泰伯が、


「中国の八徳。それを否定する八人の“鬼名”を持つ悪党が不八徳。そして、それに対抗するための八人の(えびす)が八荒剣だと、僕は聞いているよ」


 と言った。これらの話を聞いた上で仁吉はとりあえず、その内容をまとめた。


「つまり、都合十六人の“鬼名”持ちがいて、不八徳と八荒剣に分かれている。そしてそれらは全員、宝珠を持っていて使うことが出来る。“鬼名”持ちかどうかは傀骸装を使えるかどうかで判断できる、ってところかな?」


 その総括に三人は感心したように息を吐いた。先ほどまでは各々が自分の知識だけで話していて混雑していた内容が一気にわかりやすいものになったからである。


「ミステリとか刑事ドラマとかでよくある手法だよ。同じ質問を容疑者にしてその内容を精査すれば、誰が嘘をついているかが見えてくるってやつさ。今回は嘘つきを割り出すのが目的じゃないけれど、同じことを全員に聞いてすり合わせたほうがわかりやすいかなと思ってね」


 仁吉は少し早口になっていたが、それは照れ隠しである。顔は無表情のままであるが、褒められたことで少し得意げになっていた。そしてそれをとことん表に出さずに話を進める。


「それで、今話した知識以外で補足がある人がいるなら教えてくれ。というか――龍輝丸は、もっと詳しく知っているんじゃないのかい?」


 仁吉は龍輝丸のほうを見る。泰伯と蒼天には言いたいことがなさそうだったので龍輝丸は、


「そうだね。じゃあ、あくまで俺の知識でだけど、話させてもらおうかな」


 と少しばかりの優越感が混じった笑みを浮かべた。


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